第8話昼休みシルビア目線

「凄いね、寮に住んでいるのにこんなに作ったのか?」


色とりどりで、いろんな種類のおかずが敷き詰められた弁当箱に、アルファード様はとても驚き喜んでくれた。


当たり前よ。食べ物にうるさいこの私についている、召使いヴィッツが作ったのよ、失敗する訳ないじゃない。


「大した事ありませんわ」


あえて恥ずかしそうに俯きながら答えた。


「でも、これだけ作ろうと思ったら早起きしないといけないだろう?明日からはもう少し少なくていいからね」


「えっ!?作ろうと思ったら!?」


私の驚きにアルファード様は不思議そうにした。


「な、なんでもありませんわ。アルファード様の為なら、早起きも幸せです。だって、今の嬉しそうなお顔を見れるなんて頑張ったかいがありますわあ」


「そうか、やっぱりシルビアは私の運命の人だ」


目を細め熱い瞳で私を見た。


良かった、ごまかせた。カレンたら、伯爵家のくせに作ってたの!?


誰が作っても一緒なのに、そんなつまんない事してどれだけアルファード様を繋ぎとめようとしてるのよ。


あさましい考えだわ。


「嬉しいです。私も、まさかこんな日が来るなんて思っていませんでした。ずっと遠くでアルファード様見ていて、ああ、私ならこうするのに、カレンたら、もう少し考えてあげて、と思っていたんです。全部夢物語だと自分に言い聞かせていたんです。だって、アルファード様の側にはいつだってカレンが我がもの顔でいたから・・・。まだ、夢みたいです・・・」


「幼い時からずっといたからね。周りにはそんなふうに見えたのかもしれないな。だが、今は君がいる。嬉しいよ。そんなに私を見てくれていたのか。シルビア・・・もっと早く気づけばよかった」


「いいえ。今からでも充分です。今ここにアルファード様いることがまだ現実だとおもえないんです。ああ、幸せすぎて、抱きつきたいくらいですう」


「シ、シルビア!なんて事を言うんだ!」


恥ずかしそうに言いながらも、私をちらちらと見る。


前から思っていたが、カレンとは全く何もなかったのだろう。


おかげで扱いやすかい。


「・・・も、申し訳ございません。だってえ、アルファード様がとても好きなんで、つい思ってしまったんです」


得意の甘える声で、アルファード様を上目遣いで見つめる。


「た、食べよう!せ、せっかく作ってくれたんだ!」


誤魔化すようにお弁当に手をつけた。


なんて、可愛らしいのかしら。


カレンのおかげだわ。こんなに単純な人にしてくれて、お礼言っとかないとね。


だって、たったあんな事で私を好きになってくれたんだもの。


アルファード様は少し食べて、進まなくなった。


もっと食べてよ、私が食べずらいじゃない。


「嫌いな物がありましたかあ?」


早く食べてよ、私が食べれないじゃない!


「いや・・・野菜が好きじゃなくて・・・。カレンは色々工夫して作ってきてくれてたから、こんな形のままの野菜は嫌いなんだ」


はあ!?子供か!?


「そうなんですね。でも、私も工夫は得意です。次はアルファード様が食べれるようにしてきますね。でも、野菜が嫌いなんて子供みたい。うふふ。可愛いですね、アルファード様ったらあ」


「そんな事言われた事ないよ。いつもカレンは好き嫌いは、良くないわ、と言って、叱ってくるんだ。でも、シルビアも子供みたいだね。こぼしてるよ」


スカートの上に落ちたのを可笑しそうに笑いながら言った。


「・・・ごめんなさい。私口が小さいから・・・入りきらなくてえ」


「そ、そうだね。可愛い唇してるからね」


恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、私の唇をチラチラ見てくる。


「あーん、アルファード様にそんな事言われたらドキドキしちゃいますう。もう、アルファード様たらあ」


肘でつんとつつくとぶるると震えていた。


「シルビア・・・。なんて可愛い事をするんだ」


男の、熱い眼差しで私を見てくる。


「だってえ、アルファード様が素敵すぎるからですぅ」


「シルビア・・・。なんて愛しい人なんだ・・・」


私を見つめ、ぐっと肩を掴んできた。


このまま口付けだ!学園でウワサが広まれば、私は確実な婚約者!!そしてカレンは、捨てられた女のレッテルを貼られる。2度とアルファード様に近付かなくなるわ。


「・・・シ、シルビア肩に白い物が落ちていた。私はもうお腹1杯だから、ご馳走様するよ」


恥ずかしそうにサッと離れた。


ちっ。まあいいわ。これからね。


「シルビアは?まだ食べる?」


「え!?」


その聞き方が、もう終わりだよね、という感じだった。


お弁当はまだ半分以上残ってる。


それにアルファード様は本当にちょっとしか食べてない。


私はこれ全部食べれるけど、


「そうですね。私ももう宜しいですわ」


アルファード様と別れてから食べよう。全然足りないわ。


「それでは片付けてもらおうか」


「え?」


近くにいたアルファード様の護衛の人がさっさとお弁当を持っていった。


「あ、あの?」


「綺麗に洗ってもらって返すよ。また明日楽しみにしてる。どうなんふうに野菜をリメイクするつもりなんだい?カレンは色々してくれて、野菜のポタージュが多かったな。シルビアは何を考えているんだい?」


「へ!?」


ポタージュ??そんなのカレンは作れるの??


「・・・炒めるとか・・・?」


「それだったら、野菜のままじゃないか。シルビアは、誤魔化すのが上手いな。楽しみに、と言う事だね」


優しく微笑んでくれた。


「そ、そうなんです!アルファード様、楽しみにしといてくださいね」


「嬉しいな。そろそろ戻ろうか」


「はい」


私達はそれぞれの教室に戻った。


結局お弁当はどこかに持っていかれたようで、帰ってこなかった。


何よ!こんなじゃ足りないわ!!それに、手作り弁当なんて聞いてないわ!絶対自分で作ってるわけがない!!


あの女、アルファード様の野菜嫌いにつけこんで、そんな嘘までついてたんだ。カレンがアルファード様を好きだったのは知ってる。でも、アルファード様にとったらその程度だったのよ。


これから週末は王宮で教育が始まるわ。もっとアルファード様に近づいてやるわ!


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