第20話その後カレンとゼット
「カレン様!」
廊下を歩いていると慌てた声で名前を呼ばれた。
前から召使いの1人キャリーが走ってきた。
「どうしたの?」
「どこにおられたんですか!?ゼット様が探されてますよ!!」
息を整えながら、言う。
「また?王宮の中で迷子になる訳じゃないのに、大袈裟な」
「早くお部屋にお戻りください!どこだどこだ、てうるさいんですから!」
「わかったわ」
ふうとため息をつき急いで部屋に戻った。
少し顔が見えないくらいで、どこに行った、と大騒ぎするから付き合わされる皆が大変なのだ。
早く戻らないと。
あのアルファードの誕生日から5年が経った。
高等部を無事卒業し、卒業の一年後に婚約した。そして去年式をあげた。
私はゼット様の妻となり王宮で一緒に暮らしている。
アルファードは卒業後すぐに婚約し、翌年式をあげた。
勿論相手はシルビアだ。
2人はよく喧嘩しているみたい。すこし驚いた。アルファードと、私は喧嘩なんかしたことがなかった。
まあ、私もよくゼット様と喧嘩はする。
すぐにゼット様が謝ってくるので、喧嘩と言うのかは分からないけれど、幸せな日々を送っている。
そうそう、これこらオデッセイ様達を誘って、アルファードの所に遊びに行く。久しぶりだ。
アルファードもゼット様も立場的に忙しくなかなか時間が取れないから仕方がない。
扉の前に立つと中から騒がしい声が聞こえた。
中に入ると、
「カレン、どこに行っていた!?」
すぐさま私の側にやってきた。
召使い達はやれやれと部屋を出ていった。
「どこ、て。調理場です。ケーキを作るって言ってましたよね?オデッセイ様のリクエストのガトーショコラです」
「ならば、何故俺に行ってから行かない」
「皆様に指示をされていたので邪魔になるかと思いまして。それに、作ることは前もって言ってましたよね?」
ゼット様はそっと私の頬を触った。
「そうだが、側にいないと不安になるんだ」
「ですから王宮の中ですよ。迷子になるわけじゃあるまいし、召使い達も困ってますよ」
ため息をつき微笑むと、ゼット様は抱きしめてきた。
「仕方がないだろ。カレンが見えなくと不安になるのだから」
「はいはい。さ、そろそろ出ませんとオデッセイ様達が待ってますよ」
ムッとした感情が伝わってきた。
「もう少し相手してやろうと思わないのか?」
「では、もう少し努力致します」
私がそう答えると、仕方なさそうに笑い口づけしてきた。
「参りましょう。また、オデッセイ様が待ってますよ」
「そうだな、行こうか」
私達は部屋を出た。
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