第3話兄ソリオ目線
「父上、何故こうなったのですか!?」
昼食を皆で食べながら、勿論カレンはいないが、父上に噛み付いた。
「 知らん!!ハリアーは隣の国に行っていて、どうもアルファードが勝手にやったようだ!ハリアーに相談したら反対されるのをわかっているから、いない間に動いたんだろう!!」
ドン!!忌々しく机を叩いた。
食器が飛び跳ねた。
朝早く妹であるカレンと父上が王宮に呼ばれ嫌な予感はしていたが、案の定帰ってきてからのカレンの真っ青な顔と無表情。
それが答えだった。
誰にも会いたくないとカレンは部屋に籠り、全く顔を出さなかった。
「なんですか、その子供騙しは!!こんな事本当に通るんですか!?ハリアー様もカレンがもっとも相応しいと言っていたではありませんか!」
「ああ、その通りだ!アルファード様を支えれるのはカレンしかいないんだ!!本人が全く分かってない!!」
「ポルテ様は?」
私達の言い合いに不安そうに母上が、アルファード様の母君、つまり王妃様の意見は、と聞いた。
「本人が決めることだ、と仰ったそうだ。・・・確かにそうだが・・・」
言葉を濁し、父上も母上も沈痛な面持ちで下を向いた。
カレンがアルファード様を好きだったのは見ていてわかった。
だからこそ、王家に相応しい振る舞いも、行儀作法も、法さえも、誰が言うわけでもなく、頑張っていた。
粗相がないようにしないとアルファードに迷惑がかかるわ、といつも言っていたカレンの顔が浮かんでくる。
並大抵の努力ではなかっただけに、悔しい気持ちになる。
「どのような感じの女性でしたの?」
母上が気になる事聞いた。
「同じクラスだと言っていた。スノート子爵家の娘で可愛い顔立ちはしていた。カレンは可愛いと言うよりも綺麗な顔立ちをしている。もしかしたらアルファード様に容姿的な好みがあったのかもしれないが、あきらかにカレンに勝ったと言う顔をわざわざ見せていた。それよりも気品が全くない。がに股で背筋も曲がり、きちんと教育を受けているのか疑問だ。はっきり言ってアルファード様が騙されているとしか思えん!!」
親としては娘が目の前で振られたのはかなりショックだっただろう。
ましてや親友であるハリアー様と自分が蚊帳の外に追いやられているのも気に入らにいらないのだろう。
たが、私も納得いかない。その場にいたら殴っていたかもしれない。
「こんな事許されるんでか!?ハリアー様の意見も、相談もなく勝手に決めるなど考えられません!!確かに本人の意思が尊重されるとはいえ、国の将来にかかわる事かもしれないと言うのに、もっと話し合うべきだ!!カレンはあんなに頑張って来たんだ!!・・・私も好きなんです・・・と言えば良かったのに・・・」
つい、口に出てしまった。
兄の私から見ても、カレンは優しすぎるんだ。
「そんな事・・・あの子が言うわけないだろう。アルファード様が自分を好きではなかったとわかった時点で、身を引く事を考える子だ。国の為など、アルファード様は考えてないだろう。・・・帰りの馬車の中でも気丈に振舞っていたが・・・泣くのを我慢しているのは見ていて辛かった・・・。ソリオお前の気持ちは分かる・・・私も同じだ。だがどちらにしても・・・今更どうにもならないだろう。宰相様の前で他の女性を選び、カレンが承諾した以上婚約は解消される。あとはハリアーが帰ってきてからどう動くがだが・・・。カレンの性格では、もう婚約はないだろう。いや!もう結構だ!!私の大事な娘をあんなに奴にやるものか!!!」
父上が怒りに満ちた声でいった。
そこではっとした。
父上の言う通りかもしれない。カレンがアルファード様を好きだからと言って、その女性と別れて、また、カレンと婚約?
ふざけるな!!と素直におもった。
「そう・・・ですね。あの男にカレンは勿体ないですね。逆に良かったかもしれない。カレンを本当に大切にしてくれる人がいるはずです」
「あなた、カレンに似合う婚約者を探してあげたら?」
母上がが親心で提案してきたが、すぐに私は首を振った。
「母上それは、反対します。下手に父上や母上が選べばカレンの事だ、心配させまいとその男性と結婚するよ。好きになりました、とか嘘ついてでも。・・・少し放っておきましょう。カレンなら、幸せになれる相手を見つけるよ」
「そうだな。しかし、その娘の事はカレンから聞いてないか?同じ高等部だろう?」
「さすがに分からないな。1年と3年では校舎も違うから、ましてやスノート子爵の名を聞いた事がない。男子はいるのですか?」
「中等部にいたはずだ。私もスノート子爵とは、仕事柄関わりがないしな。社交界であいさつするくらいだ。まあいい。婚約解消されたのは事実だ。恐らく来週のうちには全貴族に文章が送られるだろう。そこからもしかしたら、カレンの事を気にしていた男性が動くかもしれん。すまないながソリオ、後でカレンの様子を見てきてくれないか?兄のお前の方がまだ、気楽に喋ってくれるかもしれん」
「分かりました」
その後葬式のような食事を終わらせた。
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