第11話隣の国の皇子

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。兄様が紹介したい人がいるから、て言ってくれてるの」


「誰!?」


何故かシルビアが鋭い瞳で聞いてきた。


「さあ?誰かは聞いていないわ。でも、友人にオーリス様とジムニー様がいたから頼んでみてもいいかもと思っているわ」


狡い事を言っているいるのは百も承知だ。2人が学園で人気があると、セリカとステラから聞いた。


案の定シルビアの顔が悔しそうに変わった。


「誰?」


アルファードが聞いてきたのをふんわりと微笑んで答えた。


「オーリス様は公爵令息よ。ジムニー様は侯爵令息よ。だから問題ないと思うけど、まだ、先の話だものどうなるか分からないわ。誰もいなくてどうしようもなかったら頼んでもいい?」


「勿論だよ。カレンに困ったことがあったら、私にすぐ言って欲しいな。幼なじみだろう」


幼なじみ。


ほら。


なんて、棘のある内容をさらりと言うんだろう。


「ええ。皇子が幼なじみて、私だけだからね。ちょっと得した気分だわ」


「カレンの為ならなんだってしてあげるよ」


「ありがとう。でも、もうシルビアの事だけ考えてあげて。シルビアも、もう私の事まで考えなくてもいいわ」


そこで言葉をあえて切った。


「私は私でどうにかするから、大丈夫。私にあまり声をかけるのとシルビアがヤキモチ妬いてしまうわよ」


あの微笑みを向ける。


心がなくとも、誰が見ても幸せを感じる、王家で教えて貰った微笑みを。


アルファードはとても満足そうに頷き、シルビアは睨みつけてきた。


「わかった。でも、何か困ったことがあったらすぐに言ってくれ、助けてあげるから」


「ええ、じゃあ私は帰るね。シルビアも今週から王妃の教育でしょう?」


「そうよ」


得意気な顔がなんだかおかしかった。


「頑張ってね。あなたならできるわ。だって、アルファードが選んだ人だもの」


もう、帰してくる言葉なんて聞かない。


ほら、アルファード、と名前を呼ばなくても問題ない。だから、シルビアから、様をつけてなんて言われなくてもすむ。


会釈し、すぐに側を離れた。


不思議な感情が支配する。とても、落ち着いていた。


早く帰ろう。


2人の視界から消えたくて急いで正門を出た所で声をかけられた。


「カレン様」


この国の服装ではないが、見知った顔だ。


少し離れた場所に豪華な馬車が止まっていた。


「屋敷まで送りますのでどうぞ」


軽やかに会釈し、促した。


「屋敷まで?私を?」


「はい。お待ちでございますです」


「分かりました」


相手が相手なだけに断れないので従った。


馬車の扉が開き中へ入ると、にこやかにその方は座っていた。


「久しぶり、カレン」


「お久しぶりです。ゼット様」


会釈し、微笑んだ。


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