第14話待ってください!婚約者いますよね!?
「恐れ入ります、ゼット様。何の御用でしょうか?」
客間に皆が集まっている。
門番がゼット様の来訪を屋敷に告げると、勿論屋敷は大騒ぎだ。
普通なら前もって文などで連絡し訪問する。急に訪れる相手なんて友人か親戚ぐらいだ。それも、まさかこんな大物の訪問なんて、誰も予想だにしない。
そんな大騒ぎの中兄様も帰ってきて、家族揃って意味もわからずゼット様を迎えた。
だから、お父様の、何の御用でしょうか?と言うのに、全くその通りだと思った。
それも、何故かゼット様は隣に座れと命令するし、益々意味が分からなかった。
「単刀直入に言おう。カレンと婚約をしたい」
はっ!?
とても静かに、耳障りのいい声で、そんな事を言った。
すぐに隣りに座るゼット様を見ると、私の方を向き、まるで至極当然と言わんばかりの顔で見つめられた。
「・・・何と?」お父様
「・・・あの・・・どういう意味でしょうか?」お母様
「・・・本気ですか?」兄様
ぽかんとした顔で、皆が聞いた。
「アルファードと婚約解消したんだろ。だったら俺と婚約しても問題ないだろ。それとも、もう誰か決まってるのか?」
いや、ちょっと待って。
決まってはないけど、急にそんな事考えてもいない。
「いや、まだそのような相手はおりません。これからゆっくりと本人が探せば良いかと思っています。ですが、カレンに文が幾つも来ておりますので、そこから選んで行こうかと思っていたところです」
側に控えていた召使いが、十数の文を置いた。
私が驚いた。今までこんなもの貰った事がなかった。
「恐らく、正式な婚約解消の文が届いたので、皆様動かれているんだと思います」
「全部断れ。では、問題ないな。正式な手続きは国に戻ってから始めるが、半年後には俺の婚約者としてお披露目をする」
横柄態度のまま、それも勝手に決めていく。
まって、その前に。
「いや、それはそれで大変名誉な事ですが、本人の・・・その・・・意思も尊重すべきかと」
お父様が私を見て戸惑いながらも、当たり前の事を言った。
「勿論だ。カレンの気持ちは大事だ。だが心配するな。俺達は上手くいく」
いや、何故そんなに自信満々に言われるんでしょうか?
それに、もっと、大事なことがある。
「父上も母上も承諾の上だ。カレンなら全く問題ないと喜んでいた」
ダメだ!話がおかしな方向に進んでいく。
「ちょっと待って下さい!そんな事より、ゼット様には、婚約者が、オデッセイ様がおられましたよね!?」
私と同じ歳の可愛らしい方がゼット様には、婚約者としているのだ。
2度ほどしかお会いしたことがないが、この方も幼い頃からゼット様の婚約者として側にいるのを知っている。
「ああ、婚約解消された」
「え?」
「カレンが婚約解消されたと知ったら、やったわ、やっとあなたとおさらば出来るわ。婚約解消してあげるから、絶対に結婚して戻ってこないで、と嬉しそうに言われた」
「・・・は・・・?」
「つまり、カレンが俺も貰ってくれねーと、オデッセイが乗り込んで来るぜ。あいつ、俺よりもはっきりしてるからな」
足を組みながら、また、おかしな事を言い出し、全く!理解できなかった。
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