第7話シルビアについて

「あの態度はどうですの!?まだ、婚約者では無いないんでしょ!?あ、カレンお弁当はご馳走様でございます。これからもお願い致しますね。いつもながら美味しゅうございました」


怒りながらも、ちゃっかりと催促することは忘れない。


セリカは元々少しきつめ目をしてる。私のために怒ってるのも分かってるんだけど、釣り上げがった目は、怖い。


2人は小等部の時からの友達だ。


セリカは、ガーランド伯爵家の娘で、ステラは、シャウト子爵の娘だ。


「まだよ。昨日お父様が教えてくれたけど、在学中の2年間で皇子に相応しい礼儀作法を、勉強してもらって、卒業後に正式に婚約するみたい。とりあえず今は婚約者候補という形みたい」


「無理だわ、あの女には。まず朝の挨拶も出来ないもの。カレン明日のデザートは桃のコンポートが食べたいわ」


お弁当箱を片付けながら、バッサリとステラが言い放った。


こちらも、催促すること忘れていない。


「わかったわ。でも、見てたのね」


「見てたと言うよりは、やっぱりねという感じだね。同じ子爵だし、お父様の仕事の関係で社交界で会うことが多いのよ。私も何度か挨拶したけど、完璧に無視された。と言うよりは好き嫌いがはっきりしてる性格だな。自分に優しくしてくれる人には愛想いいし、そうじゃなかったから、興味なし。たいして頭も良くないし、それと、凄い食い意地がはってて食べ方が汚いのよ」


「そんなに?」


「あまりの汚さに2度見するわ、いつも。足元にボロボロ食べかす落としながら口いっぱい頬張るんだよ。あれは・・・ちょっと・・・。それを男子は可愛いというのが、意味分かんなかった。確かに顔は可愛いし男が好きそうな甘えた声を出すし、少しモテてるみたいだけど、その程度でアルファード様の婚約者は務まらないわ」


「噂では、私は可愛いから玉の輿にのるのよ、とか言っていたみたいでしたから、まんまとアルファード様を捕まえたんでしょうね。でもそれなら、何か知りませんの?2人の馴れ初めめとか」


「もう、やめようよ。あまり人の悪口聞きたくないし、関わりたくない。馴れ初めとか聞いても・・・なんか・・・嫌な気持ちになりそうだから・・・」


シルビアに言われた、


私が一番アルファードを知っている的な?負け惜しみのつもりで教えようとしてた?


その言葉がずっと反芻していた。


そんなつもり毛頭なかった。アルファードが好きな場所を教えてあげるつもりだった。特に2人の秘密の場所でもない。


でも、外から見たらそう見えたのかもしれない。


「・・・シルビアが選ばれたのよ・・・」


自分の嫌な考えを振り払うように首を振った。


「ごめん・・・あんまりにも2人が無神経過ぎてさ。カレンは凄くアルファード様が好きだったのに、こんな簡単に他の女に心変わりするなんて酷いし、シルビアは、全然気品というものがないもの」


「そんな事ないわよ。これから教育を受けるから、素敵になっていくわよ。私はお父様がハリアー様と仲が良かったから、運が良かったのよ。ねえ、もうこの話しやめよう。私はこれか好きな人を見つけるんだから、そっちの話ししようよ」


無理に笑っているのは分かっていた。


でも、笑わないと、皆の心配の気持ちに寄りかかって、泣いてしまいそうだった。


「そう、ですわね。恋バナという事ですわね。今までアルファード様がおられたから、そういう話しをしてませんでしたね。ここは、」


セリカが急に私の頭上をハッとした顔で見て、びっくりするぐらいに目を見開いた。


「カレン、ここにいたのか」


背後から兄様の声が聞こえ振り返った。


「兄様」


兄様と2人の男性が一緒にいた。


立ち上がり、軽く会釈した。


「ご機嫌よう。オーリス様。ジムニー様」


私が微笑むと2人は驚いていた。


「俺の名前を知ってるのか!?」


「僕の名前を知ってたの!?」


「はい。だって屋敷に何度か遊びに来られてましたよね」


兄様が連れて来ていたのは知っている。


確かにきちんと話をした事はないけれど、名前は知っている。


「へえ。良かったな」


ニヤニヤと兄様が笑うと2人は顔を赤くしていた。


「兄様?」


「いやこの2人が」


「いや、もういい!」


「ソリオ行こう!」


そう言うとオーリス様とジムニー様は無理やり兄様を引っ張って行ってしまった。


なんだったんだろう?


「カレン!?あの2人を知ってるの!?」


「知っているんですの!?」


2人が私に詰め寄ってきた。


「う、うん。兄様の友達だから・・・。なんで?」


「なんで、て2人とも学園で凄い人気なのよ!」


「そうですわよ!アルファード様ばかり見てたから全く興味なかったでしょう!?」


「う、うん」


確かに2人とも綺麗な顔立ちはしていた。爵位もオーリス様は公爵で、ジムニー様は侯爵だから、人気があってもおかしくない。


「ふうん。そんなに人気なんだ。ちなみに兄様は?」


何となく聞くと、微妙な顔された。


「まあまあよ」


「そうですわね」


兄様、ちょっと残念な結果みたい。


聞かなきゃ良かったな。


 


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