第21話その後 オデッセイ

「アコード、フィットが泣いてるわ、あやしてあげて」


「おとうちゃま!!抱っこおお」


部屋でコケて、膝を打ったらしい。


今年3歳になるがまだまだ甘えてくる。


すぐさまアコードが側による。


「うん、分かってるよ。オデッセイ、準備はできたの?おいで、ああ、大丈夫かい?」


「うん」


「出来たわよ。アコードは?」


「僕はもう少しかな。フィットが泣き止んだらすぐ準備するよ」


ソファでお茶を飲みながら答える。


「早くしてね、ゼット様とカレンがもう来る頃ではないの?」


「そうだね。フィット、父様と一緒準備しようか?」


「うん」


「フィットの玩具や着替えも確認しといてね」


「それは大丈夫。昨日から準備してるから」


「それならいいわ。お茶のお代わり入れてくれる?」


「うん。待ってて」


べったりくっつくフィットを見ながら、お代わりをいれてくれた。


「さ、フィット準備しようか」


そういうと手を引いていった。


私はオデッセイ。シャウリ侯爵家の長女で生まれた。爵位的にも歳的に丁度いいと言うことで、この国の第1皇子、ゼット様の婚約者となった。


普通なら喜ぶところだ。行く行くは王妃。王家と強い繋がりができ、お家は安泰。


が!!


あの男は全く私の言うことを聞かない横暴で我儘な奴だった。


その上、隣りの国の女、カレンに恋をしたらしく、うじうじと悩んで、なんやかんやと言い出し、鬱陶しいの一言だ。


それも、カレンの婚約者がその国の第1皇子なのだから、どう足掻いても実るはずのない恋をなのに、忘れる事が出来ないようだった。


そこは、男して認めているところだ。


女は男に溺愛ぐらいに惚れられなければ意味がない。


そうでないと、女のすることにいちいち文句を言ってくる。


女はね、女王様にさせてくれる男が欲しいのよ。


だから、ゼット様は全く、これっぽっちも私の理想ではなかったから、もう地獄の日々が続くと思ってた。


カレンは、絵に書いたような貴族の娘だった。


どこに惹かれたのか全く理解に苦しむ。その辺にうじゃうじゃいる女と対して変わらない。


だが!婚約解消したとの事で、私は今だ!とこちらも解消できた。


あとは、吟味に吟味を重ね、選んだのが、今の夫である、センバス子爵の嫡男アコードがピッタリだった。


侯爵である私が子爵に嫁ぐ。それだけでも、扱いが違う。


アコードは私にぞっこんで、優しく怒ることもなく、だが、剣の腕は最高だ。


ゼット様の護衛を頼まれることもある。


まさに私の夫にうってつけだった。


こいつに決めた、となればあとは簡単よ。


既成事実さえ作ってしまい、子供を、それも、女の子が出来れば言うことないし!


そして、女の子だった!!


ふっふふ。


男は自分の子供、それも女の子に弱いのよ。


まさに、悠悠自適の日々だわ。


さて、と立ち上がる。


「アコード、そこに置いてある私のも一緒に入れといてよ」


「大丈夫。入れてるよ」


扉を叩く音がし、声がした。


「オデッセイ様、ゼット様達がお着きです」


「分かったわ。すぐ行くわ」


「はい。失礼致します」


「オデッセイ、終わったよ。行こうか」


「ええ。フィット、きちんと挨拶できるわね?」


「はい、おかあちゃま」


「宜しい。では、行きましょう」


 


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