第5話邪魔はしないわ

「おそっおおい!待ってたのよおお!」


教室に入るといきなり甘える声で、シルビアが私の腕に絡みついてきた。


今まで1度も声を掛けてきた事がなかったのに、わざわざ来るということはアルファードの事しかない。


「おはよう、シルビア。どうしたの?」


「今日から私とアルファード様が一緒にお昼を食べるでしょ。だから、その時間にはカレンに来ないで欲しいの。分かるわよね、邪魔したいだろうけど、そこは我慢してね」


わざと声を大きく、お願いしてくる。


邪魔したいだろうけど、てそんな事考えたこと無いのに、そう言ってしまえば、まわりはそう思ってしまう。


こんな子だったんだ、と初めて知った。それも、挨拶も返して来ないなんて、考えたくないけど、礼儀が足りないのでは、と思う。


言葉の端々に、優越感を感じさせる馬鹿にした言い方も気になった。


教室からも、廊下を歩く誰もが、どういう事?の声が幾つも聞こえる。


「ええ、分かってるわ。心配しなくても行かないわ。もうアルファードと用もないのに、喋ったりすることも無いでしょうね」


「良かった、ちゃんと常識は持っててくれて。あ、それと呼び捨てはやめてよ。幼なじみかもしれないけど、もうカレンは婚約者じゃないんだから。わかったあ?」


私ではなく、ちらちらと周りに顔を向けながら、婚約者じゃないんだから、を強調する。


「・・・それもそうね。皇子でものね。様をつけて呼ぶわ。他にいつも行ってる場所があるか」


「あ、その情報いらない。だって、アルファード様とカレンの2人の場所なんてもう必要ないし、私が聞いてどうするの?もしかして、私がアルファード様を1番知ってるのよ、的なこと?を負け惜しみのつもりで教えようとしてた?」


くすくすと笑う。


「そんなつもりじゃ・・・ないわ・・・」


鞄を持つ手に力が入る。


「やめなよ、シルビア。そこは本性なんだからあえて突っ込んだら可哀想だよ。そういとこに嫌気がさして、シルビアを選んだんだから」


シルビアの後ろから、ミラが口を出てきた。


「そうね。ごめんねカレン。ともかく、邪魔しないでね」


そう言うと、席に戻っていった。


私もすぐ席に行くと、チャイムがなった。


授業が始まり、休憩の度に私はトイレに行った。


逃げている、と思われても仕方の無い行動をしていた。


でも、皆が、


捨てられたのよ、


ああ、やっぱり、


婚約者だからって高飛車だったものね、


何様のつもりなの?


そんな声が聞こえてきそうで怖かった。


それに、シルビアやミラに、さっきみたいに言われるのも絶えられなかった。


 


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