第15話好きだと言ってもらいました

「・・・申し訳ありません、ゼット様、あまりに急すぎて・・・」


頭を抱えるようにお父様が、言った。


いや、私も頭がくらくらしていた。


「そうだな、では、カレンと2人で話をする。席を外せ」


「もう少しカレンに時間」


「聞こえなかったか。席を外せ!」


兄様の言葉を遮ると言うよりも、恐ろしい程の高圧的な命令口調で押し付けた。


「・・・はい」兄様


「・・・失礼致します」お父様


「・・・」お母様。


真っ青な顔で部屋を出ていくが、私も一緒に出たかった!もう、ただ、怖いという思いしかなかなく、俯き、ゼット様の顔を見ることができなかった。


皆が部屋を出ていくと、腕を掴まれた。


ビクリと、恐怖で震えた。


やっぱり怖くて苦手だ・・・。


「・・・カレン、今の言い方が嫌だったか?だがそれが俺の言い方だ。しかし、カレンがそんな顔をするなら気をつけよう」


首を振った。


「・・・分かりません。どうして私なんですか?オデッセイ様のことだって、本当にオデッセイ様から言われのですか?本当は・・・ゼット様から言われたのでは無いのですか?」


自分と重なってしまった。


確かにオデッセイ様はっきりされている方だった。2度しかお会いした事がないが、ゼット様と対等に言い方あっていた。だが、逆に言い合える仲と言うことだ。


もしかしたら、オデッセイ様はゼット様が好きなのに、解消されたのかもしれない。


「こっちを向け」


さっきとは違う落ち着いた声につい向いてしまった。


とても優しい顔をしていた。


「オデッセイは俺がカレンを好きなのを知っていた。それに、オデッセイと俺は合わない。あいつはいつも婚約解消したいと言っていたが、誰もが認める理由がないとそれは出来ない。だから、今回はあいつが1番喜んでいる。心配なら来て確かめればいい」


・・・私の事を好き・・・?


「それに、あいつの夫になる条件を、俺は飲めん」


「条件?」


「私の下僕として跪く男が欲しいんだと。あんたが1番理想と遠いわ、といつも言われている」


「それは・・・そうでしょうね・・・」


ゼット様が跪くなんて考えられない。


「カレンは気づいてないだろう?俺がもう何年も好きだったのを」


「・・・え・・・私を・・・?」


そうだ、さっき同じことを言われた。


「そうだな、一目惚れなのかもしれないな。顔も好みだし、周りをよく見ている観察力も気に入っている。礼儀もあり、その時その時の臨機応変さも気に入っている。何りも、人の名前を間違えないのには感心している」


耳を疑った。


ゼット様は真面目に言っているが、どうして私を?という疑問ばかりが浮かび、最終的には、何故ゼット様がここにいるんだろう?といきつき、恐らく考えることを諦めたんだと思う。


「えーと、ゼット様はつまり、私を慰めようとしているんですね」


「何故そうなる?」


「私がアルファードに婚約解消されて、落ち込んでいるからそんな嘘をついて、励まそうとされてるんですね。私が、ゼット様を好きになることがないと分かってるから、そう言って下さってるんですね。私にはいい所が沢山あるから前向きになれと」


それなら分かります。


「では、カレンに来た文を全部断れと言ったのは?励ますだけなら、そんな事しないだろう。俺を好きにならないのなら、文を残していた方いいんじゃないか」


「うっ・・・では、ゼット様も婚約解消されたので、暇つぶしに私をからかってみようかと」


「それは心外だな。そんな性格が悪いと思っているのか?」


「うっ・・・。いえ・・・ゼット様は真面目方です。直接お話をする事は少なかったですが、他の方と話される内容を聞く限りでは、誠実で真っ直ぐな方だと思います」


「ほお。それは嬉しいな。その俺が嘘をつくのか?」


「しかし・・・その・・・内容がとても信じられません。私を、その・・・ずっと見ていたなんて・・・」


好きだなんて、思いつかない。


「それは、カレンがアルファードしか見えてなかったからだ。だが、もうアルファードと婚約は解消された。もっと周りを、自分を見ろ。お前は自分がいい女だと気づいていない。実際婚約解消を望んでいた者が多いから、文が幾つも来ているのが何よりも証拠だ。だがお前は1人しかいない」


当たり前です。


「幾つも文を貰っても、何人の男がお前に求婚しても、1人しか選べない」


当たり前です。


「だから、お前は俺を選べばいい」


何故そうなるのか意味が分からない。


「あの、好きにならなかったら?」


とりあえず聞いてみた。


「それはないな」


はっきりと笑いながら言われて絶句した。


どこからそんな自信が来るのか不思議だった。


だけど、アルファードの穏やか気持ちを持ってる人が自分を安心させてくれると思っていたが、こんなにはっきり気持ちを言ってくれる人も、安心出来るんだと思った。


「じゃあ、婚約者候補ということにしておきますね」


「いいぜ。その代わり、候補は俺だけにしておけ」


「それ、候補の意味ありますか?」


「ない」


また、自信たっぷりに言われ、なんだか笑ってしまった。


「では、あまり怖い顔はしないで下さい。なるべく優しく言ってください。それでしたら・・・前向きに考えます」


「わかった。カレンが望むことは努力しよう」


そう言って安心したように微笑まれた。


ゼット様は次の日帰っていかれた。


私の婚約解消はハリアー様から聞いたようで、週末を待って急いで来たとの事だった。そう言えば、アルファードはハリアー様が隣りの国へ行っている隙に解消したんだった。


何枚かの文を置いて帰られた。


国に帰ってまた送るが、それまでの間に読んで欲しいと用意してたようだ。以外にマメなんだな、思ったし、また内容が私を初めて見た時のことや感じたことを書いていて、読んでるこっちが恥ずかしかった。


ただ、本当に私を見ていたんだ、と嬉しくも思った。


お父様もお母様も兄様も、私が良ければそれでいいと言ってくれた。

特にお父様は、喜んでいた。

ゼット様の立場もそうだが、性格も仕事ぶりもご存知で、ゼット様の父上タイタン陛下も、母上であるアクア王妃もご承諾であれば問題ないと、言われた。


ゼット様に対する気持ちはまだ、あやふやだが、嫌な気分では無いのは確かだった。


 


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