ウィステリア・ガーズ(SW2.5リプレイ)

たぬき

ウィステリア・ガーズ

本作は「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。

(C)GroupSNE

(C)KADOKAWA



  ウィステリア・ガーズ


 殺人マシーンが闊歩する混沌の街、魔道死骸区。

 古式に則った生き方をする者からすれば受け入れがたい土地。

 騙し、騙されることが当然の土地。


 魔動機と呼ばれるマナ仕掛けのメカニックは、大型魔動機の骸から人々を攻撃するために現れた群体。

 だが人々の逞しさは、それらをすべからく改造し、今や人々の経済活動を助け、守るために作動している。

 かつて無辜の民を殴りつけ、貫き、返り血を浴びたその四肢で、建築資材を運び、食料を調達し、子をあやす。

 それは異常とも言える。


 それでもこの街の住人たちは剣と魔法の世界に歪に割り込んできた金属の隣人を受け入れながら生きている。

 かすかな希望を胸に、強かに、時には卑怯に生き抜こうとする。

 複雑な心境で、世を忌避しながら。





GM:簡単な自己紹介をお願いします。まずはPLAさん。

PLA:キャラクターの名前は「ギズ」です。豹タイプのリカントで15歳。技能は【シューター3】【スカウト1】を持ってます。

GM:容姿と経歴は?

PLAギズ:リカントとしては背がちっさくて身長169センチ。金髪で目は赤。冒険に出た理由は自由になるため。路頭に迷いかけながら生きてきました。

GM:苦労して来たんですね。セッション用のキャラ画像はAさんの自作ですね?

PLC:ギズくんかわいい。これはお姉ちゃんロールがはかどる。

PLB:オネショタイイゾーコレ。

PLC:15はショタじゃなくない?

ギズ:成人してます。酔っ払いRPもできるぞ!


 ギズの能力

 種族:リカント

 技能【シューター3】【スカウト1】

 練技【キャッツアイ】

 戦闘特技【ターゲッティング】【鷹の目】

 装備【ヘビーボウ】【ハードレザー】


GM:続いてBさんどうぞ。

PLB:名前は「ダンティリオン」エルフ男の75歳。技能は【バード2】【フェンサー1】【セージ1】持ちです。

GM:容姿と経歴は?

PLBダンティリオン:身長177センチ、髪はブラウン、碧眼に眼鏡。見るからに優男風ですね。流れの吟遊詩人の好色家で、美しい女性を見ると口説かずにはいられない。

GM:好色。(笑)

PLBダンティリオン:主力楽器は【明音のフルート】。「僕の歌を聞け!」で、攻撃します。


 ダンティリオンの能力

 種族:エルフ

 技能【バード2】【フェンサー1】【セージ1】

 練技【ガゼルフット】

 呪歌【アーリーバード】【終律:夏の生命】

 戦闘特技【呪歌追加Ⅰ】【終律増強】

 装備【明暗のフルート】【ダガー】【クロースアーマー】【バックラー】


GM:RPがはかどりそうなキャラですね。続いてCさんどうぞ。

PLC:名前は「セッカ」です。人間の22歳女子。技能は【ファイター2】と【マギテック1】。

GM:容姿と経歴は?

PLCセッカ:金髪碧眼の美少女?(笑)っぽく見える童顔お姉さんです。身長173センチ。女子にしてはでかい! 孤児だった幼少期にマギテックファイターの師匠に拾われる。その師匠のことが好きだったけど、つい最近、師匠に恋人がいることを知って失恋、そのまま飛び出すように冒険者になりました。恋愛小説好きで、よく大きな街の図書館に籠ることがあります。


 セッカの能力

 種族:人間

 技能【ファイター2】【マギテック1】【スカウト1】

 戦闘特技【必殺攻撃】【武器習熟A/スピア】】

 装備【スピア】【スプリントアーマー】


GM:マギテック+ファイターは珍しい組み合わせですね、活躍に期待します。では、セッション開始です。




 === 冒険者の店・ファットバット ===


 現在地は街の中心にほど近い冒険者ギルド兼、宿泊酒場「ファットバット」

 物語はそこから始まる。


 3人は旅の冒険者。さすらいの果てに魔動死骸区へとたどり着いた。

GM:3人は初対面です。

ギズ:それぞれで旅をしてて、たまたまここで出会った感じですか?

セッカ:相席したとかそんな感じかな?

GM:はい、たまたまの相席ですね。

ダンティリオン:了解です。

セッカ「はー、疲れたー!」大きく伸びをしながら着席する。

店主「あんたら、見慣れん顔だな」

セッカ「そう、新人」

店主「食事か? 泊りか? それとも冒険か?」

セッカ「そうそう! 冒険!」

店主「ほぉ。こんなろくでもない土地にわざわざ来るとは、大した物好きだな」

ギズ:隣で話を聞いてる。

セッカ「でもまあ、マギテックにはいい土地だし、ここで新しい技術とか探すつもり」

ダンティリオン「おやおや、こんなところに可憐なレディが。相席よろしいかな?」

セッカ「あらこんにちは」

ギズ「…別にいいけど」

セッカ「あなたも冒険者?」

ダンティリオン「そのようなものです」ニッコリ微笑む。

店主「あんたら3人はパーティか?」

ギズ「違う、初めて会った」

店主「なんだ、組んでるわけじゃねーのか」

セッカ「たまたま相席しただけよ」

ダンティリオン「天の巡り合わせといったところですね」

店主「なんだったら、今この場で組んじまったらどうだ? 回したい仕事もあるからな」

セッカ「ちょうどお金欲しかったところだし、私は構わないわ」

ダンティリオン「こんな美しいレディとご一緒できるなら、是非」

ギズ「おれも問題ない。仕事って、どんな?」

店主「細かいことは直接話すって依頼人が言ってんだ。問題無けりゃ組んじまいな」

セッカ「ふうん、私は構わないわ」

ダンティリオン「申し遅れました。私はダンティリオン。流れの詩人で冒険者さ」

店主「詩人? バードか?」

ダンティリオン「ええ。そして恋の伝道師でもあります」

セッカ「はあ… 恋ね」少し呆れた顔で遠くを見つめる。

ダンティリオン「レディ、よろしければ僕と一曲奏でませんか?」セッカに。

ギズ(変な人だな…)

セッカ「音楽は好きじゃないの。私、音痴だし」

ダンティリオン「おやおや、残念」

セッカ「ところで君は?」ギズに。

ギズ「おれはギズ」

ダンティリオン「ギズくんか。よろしくね。レディ、お名前は?」

セッカ「名乗らなかったかしら、セッカよ」

ダンティリオン「セッカさん。ときめくお名前です」

セッカ「口が上手いのね。会う人全員に言ってるんでしょ?」

ダンティリオン「言葉は同じでも込められた思いは違うのですよ、レディ。僕のことは気軽にダンとお呼び下さい」

ギズ「仕事の間はよろしく頼む」

店主「自己紹介は済んだか? じゃ、依頼人を呼んでくるから待ってな」2階に上がって行った。

 しばらく待つと、店主は一人の男を連れて降りて来た。

物好きそうな騎士「冒険者というのはきみら… うん? セッカ!? セッカだな?」

セッカ「オリヴァー先生!?」

店主「なんでぇ、知り合いか?」

魔道騎士オリヴァー「こんなところで…」

ダンティリオン「おやおや、レディのお知り合いでしたか」

ギズ「誰?」

セッカ「師匠の師匠よ」

魔道騎士オリヴァー「まさか、冒険者をやってるのか?」

セッカ「そうよ。師匠は… 元気?」

魔道騎士オリヴァー「ユストなら、お前を心配していたぞ」

セッカ「余計なお世話… 私はとっくに成人してるもの」

魔道騎士オリヴァー「変わらんな。お前に縁談を見繕った手間は徒労だったか… ともかく、今はお前は冒険者、俺は依頼人、筋を通す。仕事の話をするぞ」

セッカ「分かったわ」

魔道騎士オリヴァー「報酬は総額で3000G。街外れの荒地で奇妙な挙動をする魔動機を見たという情報がある。目的はそれの捕獲だ」

ダンティリオン「失礼クライアント。奇妙な挙動とは?」

魔道騎士オリヴァー「なんでも人影を見ると、攻撃するでもなく逃げてしまったそうだ。まるで怯えるようにな」

ギズ「逃げる?」

魔道騎士オリヴァー「そのような命令を受けている、と思えなくもないが」

セッカ「行動ルーチンが違うのかしら? 外見に特徴は?」

魔道騎士オリヴァー「小型魔動機だったそうだ。型式は不明。あまりメジャーな機体ではないのだろう。それが2体、色はそれぞれ赤と青。まんまと逃げおおせて、どこへ身を隠しているのか分からん。その魔動機を確保すること。確保が難しければ破壊してもかまわん。コアメモリーさえ残っていれば調べられる」

ギズ(相手が逃げるだけなら危険はないか?)

魔道騎士オリヴァー「目撃報告があった荒地を探索してくれ」

セッカ「分かったわ」

ダンティリオン「荒地ですか。女性とは巡り合えそうにもないですね」残念そうに。

魔道騎士オリヴァー「以上… おっと、一つ言い忘れていた。お前さんたち以外の冒険者にも依頼してある。報酬はあくまでも成功報酬」

セッカ「早い者勝ちってこと?」

魔道騎士オリヴァー「そういうことだ。競争相手は蛮族のグループだ」

セッカ「なっ! 蛮族に頼んだの?」

ギズ「なんで蛮族なんかに…」

魔道騎士オリヴァー「この街では珍しいことではない」

ダンティリオン「そのパーティに女性はおりますかな?」

ギズ(何だこの人)

魔道騎士オリヴァー「…後で娼館の場所なら教えてやる」

ダンティリオン「それは楽しみですね」

魔道騎士オリヴァー「連中の情報を知りたいなら向こうにもお前たちの情報を同様に流す。それでいいなら質問に答える」

ダンティリオン「パーティーである以上、さすがに僕の一存では訊けませんね」

セッカ「私は聞いてもいいと思うけど。訊かれて困るような情報もないし」

ダンティリオン「僕も同様ですね。ギズくんは?」

ギズ「どっちでもいい」

ダンティリオン「では訊かせていただきましょう」

ギズ:女性のことを聞いたら「こっちにも女性がいるよ」って情報が相手に流れるのかなあ。

GM:たぶんそうなりますね。

ギズ:面白いですねぇ。(笑)

ダンティリオン「蛮族グループは何人編成なのです?」

魔道騎士オリヴァー「5人だ」

セッカ「種族は?」

魔道騎士オリヴァー「コボルド4人。ドレイク1人。ただしドレイクはブロークンだがな」

セッカ「ふうん…」

ダンティリオン「して、女性の有無は?」

ギズ:ホントに聞いた。

魔道騎士オリヴァー「いるが… 蛮族にまで色目を使うつもりか? 好き者だな」呆れ顔。

ダンティリオン「それが女性であるのならば、種族の差など些末な事です。同族の年長者以外は、ですが」

セッカ「うーん、これ以上はいいかしら? 戦法とかは見ればある程度察しがつくだろうし」

魔道騎士オリヴァー「質問は以上だな?」

ギズ「おれは質問はない」

魔道騎士オリヴァー「では確かに依頼した。この件は遺跡ギルドを通した公式のものだ。蛮族の連中は今日中には出発する。急いだほうがいいな。荒地までは…」

 オリヴァーが場所を説明。歩いて丸一日。街道は無い。

セッカ「分かったわ」

魔道騎士オリヴァー「ではこれで失礼する。…セッカ」

セッカ「何?」

魔道騎士オリヴァー「命を粗末にするな。落ち着いたらアド領に戻って来い。みな、心配してる」

セッカ「別に死に急いでるわけじゃないわ。…落ち着いたらね」

 オリヴァーは2階に引き上げて行った。

セッカ「じゃあ行きましょうか」

ギズ「よろしく頼む」

ダンティリオン「楽しんでいきましょうか」

セッカ「そうね。楽しむのは大事よ。ギズ君、そんなしかめっつらしてたら幸せが逃げちゃうわよ?」

ギズ「笑うのは難しい」

セッカ「…そう」

ダンティリオン「微笑むことは大事ですよギズくん」

セッカ:流れ的にダンが娼館に行けないね。(笑)

ダンティリオン:帰ってから行くつもり♡

 皆が気合を充実させているその時、何者かがギズに近づいてきた。

小柄な斥候:ギズにぶつかる。どんっ「おっと、ごめんよ~♪」

ギズ「いたっ…」

 ギズは気付いた。財布をスろうとしていた。

ギズ:スられる前に気付きましたか?

GM:気付きましたね。

ギズ:では腕をがっとつかんで。「スろうとしただろ」ぎろっ。

小柄な斥候「なんのことだ? いてーな、放せよ」

ギズ「とぼけるな」

ダンティリオン「どうしたのですかギズくん」

 ダンティリオンは見破った。目の前の少年が、実は男装してる女の子であることを。

ギズ:その子の腕をガっとつかんで睨んでます! 女の子とは気づいていません!

小柄な斥候の少女「いてーだろ! 因縁かよ! 放せよ!」

ダンティリオン「そちらのレディが何かしたのですか?」

ギズ「は?」ちょっとびっくりして腕を離します。

小柄な斥候の少女「あ゛? 誰がレディだ、ボケ!」

セッカ「レディ? 男の子に見えるけど」

ダンティリオン「フードで隠していても、あふれ出る愛らしさは隠せないものですよ」顎をクイっと。フードに手をかける。

小柄な斥候の少女「なにすんだこら!」逃げ出す!

ギズ:口説こうとしてらっしゃる。(笑)

GM:フードを取りますか?(笑)

ダンティリオン:取りますねぇ。

 フードが外された。

 銀髪ショートカット、黒い瞳。

 愛らしい顔立ちの少女がダンを睨んでいる。

 歳は14、5歳くらいに見える。

ダンティリオン「よろしければお名前を聞かせていただけますか?」

小柄な斥候の少女「何言ってんだバーカ!」

セッカ「…」呆れ顔。

ダンティリオン「やんちゃなところも可憐だ」

小柄な斥候の少女「っせー! 放せよ! ヘンタイ!」

セッカ「ホントに女の子なのね」

ダンティリオン「僕の目に狂いはありませんよ」

GM:彼女を開放しますか?

ダンティリオン:しません。「ギズくんとはどうして揉めていらっしゃったのでしょう」

ギズ「財布をスろうとしたのを謝って欲しいんだが」

ダンティリオン「レディ、悪い行いはあなたの心を汚すのですよ?」

小柄な斥候の少女「僕はなにもしてねー!」

セッカ「財布は本当にスられたわけじゃないんだから放しておきなさい。そういうのはスった後に手を取るのよ。そしたら言い逃れできないでしょ?」

魔道騎士オリヴァー「何を騒いでる」2階から降りて来た。「そいつが何かしたのか?」

セッカ「ちょっと仲間が揉めてて。スったとかスってないとか」

ギズ「…」不機嫌。

魔道騎士オリヴァー「そうか。カッサル!」彼女の頭をゴチーン!「財布は無事か?」PCたちに。

ギズ「…無事」

魔道騎士オリヴァー「気を付けるんだな。この街では、こういった手合いは珍しくない。カッサル、これで3度目だな。ギルドに報告する」

カッサル「えー! 何もしてないよ!」

魔道騎士オリヴァー「黙れ」襟首を掴んで引きずって行く。

ダンティリオン「クライアント、少々お待ち下さい。そちらのレディを私に預けていただけませんか? 償いは冒険の中でしていただきましょう」

魔道騎士オリヴァー「おいおい、まさか口説くつもりか? 子供だぞ?」呆れ顔。

ダンティリオン「女性には優しくしなければ」

セッカ「まさか連れてくつもり?」

ダンティリオン「いけませんか?」

魔道騎士オリヴァー「こいつには別の仕事を回してある。その仕事が早めに済んだなら、お前たちと合流させてもかまわんが」

カッサル「勝手に決めんなよ!」

セッカ「はあ…」あきれ顔。

ダンティリオン「僕としてはギズくんとも仲直りして欲しいのですよ」

魔道騎士オリヴァー「面子が増えれば報酬の分け前は減るぞ?」

ダンティリオン「なら僕の分を減らしていただいて結構」

魔道騎士オリヴァー「少女趣味か? だとしたら感心せんな」

ダンティリオン「女性に貴賎なしですよ。私は300歳を超える同族以外ならすべからく愛します」

セッカ(ダンティリオン。ただの女ったらしってわけね)

ギズ「あいつ(カッサル)は信用できない」

魔道騎士オリヴァー「後から合流させるのはかまわん。セッカ、この子はカッサル。見ての通り、手癖の悪いスカウトだ」

セッカ「戦いは出来無さそうね」

魔道騎士オリヴァー「何かの役には立つだろう。あとで追いかけさせる」

ダンティリオン:スカウトは低レベルしかおらんから丁度いい。

ギズ:先制が心許ないから助かる気もする。

セッカ:ぶっちゃけそれもある。

ダンティリオン「感謝しますクライアント」

魔道騎士オリヴァー「道中、足跡が分かるように何か目印でも残しておくんだな」

ダンティリオン「赤い糸でも結んでおきましょうか? スモールレディ?」カッサルに。

カッサル「ふんっ!」ふくれっつら。

ギズ「…」ちょっと不機嫌。

魔道騎士オリヴァー「セッカ、こいつはまだ子供だ。間違いが起こらんよう見ていてくれ」

セッカ「分かったわ。歳はいくつ?」

カッサル「…15」

魔道騎士オリヴァー「14だろうが。反射的に嘘をつく癖を治さんか」頭をゴチーン!

カッサル「ふんっ!」むくれている。

魔道騎士オリヴァー「では、頼んだぞ」

GM:オリヴァーはカッサルを引きずりながら二階に上がって行きました。

ダンティリオン「スモールレディ。お待ちしておりますよ」

カッサル「あっかんべー!」引きずられながら。

GM:では、目的地まで丸一日かけて歩くこととなります。保存食を減らして下さい。


 すったもんだの末、3人と暫定+1人パーティとなった冒険者一行は街外れの荒地、放置地区へと向かった。

 時折砂埃を孕んだ風が吹き付け、陽光を半減させる。

 荒野と砂漠が入り混じっ赤茶色で無味乾燥な光景が地平線まで続く。



 === 郊外の荒地 ===


GM:荒地に着きました。ここまでで24時間かかっています。今は正午過ぎくらい。

セッカ「暑いわねー」

ダンティリオン「レディ。体調は崩されていませんか?」

セッカ「私は大丈夫よ、水分補給はしてるし、鍛えてるし」

ダンティリオン「そういえば、依頼主の元で鍛えられておいででしたね」

セッカ「あの人は師匠の師匠よ。鍛えてくれたのは別の人」

ダンティリオン「なるほど。御師匠は今どちらに?」

セッカ「多分故郷。私を拾って育ててくれた人だけど。もう結婚でもして落ち着いてるかもね…」

 セッカの故郷はランドール地方。

 戦乱が絶えない地域。

ダンティリオン「レディを素敵な女性に育ててくれた方なのですし、さぞや立派な方なのでしょう」

セッカ「そんな人じゃないわ、あんな人…」

ダンティリオン「レディの想いは無駄ではありませんよ」

ギズ「魔動機を探さないと」

ダンティリオン「そうですね。依頼を進めなければ」

セッカ「せいぜい歩き回りましょうか」


 相談した結果、荒地を西へ進むことに。

ギズ:カッサルが追い付けるように目印は残せますか?

GM:どのような目印ですか?

ダンティリオン:どんなのがいいかな?

ギズ:大きめの石があればと思ったけど、目立ちませんね。

ダンティリオン:私がダガー3本持ってるから1本地面に差しとこうかな。

GM:了解です。では、西へ1時間ほど移動。


 荒涼とした岩場。

 ところどころに丈の低い植物はまばらに自生するが、生命の気配は希薄だ。

ダンティリオン「なんだか静かですねぇ。魔道機の影も無さそうですが」

ギズ:キョロキョロと見回してみます。地面に足跡はあるかな?

 ギズは気付いた。

 風で少し消えかけているが複数の足跡がある。

ギズ「ここに足跡がある」と呼びかけ。

セッカ「あら、よく見つけたわね」

ダンティリオン「ブリリアントですね、ギズくん」

ギズ「種類は分からないが、そこらじゅうを歩き回って奥に向かったみたいだ」

ダンティリオン「この先に何かいるかもしれない。少し警戒を強めましょう」

セッカ「私が先頭を行くわ。一番いい鎧着てるし」

ギズ:今のうちに獣変貌します。

 ギズは猫っぽく獣変貌。

 立ち絵はPLAさん自作のデフォルメキャラ。

セッカ:かわいい。

ダンティリオン:かわいい。

ギズ:ありがたいお言葉♪

セッカ:リカント語の話者いるっけ?

GM:いませんね。

ダンティリオン:取ればよかった。次バード上げたらとろう。

ギズ:そうか、コミュニケーションが。何か音とか聞こえますかね?

GM:聞こえてくるのは風の音だけです。

ダンティリオン「蛮族グループが通った跡かもしれませんね。先へ進みますか?」

ギズ『行こう』(リカント語)



 === 郊外の荒地、奥 ===


 一行は更に岩場エリアを進む。やがて切り立った崖に行く手を阻まれた。

 行き止まりだ。

ダンティリオン「行き止まりですか。どうやらハズレのようですね」

セッカ「行き止まり? でも足跡はこっちに続いてたんでしょ?」

ギズ『周りに何か…』(リカント語)と、見まわしてみます。

 セッカとギズは足跡を発見。崖に囲まれた最奥辺りまで足跡は伸びており、そこでぱったりと消え失せている。

ギズ『足跡が消えてる?』(リカント語)

セッカ「この足跡、怪しくない? この岩の前で引き返した様子もないのに途切れてる」

ギズ『確かに』(リカント語)

セッカ「隠し扉でもあるのかな?」

GM:足跡の詳細は分かりませんが、4~5人だと思われます。

ダンティリオン「この人数、蛮族の方々かもしれませんね」

セッカ「となると、先を越されたみたいね」

ギズ:崖の奥まった壁面を調べてみたいです。

GM:壁面を触りますね?

ギズ:ぺたぺた。

GM:では、岩壁が力を入れて押せば動きそうだと気付きます。

ギズ『この岩、動きそうだな』(リカント語)

 ギズは気付いた。

 動きそうな岩の上に人の頭くらいの大きさの岩が設置されている。

 黒板消しトラップ状態。

ギズ:『罠だ。開けたら岩が上から落ちてくる』(リカント語)黒板消しより絶対痛い。2人を手で制します。

セッカ「罠か。古典的ね」

GM:ちょっとつつけば簡単に落ちてきそうです。解除するのは簡単そうです。

ギズ:解除します。

 岩がゴロンと地面に落ち、転がった。

ギズ『もう大丈夫そうだ』(リカント語)

ダンティリオン「この程度、罠というにもお粗末ですね」

セッカ:では開けます。

 ゴゴゴゴゴ…。

 奥まで続く空間が出現。

 足元の石階段は地下へ奥深く続いている。

 階段の先には暗闇が待ち受ける。

ダンティリオン:結構広かった。

セッカ:おっきい。

ギズ:でかいなあ。



 === 遺跡、入口 ===


 明らかな人工物。

 石造りの迷宮が冒険者たちを静かに招き入れようと口を開いている。

 その奥からは冷ややかな空気が手を伸ばし、冒険者たちの頬を微かに撫でる。

 まるで誘うかのように。


セッカ:降りましょうか。奥は暗いですか?

GM:暗いですね。

ダンティリオン「レディ、足元にはお気をつけて」松明点ける。

セッカ「大丈夫よ、足腰には自信があるの」

ダンティリオン「頼もしい限りですね。ギズくんも転ばないように」

ギズ『お前こそ転ぶなよ』(リカント語)

ダンティリオン:降りますー。

GM:先頭は誰ですか?

ダンティリオン「松明持ってるし、私が先頭かなぁ」

 階段の途中に油が塗ってあった。

 足を滑らせて転倒しそうなところをダンティリオンはなんとか免れる。

セッカ「大丈夫!?」

ダンティリオン「あぶないあぶない。ここにいたずらが仕掛けられていますね」

 ダンが油のトラップに気付いたので他の2人は事前に回避。

ダンティリオン「しかし探索となると私は少々不得手ですね。レディ、申し訳ありませんが先を歩いていただいても?」

セッカ「構わないわ」スカウトとったし。

ダンティリオン「申し訳ない。代わりに私はあなたの背後を守りましょう」

GM:更に下へと階段は続いています。降りますか?

セッカ:降ります。

ダンティリオン「まだだいぶ先は続いているようですね」

ギズ『意外と深いな』(リカント語)

セッカ「まあ遺跡だし、こんなもんじゃない?」結構適当。

 セッカは階段の途中に張られたロープに気付かなかった。

 転倒。

セッカ「あぎゃ!」すっころりーん。

 貫通ダメージ1点。

セッカHP : 23 → 22

セッカ「いたた… 少し擦りむいたかしら」

ダンティリオン「レディ! お怪我はありませんか!」

ギズ『大丈夫か?』(リカント語)

GM:ダンとギズは駆け寄りますか?

セッカ「待って! 罠がある!」

ダンティリオン「おっと、ありがとうレディ」罠を気にしながら近付きます。

ギズ:足元に注意しながら近付きます。

 二人はセッカの忠告でロープに気付く。

 問題なく回避。

ダンティリオン「怪我の程度は大きく無さそうですが、貴方の肌に傷を付けてしまったのが無念です」

セッカ「大丈夫だって。過保護ね」

ギズ『おれが先頭行った方がいいか?』(リカント語)ジェスチャーで意思を伝えます。

ダンティリオン:ギズのスカウトいくつでしたっけ?

ギズ:スカウト1と知力3で、2d+4です。

ダンティリオン:期待値は変わらないか。私はどっちでも。

セッカ:とりあえず先頭は私で。防護点はセッカが高いので。

ギズ:了解です。

GM:更に降りますか?

セッカ:降りますー。

ダンティリオン「ギズくんも罠には気を付けて下さいね」

ギズ『分かった』(リカント語)


 階段を降り切った一行の前に現れたのは中央付近が半ば崩れかけ、木材で補修された石橋。

 20m程度の長さがあるだろう。

 橋の下からは水の流れる音が反響しつつ耳に届く。

 薄暗く正確な高さは分からないが、落下すればただでは済まないだろう。

 補修個所がボロボロであることに気付いたためロープを繋ぎ、安全に渡り切る工夫を巡らせ、3人は無事に対岸へたどり着いた。

 橋を渡り切った正面には石扉、扉の脇には更に下へ向かう階段がある。


セッカ「扉か。今までの流れ的に罠があるわよね」

ダンティリオン「しかし、ここまでの罠に殺意を感じなかったですね。橋の補修個所は罠という感じでもありませんし」

セッカ「確かにそうね」

GM:橋を渡り切った壁面に共通語でなにやら書かれています。

セッカ:なんて?

GM:《危ないぞ!》

セッカ「もうちょい手前に書いてよ…」足跡とか探せます?

 ギズが辛うじて気付いた。

 おそらく4~5人程度の足跡。

 ここを通って階段を降りたようだ。

 彼らが何人か、種族は何かの詳細までは分からないが、足跡は小さい。

セッカ「ギズ君、足跡見つけたの?」

ギズ『足跡だ。4、5人くらいか。種類は分からない』(リカント語)石床を指差しながら意思表示。

ダンティリオン「例のパーティーかもしれませんね」

セッカ「コボルドかしら?」

GM:ここからのルートは2つ。石扉の先か、階段を降りるかです。

セッカ:足跡がどちらに行ったか分かります?

GM:扉の前でウロウロ、それから階段を降りたようです。

ギズ『足跡はこっちに続いてる』(リカント語)階段の方指差し。

セッカ「私はどっちでもいいと思うけど」

ダンティリオン「時間を取られましたし、降りてみましょうか」

ギズ『階段を降りた方が気になる。扉の前でうろうろしていたのも気になるが』(リカント語)一応扉が開かないか調べます。

 鍵がかかっていて開錠を試みた形跡がある。

ダンティリオン:鍵開けられそうかやってみる? まずは私が。

 ダンティリオンが開錠に挑戦したが、開かない。

ダンティリオン「やはり鍵開けは苦手なので皆さんにお任せします」

ギズ『任せてくれ』(リカント語)

ダンティリオン「もしこの奥に捕らわれの美女がいたらと、心躍りますよね? ギズくん」ニッコリ。

ギズ『躍らない』(リカント語)

ダンティリオン「それともお宝が眠っているかもしれませんしね」

セッカ「そう都合のいい話は無いと思うけど」

ギズ:開錠判定してみます。2d+3 >14

セッカ:無理か。

 カチャリ!

セッカ:開くのか!(笑)

ギズ:開いちゃった。これがリカントパワー。

ダンティリオン:心躍るなぁ。

セッカ:とりあえずセッカが覗きます。罠とかあってもいやだし。


 薄暗く、広めの通路が更に奥へ伸びている。

 地下水が流れ込んでいるらしく床面は水浸しだ。

 水位は人間のくるぶしのあたりまで。

 マイナス修正を受けるほどの深さでは無さそうだ。

ギズ『水が溜まってるな』(リカント語)

セッカ:どないしょ。扉が開くと思ってなかった。

ダンティリオン:この先を進みたいでますね。

セッカ:私は階段を降りるべきかと思う。これはギズ君次第かな?

ギズ:階段が気になります。そちらを指差し。

ダンティリオン:じゃあそっち行きますか。


 橋のたもとから石階段を降りると、転じて登り階段が目の前に現れた。

 段数は100段程度でさほど高くはないが、階段を登り切った場所にどこから見つけて来たのか巨大な丸い岩が置かれている。

 イン〇ィージョー〇ズ的、古典的トラップだ。

ダンティリオン:岩が(笑)

ギズ『岩だな』(リカント語)

セッカ:あからさま!

ダンティリオン「誰がどう見ても罠ですね」

ギズ:階段を下りて来たんですよね? ここから急に登り?

GM:はい、階段を登ることになります。今は階段の谷底。

セッカ「どうしようかこれ」

ギズ:どんな仕組みで罠が作動するか分かりますか?

GM:今の位置からでは分かりません。

ギズ:岩が転がって来そうな所に近付きません。回避振るかもなのでセッカにお願いしたい。

ダンティリオン:オナシャス。

セッカ:じゃあ警戒して足元見ながらゆっくり登ります。

ギズ:岩動いたら教えられるようにして… おきたかったけどリカント語だった。

ダンティリオン:それは私がやります。「お気を付けを、レディ」

 岩が動き出す様子はない。

 セッカはそのまま登り切ることが出来た。

セッカ:よし!

ギズ:ナイスです。

セッカ「罠の解除出来ないかしら」調べます。

GM:どうやら罠そのものが機能していないようです。

セッカ:え?

GM:階段上の踊り場に岩を設えてある。ただそれだけです。岩は触ってみてもびくともしない。

セッカ「なにこれ。こけおどし?」

ダンティリオン「どうやら時間稼ぎが目的のようですね」

ギズ『バカにしてるのか?』(リカント語)不機嫌。

セッカ「簡単な罠や脅しは仕掛ける。でも殺意無しか。どういうつもりかな」

ダンティリオン「仕掛けた本人に会えば分かるでしょう。先を急ぎましょう、レディ」



 === 催眠の間 ===


 3人は遺跡内を進む。

 天然の岩肌と人口の石壁が織り交ざり、独特で幻想的とも思える部屋に到達した。

 部屋の中央付近はほのかに明るい。

 それは床面に大きく描かれた魔法陣から発せられる光。

 そして、その魔法陣の上には5人の蛮族たちが横たわっている。

 コボルドが4人と、美少女と言って差し支えないであろう年頃の娘が1人。

 少女の頭からは控えめな大きさの角が2本生えている。

 蛮族の一種、ドレイクなのだろう。

 全員眠っているように見える。

 彼らが横たわる床の更に奥へと通路が続いており、迂回して進むことも出来そうだ。


ギズ『あれは…』(リカント語)気になる!

セッカ「蛮族!」

ダンティリオン「む、美女の気配が」女の子キタコレ! ドレイクかな?

ギズ:さすがダンさん。

ダンティリオン「蛮族… いえ、あれは麗しきレディ!」

セッカ「倒れてるわね。罠にでもかかったのかな?」

ギズ『危険だ』(リカント語)

ダンティリオン「そうですね。罠をなんとかしなければミイラ取りがミイラに成りかねません」

GM:正体確認のため魔物知識判定を行うなら近付く必要があります。それとも迂回して奥へ進むか、元来た道を戻るか、任意です。

ダンティリオン「あちらのプリティレディたちを御救いしたいのですが、近付いてもよろしいですか?」

ギズ:魔法陣か。精神抵抗なのかな。

ダンティリオン:近付いて魔法陣について探ったり出来ます?

GM:可能です。

ダンティリオン「どんな罠が仕掛けられているか調べてみましょう」3mくらい離れた場所から。

 魔法陣から仄かに暖かく穏やかな空気が伝わってくる。彼らが寝そべっている付近は快適な温度のようだ。

ダンティリオン「どうやら眠っているようですが、魔法陣の種類までは分かりませんね」

コーギーっぽい子コボルド『むにゃむにゃ。おなかいっぱい…』(妖魔語)

チワワっぽいコボルド『これは珍味… ぐーぐー…』(妖魔語)

角の生えた少女:『すやすや… やった… 私の勝ち… すやすや…』(ドレイク語)

ダンティリオン「寝言ですね。何を言っているか分かりませんが。ひょっとして休んでいるだけなのでは?」

セッカ「見張り役も立てずに全員寝てるのはおかしいわ」妖魔語分かる人いる?

ダンティリオン:分からないですー。

ギズ:分からないです。ダンさんと同じ場所まで行きます。

ダンティリオン「レディ、ギズくん。危険は無さそうですし、彼女たちを起こしてみてもよいですか?」

ギズ:異常感知一応振ります。2d+4> 12。

 異常があるのか、ギズには良く分からない。

ギズ『魔法陣が気になる。本当に寝てるだけなのか?』(リカント語)コボルドたちをジロジロ。

柴犬っぽいコボルド『ぐー… ぐー…』(妖魔語)

パグっぽいコボルド『もっとくれ~… ぐうぐう…』(妖魔語)

セッカ:魔方陣に見識判定してみようか。

 セッカは見識判定をしたが何も分からない。

ダンティリオン:ここから起こすかぁ。

セッカ:石とか投げる? 多分起きないだろうけど。

ギズ:呼びかけてみましょ。

ダンティリオン「近付き辛いのであれば、近付いてもらいましょうか」リュートを取り出しアーリーバード(目覚めの曲)を演奏します。演奏判定 2d+5 > 8

 普通の演奏。彼らに反応はない。

セッカ「ダン、何やってんの?」

ダンティリオン「ぐ、この感動を表現できない」

ギズ『今の状況のどこに感動する要素があるんだ?』(リカント語)

ダンティリオン:もう吶喊したい。

セッカ:ロープはもうないんだっけ?

GM:石橋エリアにくくりつけたままですね。

セッカ:ですよねえ。何かあったらロープで引き戻せるようにしたかったけど。

ダンティリオン:たぶん大丈夫やろ。(楽観)

セッカ:何かあったら持ってる槍で引き戻すわ。

ダンティリオン:もし眠ったら刺して起こしてね。(笑)

GM:近寄りますか?

ダンティリオン:近付きますねぇ。

ギズ:頑張れ!

 快適な温度だ。急激に眠くなる。ダンティリオンはその場に倒れ込みスヤスヤと眠り始めた。

ダンティリオン「スヤァ…」

ギズ『ちょ、おい寝るな!』(リカント語)

セッカ「やばそうね」

ダンティリオン「むにゃむにゃ…」



 === 夢の街 ===


 ダンティリオンは見知らぬ夜の街にいた。

 見たことのない形の建物、乗り物、照明。

 謎の文字で書かれた看板はキラキラと瞬き街を彩る。

 何もかも、文化風俗が違って見える。

 アルフレイム大陸には存在するはずのない光景が目の前に広がっていた。

 だが、何よりも確実な違和感をダンティリオンは感じる。

 人々の姿が見当たらないのだ。


ダンティリオン「なん… だと…」

ギズ:あらら、夢の世界へ行ってしまった。

ダンティリオン「ここはキングスフォール? いや、違う…」

 どこから現れたのか、ダンティリオンの前に青い服を着た小太りで青い服の少年が立っている。

 少年は屈託ない笑顔を浮かべて話しかけて来た。

小太りで青い服の少年:「やぁこんにちは。どこから来たの?」

ダンティリオン「どこからと言われると… 洞窟の中で急に意識を失ったようです」

小太りで青い服の少年:「洞窟? ひょっとしてサビーナの友達?」

ダンティリオン「サビーナ? 初めて聞くお名前ですね」

小太りで青い服の少年:「あなたも夢の世界から来たんだね。うちへおいでよ。歓迎するよ」

GM:少年に付いて行きますか?

ギズ:ここが夢か、あっちが夢か。

ダンティリオン「お言葉に甘えさせていただきましょう。色々とお聞きしたいこともありますし」付いて行きます。

 少年は歩き出した。

ダンティリオン:どこに連れて行かれるんだろう。


 閑静な住宅街だとダンティリオンは思う。

 家々の中の、しっかりとした作りの一軒家。

 建材は何か分からないが、夜の街に浮かび上がる清々しいほどの白壁に、竜の鱗のごとく整然とした小豆色の屋根。

 オシャレな家なのだろう。


小太りで青い服の少年:「ここが僕の家だよ。遠慮はいらないよ」

GM:少年について家に入りますか?

ダンティリオン:入ります。

小太りで青い服の少年:「そういえば、お兄さんの名前は? 僕はエグモント。よろしくね」

ダンティリオン「名乗っていませんでしたね。私はダンティリオン。よろしくお願いします」

ギズ:全員で眠ったら、この世界に全員で行ってたのかなぁ。


 室内もまた美しい建材で囲まれたシックなデザイン。

 木造部分と白壁とのコントラストが調和し、清潔な印象を来訪者に与える。

 床には暖色のカーペットが敷かれ、玄関先で靴を脱がされた足裏には柔らかで心地よい感触。

 いかにも落ち着ける空間だ。


赤い服の小柄な少女「あ! またお客さんだ! こんにちは! ねえねえ一緒に遊ぼう!」

角の生えた娘「また私が勝っちゃうよ♪ ん? 誰?」ダンティリオンに。

コーギーっぽい子コボルド「なんだお前?」ダンティリオンに。

ダンティリオン「私はダンティリオンと申します、美しいレディ」と言って跪く。「よろしければお名前を窺っても?」

ギズ:コボルドたちに目もくれず。流石です。

柴犬っぽいコボルド「…」ダンティリオンをじっと見ている。

セッカ:ダンにはたぶん犬にしか見えてない。

角の生えた娘「え~っと、夢の世界から、来た?」

ダンティリオン「ええ。私はあなたと同じ世界から来ました」

エグモント「この子がサビーナだよ。とってもゲームが強いんだ。僕も負けてばっかり」(笑)

ダンティリオン「サビーナさんですか。ときめくお名前です」

角の生えた娘「…連れ戻しに来たの?」

ダンティリオン「連れ戻しに?」

エグモント「難しい話は後にしようよ。お腹空いてない? はい、マックポテト」

ギズ:マック!

ダンティリオン:草。「ポテトは丸いものだと思っていましたが」

エグモント「ハンバーガーの方が良かった? それともピザ? あ、飲み物がいいかな?」

ダンティリオン「ハンバーガー? ピザ? それは食べ物なのですか?」

赤い服の小柄な少女「はい、スタバどーぞ」ドリンクを手渡してきた。

ダンティリオン「おや、ありがとう。可愛らしいレディ」

エグモント「なんでも好きなものを食べてよ」

ダンティリオン「少女から差し出されたものをノータイムで飲みます」

ギズ:もうちょっと警戒した方が…。

ダンティリオン:女の子からの勧めは断れないですねぇ。(震え声)

 なんと! とても美味い!

コーギーっぽい子コボルド「たこやき! たこやき!」

ギズ:帰って来れなくなったりしないか不安すぎる。

セッカ:犬にネギが入ってる食べものはヤバくないかな?

ギズ:犬に似ているだけの魔物だから大丈夫なんでしょうかね?

ダンティリオン:そもそも蛮族は元人間だからなあ。

コーギーっぽい子コボルド「んっま、んっま」尻尾を振りながらたこやきを頬張っている。

エグモント「ゆっくりしていってよ。ずっといてくれてもいいんだよ」

ダンティリオン「しかし、ここまでの街並み、この食べ物。変わった場所ですね」

エグモント「変わった? そうかなぁ」



 === 催眠の間 ===


パグっぽいコボルド『カップヌー… うまー…』(妖魔語)

コーギーっぽい子コボルド『たこやき… ぐうぐう…』(妖魔語)

サビーナ:『やだ… 帰らない… すやすや』(ドレイク語)

ギズ:ドレイク語分からぬ。

 ダンは口をモグモグさせ、ニッコリ微笑み、涎がたらり。

 美味しいものを食べているかのようだ。

セッカ「やばいんじゃないこれ?」

ギズ『何が起きているのか全然分からない。ダンを置いていくわけにもいかないし』(リカント語)

セッカ「私の槍で引っ張ってみる?」

ギズ『やってみようか』(リカント語)頷く。

ダンティリオン「すやすや」

セッカ:ダンの様子から睡眠効果範囲を推測することは分かりますか?

GM:分かりません。

ギズ『中心の炎みたいなのに近付くのがダメなのか? に˝~~、分からない!』

ギズ:ダンさんが寝て5分か10分経ったら、さすがに行ったほうがいいですかね。

ギズ:時間がどちらも同じ感じで進んでるかも分かりませんが。

GM:ダンティリオンが眠ってから10分以上経過しています。

ギズ:嗚呼…。



 === 夢の家 ===


ダンティリオン「エグモントくん。そろそろお話を聞いてもよろしいかな?」

エグモント「どうしたの? あらたまって」

サビーナ「私、帰らないからね」

ダンティリオン「プリティレディ、何故帰りたくないのですか?」

サビーナ「だってここは楽しいし。美味しいものも食べられるし。…意地悪な人、いないし」

ダンティリオン「なるほど。蛮族ならば私たちの社会で迫害もされるでしょう」

柴犬っぽいコボルド「…」

赤い服の小柄な少女「ねえねえ! 遊ぼう! 人生ゲーム! 次は私ユーチューバーに成るんだ!」

ダンティリオン「ユーチューバーとは?」

赤い服の小柄な少女「知らないの? おっくれってるー! ユーチューバーはねぇ、ヒカキンだよ!」ケラケラ。

エグモント「ははは、夢の世界にネットは無いんだよ。説明しても分からないと思うな。でもここで暮らしてればそのうち分かるよ」

ダンティリオン「申し訳ありません。元の場所に仲間を残して来ているので長居はできないのです」

エグモント「え? 帰るの?」

ダンティリオン「ええ、ここから帰る方法を教えていただけませんか?」

赤い服の小柄な少女「え~! 来たばっかじゃん!」

ダンティリオン「ガール、良い子にしていればいつでも会いに来ましょう」

赤い服の小柄な少女「ほんと? 約束だよ!」

ギズ:赤い少女や青い少年に言葉通じてるんですね。

GM:通じてますね。

柴犬っぽいコボルド「帰る方法は聞いている。帰りたければ教えよう」

ダンティリオン:おっ!

ギズ:おおっ!

柴犬っぽいコボルド「サビーナ、帰ろう。ここは俺たちのいるべき場所ではない」

コーギーっぽい子コボルド「え~! やだやだ! 帰らないよ!」

ダンティリオン「プリティレディ、やはり帰りたくないのですか?」

サビーナ「なにあんた。急に来て偉そうに指図して。何様?」

ダンティリオン「何様、と言われると… 通りすがりの詩人なのですが」

柴犬っぽいコボルド「おそらくオリヴァーに雇われたもう一組の冒険者なのだろう」

ダンティリオン「やはりあなたたちがもう一組の冒険者でしたか」

柴犬っぽいコボルド「そういうことだ。サビーナ、帰ろう」

サビーナ「……」

ダンティリオン「プリティレディ、態度が気に障ったのなら謝ります。私は一人でも多くの女性に前を向いて歩んでいただきたいのです」

柴犬っぽいコボルド「サビーナ、手柄を立てて母親を見返すのではなかったのか?」

サビーナ「ここにいれば、そんな必要ないもの」

エグモント「えーっと。お兄さん、何か聞きたかったみたいだけど?」ダンに。

ダンティリオン「そうでした。あなたたちが夢の世界と呼ぶあちらの世界と、この世界についてですね」

エグモント「あちらの世界…」

ダンティリオン「私にとってはあちらが現実の世界です。なのになぜあちらを夢の世界と呼ぶのか」

エグモント「ここが現実だよ? あなたの言ってることの方がおかしいように思えるなぁ。夢の世界は危険がいっぱいでしょ? ここなら誰もケンカしないよ?」

ダンティリオン「かもしれませんね」

柴犬っぽいコボルド「ダンティリオンと言ったな。帰り方なら既に聞いている。共に帰るか?」

チワワっぽいコボルド:「急いで帰らなくても…」

パグっぽいコボルド:「もっとゆっくりしていこうぜ。カップヌーうま~」

ギズ:シーフードかな?

ダンティリオン「あなた方はプリティレディを、いえ、サビーナ嬢を置いていくと?」

コーギーっぽい子コボルド「置いてなんか行かないよ! ずっと一緒だよ!」

チワワっぽいコボルド:「サビーナもここが気に入ってる。帰りたがっているのはリキだけだ。皆でここに留まらせてもらう」

柴犬っぽいコボルド「……」



 === 催眠の間 ===


ギズ:ダンさんが寝てから何分経ってますかね。

GM:30分経過です。

ギズ『このまま何もしないんじゃ状況は変わらない。おれも近付こう』(リカント語)

セッカ「私がぎりぎりまで近付いて引っ張ってみるわ。槍があるし」魔法陣に触れないギリギリの位置からダンを槍で引っ張ります。

GM:その位置からでは槍が届かない。槍が届く範囲まで近付きますか?

セッカ:うーむ、どないしょ。

ギズ:さっきのシーンが今現在まで行われてるなら説得も出来てないですよね。行った先の問題は小太りで青い服の少年が私たちを見つけてくれるかどうか。

セッカ「しょうがない。やばそうだけど踏み込むわ」行くだけ行ってみよう。

ギズ『あっ! セッカ… うっ…』(リカント語)止めようとして釣られて魔法陣を踏んじゃう。行った先でギズめっちゃ目立ちそう。



 === 夢の街 ===


ギズ「ここは…」キョロキョロ。

セッカ「どこ? ここ」

エグモント「やあこんにちは。 きみたちも夢の世界から来たの?」

ギズ「誰だあんた」獣化したままだけど言葉通じてます?

GM:何故か通じてます。ギズの言葉は他の者に共通語として聞こえている。

ギズ(獣の姿のままなのに、なんで言葉がそのまま通じるんだ?)

エグモント「僕はエグモント、よろしくね。立ち話もなんだしウチへおいでよ。ふふ、楽しいなぁ。今日はお客さんがいっぱい来る」

ギズ(…怪しい)

セッカ「…」警戒してます。

GM:エグモントに付いて行きますか?

セッカ:付いて行きます。

 少年はズンズン歩いていく。

エグモント「この家だよ。さ、入って入って」



 === 夢の家 ===


 玄関に入るなり、エグモントの姿が一瞬のうちに掻き消えた。

ギズ:一緒に入ったのではなく?

 と思ったら、パッと現れた。

ギズ:ひえ… 

セッカ:SUN値チェック入りそう。

ギズ:違和感持ちます。

エグモント「またお客さんだね。こんにちは! 僕はエグモント、よろしくね」

セッカ「…?」発言にも違和感。

赤い服の小柄な少女「こんにちは!」

 広々とした居間にはご馳走を食べ、ゲームに興じる蛮族たちと、ダンティリオン。

 和やかな雰囲気だ。

セッカ「ダン! 無事だったのね!」

ギズ「あっちで寝てた蛮族たちもいるな」

ダンティリオン「2人とも来てしまったのですか。ご心配をおかけしました」

ギズ「30分待って起きなかったから突入した」

赤い服の小柄な少女「またお客さんだ! ねぇねぇ! 遊ぼう!」

サビーナ「冒険者…」顔をしかめている。

柴犬っぽいコボルド「オリヴァーの言ったとおりだな。人間、エルフ、リカントか」

ギズ「ここは、あそこで寝た者が共通で見る夢の世界なのか?」

セッカ「みたいね」蛮族たちを見る。

エグモント「夢の世界? なんでそう思うのかなぁ。ここは現実だよ?」

ギズ:ムムム、怪しい。

ダンティリオン「こちらの人々にとって、我々の世界が夢だそうですよ」かくかくしかじかで、2人にこちらの状況説明。

ギズ:まるまるうまうまで了解。

柴犬っぽいコボルド「ここは長居するべきではない。俺たちそろそろ帰ろうと思うが、どうする?」

ダンティリオン「サビーナ嬢、一緒に戻りませんか?」

サビーナ「やだ」

ギズ「なんで帰りたくないんだ?」

柴犬っぽいコボルド「サビーナ。彼らの言う通り、ここは夢の世界なのだろう」

ギズ(やっぱりここは夢なんだな)

柴犬っぽいコボルド「俺たちは俺たちの居場所に戻ろう、名誉称号を得て母親を見返してやるのではなかったのか?」

ダンティリオン「サビーナさん、確かにあちらの世界には辛いことや苦しいことが多いかもしれません。ですが、ここにいてはあなたの目的も果たせないのでは?」

コーギーっぽい子コボルド「やだやだ~! もっとタコヤキ食べるんだい!」

エグモント「え? 帰るの? そんなこと言わないでゆっくりしていきなよ。はい、アイス」

ギズ「いらない」

エグモント「え? 美味しいよ? ケーキのほうが良かったかな?」

ギズ「何が入っているか分からないから食べない」

エグモント「何がって… お砂糖とか、生クリームとかかな」

赤い服の小柄な少女「ねぇねぇ! 遊ぼうよ! 人生ゲームする? オセロ? 黒ひげ危機一髪? 面白いよ!」

ダンティリオン「申し訳ありませんガール。我々は先を急ぎますので」

赤い服の小柄な少女「え~…」ガッカリしている。

柴犬っぽいコボルド「サビーナ、帰ろう」

ギズ「まだ俺たちは依頼を達成していない」

セッカ「そうね、やりたいことあるし、向こうで」

サビーナ「……」

 サビーナは、不承不承うなずいた。

ダンティリオン「サビーナ嬢。ご決断いただけたのですね」

柴犬っぽいコボルド「そちらにも帰り方を教えよう。説明するが、いいか?」

セッカ「頼むわ」

柴犬っぽいコボルド「良く聞くがいい。先ずは3回回る。そのあと、ワン! だ」

ダンティリオン「は?」

柴犬っぽいコボルド「それで目覚めるそうだ。皆で一斉にやろう」

ギズ「そんなアホみたいな方法で元に戻れるのか?」

セッカ「それジョークじゃないの?」

柴犬っぽいコボルド「冗談ではないらしい。用意はいいか?」

ダンティリオン「では、私の華麗なターンをお見せしましょう」

GM:3回回って、ワンをしますか?

セッカ「はあ…他に手段も無さそうだし」すごく恥ずかしそうに。

ギズ「まあやるだけやってみよう」

エグモント「また来てね」

ダンティリオン「ガール。また来た時はいっぱい遊びましょう」

赤い服の小柄な少女「うん! 約束だよ! 今度は絶対一緒にゲームしようね!」

柴犬っぽいコボルド「では皆、やるぞ。3回回って…」くるくるくる。

セッカ「…屈辱」くるくるくる。

ギズ:恥ずかしいとか無くやります。

ダンティリオン:スケートの要領で3回転ターンして。「ゥワン!」

ギズ:くるくるくる「わん」

セッカ「わ…わん」



 === 催眠の間 ===


セッカ「んん~…」

 PCの3人は同時に目を覚ます。

 柴犬っぽいコボルドも一緒だ。

 しかし、現実に戻って来たのはその4人だけ。

柴犬っぽいコボルド「サビーナ…ワンを言わないとは。兄弟たちまで… ともかくこの場は離れよう」

セッカ「この子たちは連れてかないの?」

柴犬っぽいコボルド「下手に移動させるのは危険だと思う。無事に起こす方法がないか探ってからだ」

セッカ「そうね」

ダンティリオン「この場に立ち往生するワケにもいきませんしね」

柴犬っぽいコボルド「この場所に外敵はいないようだ。寝かせておくだけなら安全だろう。俺は移動する。お前たちはどうする」

GM:この場に留まり続ける場合、生命力判定となります。

ギズ:魔法陣から離れます。

ダンティリオン:同じく離れます。

 ここから更に奥へ進めそうだ。

セッカ:とりあえず前に進みますか。

柴犬っぽいコボルド「そちらに別の道があるようだ。探ってみようと思うが、どうだろうか」

セッカ「そうね。名前を名乗っておきましょうか、私はセッカ」

ダンティリオン「先ほども名乗りましたが、ダンティリオンです」

ギズ『ギズだ』(リカント語)

柴犬っぽいコボルド「俺はリキだ。…リカント語は分からん」

ダンティリオン「彼はギズくんです」

リキ「セッカに、ギズと、ダンティリオンだな」


  リキの能力。

 種族:コボルド

 冒険者技能【ファイター3】【セージ1】

 練技【ビートルスキン】

 戦闘特技【かばうⅠ】【防具習熟金属鎧A】

 装備【ブージ】【スティールガード】


セッカ:おっ、なかなか。

リキ「提案がある。我々は競い合うグループ同士だが一時休戦としたい。サビーナと兄弟を連れ戻す方法を見つけるまで協力してくれんか?」

ダンティリオン「もちろんです。サビーナ嬢には明るい笑顔を見せていただきたいですから」

セッカ「分かったわ。ああいう子を見棄てるのは柄じゃないし」

ギズ『蛮族と協力なんか出来るのか?』(リカント語)

リキ「話が早くて助かる。リカント語は分からん」

セッカ「あの子、大切なんでしょ? 理由は知らないけど」

リキ「ボルグどもの餌にされるところをサビーナに救われた。その恩は返さねばならん。同族の兄弟も見棄てるわけにはいかん」

ギズ『…まあいいか。協力してやる』(リカント語)頷きます。

リキ「とはいえ、俺たちのリーダーであるサビーナがこの状態だ。共に動く以上そちらのリーダーに従おう。リーダーは誰だ?」

セッカ「そういえば決めてなかったわね。私でいい? ダンは女に弱いし。ギズ君はまだ若いし」

ダンティリオン「かまいませんよ、レディ」

ギズ『分かった』(リカント語)頷いて、獣化を解きます。

リキ「セッカがリーダーだな。早速だがここの奥を進むか、浸水している場所の奥を進むか、どちらにする? 浸水している場所の先には魔動機らしい姿を見かけた。戦いになるかも知れん」

セッカ「正直どちらでもって感じね」

ダンティリオン「元々の目的は魔道機ですが、この眠りのトラップと関連があるのかも知れませんね」

ギズ「魔動機が襲ってくるなら依頼のヤツとは違うのかな。探してるのは人から逃げるって話だし」

リキ「ここの奥は俺たちもまだ行っていない。気には成るな」

ギズ:先にここの奥を見た方がいいのかな。

セッカ:ふむ。

ダンティリオン:ですかねー。



 === サーバーの間 ===


 魔法陣の場所から奥に進むと、明らかに人工的な設えの薄暗い空間に出た。

 魔動機文明のものらしい金属の壁に四方を囲まれたその場所には、何かのエネルギーを伝達する配管類が複雑に入り組み、雑然と床を埋め尽くす。

 中央にはマギテック技能を持つセッカでも見たことのない長方体の設備が鎮座し、ところどころをチカチカと明滅させている。


ギズ「怪しい」

ダンティリオン「不思議な施設ですね」

セッカ「高度な魔動機文明の設備ね。動力はまだ活きてる。それ以外は分からないけど」

ギズ「そうなのか。変な機械だな」


 PCたちは夢の世界から意識を呼び起こす方法や遺跡内部の情報が手に入らないか調査したが、知識判定の目標値が12とやや高く、何も得られなかった。

 しかし、機器に設置されたスイッチを適当に押してみると、虚空に怪しい男の影が姿を現した。

ダンティリオン:お?

ギズ:おっと。

 高級なマントを羽織ったその姿はまるで幽霊のように半透明。

 背後の壁が透けて見えている。

怪しい男の影『ゼアレイドへようこそ』魔動機文明語。

ギズ「なんて言ってるんだ?」

セッカ「ゼアレイドへようこそ、だって」

GM:セッカが通訳して全員理解可能とします。

怪しい男の影『新製品…ザッ、御覧になりますか?』魔動機文明語。言葉にはノイズが混じり、やや聞き取り辛い。

セッカ『新製品って、なに?』魔動機文明語。

怪しい男の影『ルガー卿のご要望に…ザッ、自律型魔動…ザッ、開発しました。危惧さ…ザッ、倫理面の問題は解け…ザッ』魔動機文明語。

セッカ『自律型?』魔動機文明語。

怪しい男の影『ルガー卿の家紋にちな…ザッ、の花をモチーフ…ザッ。ウィステリア・ガーズ。気に入っていただ…ザッ…ザザッ…て、お待… ります』魔動機文明語。

セッカ「ウィステリア・ガーズ、ね…」タイトル回収きましたな。

怪しい男の影『異界人… 頭脳… ザッ… ザザザッ…』男の姿は歪み、ぼやけ、虚空に消えた。

ダンティリオン「消えましたね」

ギズ「なんだったんだ?」

セッカ「商品説明みたいね。自律型魔動機がどうとか。名称はウィステリア・ガーズらしいわ」

ギズ「自律型…」

ダンティリオン「我々の目的の魔動機のことでしょうか」

リキ「ふ~む。あの睡魔に襲われたトラップと何か関係があるのか。見当もつかんな」

セッカ「倫理面の問題がどうとか言ってたわね」

リキ「奇妙な部屋だな。もっと調べるか? それとも引き返すか? セッカが決めてくれ」

セッカ:どうするか…。

ギズ「ずっとここにいても仕方ないと思う」

ダンティリオン「水に浸かった部屋も気になりますし、戻るのも手ですね」


 相談の結果、引き返して浸水している部屋へ向かう。

 一度通った経路のため15分ほどで到着した。



 === 水に浸食されているエリア ===


リキ「この先は確認してある。大きめの石扉の前に4体の魔動機が待機していた」

セッカ「魔動機か」

リキ「種類の判別は俺たちには分からなかった。戦いになる可能性が高いだろう。かまわんか?」

ダンティリオン「もともと魔動機の捜索でしたからね。問題ありません」

ギズ「やるか」獣化します。

リキ「セッカ、号令を」

セッカ「分かったわ、行きましょう!」



 === 石扉の前 ===


 自然の岩肌と魔動機文明期に積み上げられた石壁が混在するエリア。

 奥には石扉が重々しい佇まいを見せている。

 その扉を護るように、小柄な魔動機が2体、中型魔動機が2体。

 遥か昔からの命令に従い続けているのだろうか。


リキ「あれだ」

セッカ「うわあ、めんどうそう」

リキ「4対4だ。負けんさ」

魔動機:「ピー… ジジジ…」動き始めた。戦闘態勢に移行している。

ダンティリオン「女性相手でないなら全力を出せますよ」


  魔物知識判定結果


 【ドルン】×2体

 魔物レベル2、弱点判明。

 魔動機文明時代に大量生産された小型の警護用魔動機。

 体長1mほどでずんぐりした子供のような姿を金属が覆っている。

 片腕に近接戦用のハンマー。

 脚は車輪で俊敏に動く。


 【グルガーン】×2体

 魔物レベル3、弱点不明。

 作業用魔動機の改良型。

 元が戦闘用ではないため動きは遅い。

 片腕に掘削用ドリルを装備し必殺の一撃を放つことがある。


 先制判定結果、PCの先行。


セッカ:よしよし。先制取ったし正体も分かった。

GM:続いて配置をお願いします。

ギズ:後方で。

ダンティリオン:後方で。

セッカ:後方で。


 戦闘開始!

 前衛はセッカの槍とセッカをかばいつつのリキの戦斧攻撃。

 後衛からギズの射撃とダンティリオンの呪歌のサポート。

 堅実に戦えば勝てる…と、思いきや、PCのダイスが奮わず大苦戦!

 魔動機たちの格闘攻撃が前衛のセッカとリキのHPをゴリゴリ削って行く!

セッカHP:12 → 1

ギズ:1残った!

セッカ:死ぬう!

ギズ:今日のGM絶好調ですねー。

GM:自分が怖いです…。

セッカ「まだまだあ!」額から血を流しながら。

女の声:「見てはおれんな」

 背後から何者かの声が。

ダンティリオン「!?」

 突如現れた角の生えた女が呪文の詠唱を開始した。

ダンティリオン「はっ! 美人の気配!」

 角の生えた女の魔法行使。

セッカ「ドレイク!?」

 角の生えた女のアース・ヒールでセッカは8点回復。

セッカHP : 1 → 9

ギズ『お前は誰だ!』と聞くけどリカント語!

角の生えた女「さっさと片付けろ」

ギズ『言われなくても分かってる!』(リカント語)

リキ「あんたは! …そうか。やはりな」

角の生えた女「前を見ろ、犬」

セッカ:サビーナママかな?

ダンティリオン「お美しい方だ。この戦いが終わったらお名前をお聞かせいただけますか?」

角の生えた女「エルフか。やはり軟弱だな」


 謎の女のサポートを受け、なんとか窮地を脱した4人は反撃開始!

 なんとか1体は倒したものの苦戦は続く!

セッカ:当ててるのリキ君だけなんじゃ…。

GM:リキは期待値なら命中します。

ギズ:こっちも期待値で当たるはずなんですよね。

セッカ:私もターゲットサイト込みなら。

ダンティリオン:なんでやろなぁ。

ギズ:不思議ですねー。


 戦闘は続く。

 ドルンは倒したが、粘り強い魔動機グルガーンに手を焼き続けるPCたち。

角の生えた女「なにをもたついているか人間! 戦士ならば砕け! 殺せ!」

セッカ「やってやる… やってやるわよ!」心にダメージ受けながら手負いに攻撃! MP枯渇でタゲサはなし! 命中! ダメージ11点!

ダンティリオン:ええやん!

ギズ:ナイス!

セッカ:ッシャオラア!

グルガーンB:ガラン! ズズン… 地面に崩れ落ちた。

リキ「やったな!」

角の生えた女「ふん…」


 結局、かかったラウンド数は9ラウンド。

ギズ『ハア…ハア…』お疲れ状態。長く苦しい戦いだった。90秒かかったのか。

リキ「かなり消耗したな。皆がいてくれたから勝てた。礼を言う」

ダンティリオン「いえ、こちらこそ。リキくんには随分と負担をかけてしまいましたね」

セッカ「ええ、リキがいなければ私も危なかったわ」

ギズ『こっちこそ助かった』(リカント語)

リキ「…リカント語は分からん」

角の生えた女「ザコ相手に随分てこずったな」

セッカ「ヴっ…」角の生えた女の発言にグサッときます。

ダンティリオン:想像以上に苦戦してしまった。

リキ「アチーナ。やはり来たのか」

角の生えた女「…」

ダンティリオン「アチーナさん? ときめくお名前ですね」

アチーナ「気安く呼ぶな。軟弱なエルフは好かん。人族ごときが」

ダンティリオン:アチーナ=暑いな? サビーナ=寒いな?

セッカ:孫が産まれたらチョードイーナ、かな?(笑)「なんで人族ごときを助けてくれたわけよ? 感謝はしてるけど」

リキ「アチーナ、彼らの協力が無ければサビーナを救えんと思う」

アチーナ「…」何も言わず立ち去って行った。

リキ「ブロークンと言えど我が子だ。心配なのだろう」

ダンティリオン「サビーナ嬢の母上ですか。どおりで美しいわけだ」

セッカ「ドレイクにもそういう感情があるのね」

リキ「あるさ。人族とは表現が違うがな」

セッカ「ええ、そうよね」


 皆が体力回復や装備の確認を始めている最中、部屋の隅に体高50センチほどの小型魔動機が2体、姿を現した。

 ずんぐりとした青い機体、ちょこまかと動く赤い機体。

 2体はカメラアイをチカチカさせながらPCたちの様子を伺っている。

セッカ:なんかカワイイのが出てきた。

赤い小型魔動機「ピピピ…」

セッカ「なにかしら、あれ」

ダンティリオン「もしや依頼内容の魔道機? ウィステリア・ガーズでしたか? 彼らのことかも」

ギズ「かもしれない」獣化解除。

 小型魔動機たちはPCたちの視線に気づき慌てて右往左往している。

ダンティリオン:可愛いなこいつら。

 彼らは小さな配管の中に姿を消した。

セッカ「あ!」

ダンティリオン「行ってしまいましたね」

 小型の魔動機が姿を消した配管の近くに、なにか落ちている。

ギズ「ん?」

ダンティリオン「おや、どうしました?」

ギズ「何か落ちてるな」近寄って拾います。

 謎のディスクを発見。

セッカ:入れたらスタンド目覚めそう。

リキ「何かの道具か?」

ギズ「…円盤? よく分からない」

セッカ:マギテックで見識いけるかな? 見識判定実行。

 判定失敗。

 なにも分からない。

セッカ:おぉふ。

ギズ:ヒラメチャレンジ。見識判定実行。

 なにも分からない。

セッカ:戦闘後も出目が悪いのかあ。

ダンティリオン:うーんこの。こちらも見識判定。1ゾロ。

 ダンティリオンは見てみようとしたが、手を滑らせて落っことした。

ダンティリオン :「あ!」

 カランカランと石畳の上を転がる。

 壊れてはいないようだ。

セッカ「ちょちょ! まあ、壊れてないわよ… 多分」

ダンティリオン「失礼。扱いは慎重にせねば」(汗)

リキ「わふん!」落ちたディスクに飛びついた。尻尾を振りながら持って帰って来て得意げだ。

ダンティリオン「リキくんは楽しそうですね」

リキ「むぅ。なぜか面白いな」

セッカ:口に咥えてます?

GM:手に持ってます。

セッカ:よかった。ディスクがでろでろになる事はなかったんや。

リキ「円盤を拾うついでに魔動機たちが消え去った穴を見たが、とても我々が通れる空間ではないな」

ダンティリオン「ふぅむ… 別の道を探すべきですかね」

セッカ「リキが猫なら行けそうだけどね」実際ミアキスなら行けそうではある。

リキ「猫扱いされるのは心外だ」

ギズ(馬鹿にされた気がしたが気のせいか)猫科リカント。

リキ「ともかく、扉は開かんのか?」

セッカ「試してみる?」

リキ「案外、普通に開くのかもしれんな」

セッカ「そうね。私が行くわ、リキにはさっき世話になったし」

リキ「セッカが開けてみるか? 心配いらん。もう岩は挟まっていない」(笑)

セッカ:開けます。

 開かない。鍵がかかっているようだ。

セッカ:ふむ。鍵開け出来そうです?

GM:調べますか?

セッカ:調べます。

 扉の中央付近に丸いくぼみを発見。

セッカ「…この窪みかしら?」

ギズ:ディスクがはまりそうですかね。

GM:大きさはジャストサイズに見えます。

ギズ「これ、はまりそうだな」

ダンティリオン「このディスクは鍵でしょうか」

ギズ「そうかもしれない」はめてみていいですか?

ダンティリオン:どぞ。

ギズ:では、はめてみます。

 カチャリ!

 はめ込むと同時に何かが作動したような音が響いた。

セッカ「開いたかしら」開けれます?

GM:セッカが開けますか?

ギズ:開けちゃいましょ。

 扉は押すと簡単に動く。

 ズズズズズズズ… 

 奥へ続く通路が現れた。

ギズ:おおー。

セッカ:開いた♡

リキ「進むか? 罠と思えなくもないが」

セッカ「罠だったらもっと別の場所に仕掛けるわ、私ならね」

リキ「かもしれんな」

ダンティリオン「他に道があるワケでもありませんし」

ギズ「ここにいても何も進展しない。進もう」



 === 魔動区画 ===


 遺跡の奥は今までの古代文明然とした趣とは明らかに違う、近代的な作りの通路。

 寂れてはいるものの、近未来的な内装に電気照明。

 ファンタジー世界に似つかわしくない内装にPCたちは戸惑いを隠せない。

 銀色のロボットや白髪の科学者が登場しても違和感のない雰囲気だ。


ダンティリオン「随分雰囲気の違う場所に出ましたね」

セッカ「魔動機文明でも一番イケイケの時の設備ね。まだ活きてるわ…」

 何かの実験プラントの一部ではないかとセッカには思えた。

 このまま進む通路と右側に鉄扉が一つある。

ギズ:色々とメカメカしいので目がちかちかしてそう。

セッカ「何か、実験とかしてた感じね」

ギズ「じっけん?」

 ギズとセッカ、ダンも気付いた。

 3体の魔動機がお目見え。

セッカ:また魔動機かぁ…。

ダンティリオン:キャノン積んでる魔動機ってレベル離れした強さ持ってるイメージガガガ。

リキ「やるか?」

ギズ:弓をいつでも撃てるように構えておきます。&獣化。

セッカ「そうね。あの大砲、後ろのギズにも届きそうだし」

ギズ『こっちにも届くのか、きついな』(リカント語)

ダンティリオン:相手はこっちに気が付いてる感じです?

GM:気付いているかは表情が無いので分からない。ゆっくりと動いています。

セッカ「どうする? さっきのより強そうだけど」

リキ「脇の扉に逃げ込む手もあると思うが」

ダンティリオン「そうですね。横の扉に入れば戦闘を回避できるかもしれませんね」

リキ「セッカの判断に従おう」

ギズ『ここは逃げよう』(リカント語)

セッカ「鉄扉に入りましょう」



 === 実験室 ===


 鉄扉を開けて逃げ込んだ先は、白壁に囲まれた広々としたホール。

 周辺は雑然とし、用途不明なものが散らかっている。

 壁際には半壊した精密機器が並び、部屋の中心には空っぽの筒状カプセルがぶら下がる。

 以前は何かが収められていたのだろうか…。


リキ「…怪しげな」

セッカ「真ん中の筒? ってあれ生き物が入ってた感じかなあ?」

ギズ『ここはどういう所なんだ?』(リカント語)

ダンティリオン「何かの実験施設のようですね」

ギズ『???』頭の中は?でいっぱい。


 部屋の奥に陳列棚を発見したPCたちは、並べられたサンプルを確認してみることに。

 そこには保存液に浸された得体の知れない生物の一部や、人族の脳髄らしきものもある。

 どうやらこのホールは人体実験をしていた場所のようだ。

ギズ『キモッ』(リカント語)

セッカ「なにこれ、蛮族? 魔神? 人? …あまりいい設備じゃなかったようね。うへえ。これ、脳みそ」

リキ「悪趣味だな」

ダンティリオン「ろくでもない実験をしていたようですね。これは生命への冒涜だ」


 不気味な陳列棚の前から退散したPCたちは改めてホールを見渡した。

 奥には扉らしきものがある。

 先へ進めるかもしれない。

セッカ「あの扉の先、行ってみる?」

ダンティリオン「進むに一票」

セッカ「引き返してさっきの魔動機と戦ってもいいけど」

ギズ『進んだ方がいいのかな』(リカント語)

セッカ「危険は出来るだけ回避しましょう。みんなで扉の奥を進みましょうか」



 === 動力室 ===


 足を踏み入れた先には遺跡の動力源である魔動炉が、配管、配線類に囲われるように床から天井まで10m以上の高さまで貫きそびえる。

 待ち受けていたのは魔動機が6体。

 ひょっこり現れた2体の小型魔動機が大型の魔動機に収納された。

 その小型魔動機たちは先ほどPCたちが目撃したもので間違いないだろう。

 更に、正体不明の仮面の男が1人。

 男の足元には…。


セッカ「わあぉ」

ギズ「強そう…」

仮面の男『シンニュウシャ ハッケン コ・ロ・セ』魔動機文明語。

セッカ「私たちに言ってる? んー、強そう」

ギズ『数が多い。ここが一番大事なところなのか?』(リカント語)

 仮面の男の足元には、見覚えのある人物が横たわっている。

ダンティリオン「彼女がなぜここに!」

ギズ『カッサルか!?』(リカント語)魔動機がカッサルに危害を加えている様子はありますか?

GM:彼女は服をビリビリに引き裂かれ半裸状態。気を失っているようです。

セッカ:おぉう。

ギズ:あー…。

ダンティリオン:貴様ら! CEROが上がってしまうではないか! エリア内にダッシュ!

セッカ「あ! ダンティ!」

ダンティリオン「私のレディを返していただきましょう。無粋な機械どもよ」

セッカ「ええい! 仕方ない!」

ギズ『あいつは泥棒だけど… 放っとけないか』(リカント語)弓構え。

セッカ:戦います。ダンティ行っちゃったし。

ギズ:戦います!

ダンティリオン:すまねぇ… すまねぇ… 


  魔物知識判定結果


 【ザーレイ】×1体

 魔物レベル3、弱点判明

 やや大型の魔動機。人型に近いフォルムだが背中にはエネルギー光弾を射出する砲を持つ。

 魔法耐性のある装甲を持つ。


 【カッティングトーチ】×2体

 魔物レベル3、弱点判明

 掘削用魔動機の一種。左右マニュピレーターに加熱式の刃を装備する。

 部位を左右に持ち、1体で実質2体分の働きをする。

 近接戦闘時は要注意。


 【青いカッティングトーチ】×1体

(GMオリジナルエネミー)魔物レベル3、弱点判明

 カッティングトーチを強化した機体。

 耐久力に優れている。


 【赤い機体/プロトフェルディーベ】×1体

(GMオリジナルエネミー)魔物レベル3、弱点判明

 魔道文明期に製造された中距離支援用試作機。

 片腕にマギテックガンを装備する中型の機体。

 ターゲッティングの能力を有し、ザーレイと同様の魔法耐性装甲を持つ。


 【仮面の男】×1体

 正体不明。


セッカ:2部位が3体。全部魔物レベル3かぁ。カッサル助けて逃げるには全部倒さないと救出は無理な感じかな。

GM:戦って勝利するしかない状況です。

ダンティリオン:マ!?

ギズ:全滅してしまうぅ。

GM:今なら撤退も可能です。

セッカ:どうする? カッサルは服の下も斬られると思うけど。

ギズ:撤退した方が絶対にいいですが、PC的には… どうでしょうダンさん。

ダンティリオン:PCとしては逃げたくないが、状況的には撤退も視野。

ギズ:私たちが近付いたから動き出したのなら、離れれば止まってカッサルに危害を加えないということを信じたいですが。

ダンティリオン:うーむ。セッカの回避っていくつでしたっけ。

セッカ:2d+4です。

ギズ:期待値で避けれたり避けれなかったりかぁ。

ダンティリオン:キツイなぁ。逃げるしかないか。

セッカ:うーむ。

ダンティリオン:かなり手強い。数が少なければ迷わず特攻なんですが。

セッカ「ちっ! 逃げるわよ! 私達じゃきつい!」

ダンティリオン「そんな! 彼女を置いて逃げるなど!」引きずられ~。

ギズ『ここで全滅するのはもっとダメだ』(リカント語)

GM:元来た方向に逃げますか?

セッカ「停止装置があることにかけて違う方向に行きます」

ダンティリオン「アステリア様。彼女を、カッサル嬢をお守り下さい」祈ります。



 === 魔道区画通路B ===


 分が悪いと判断して撤退したPCたち。

 元来た通路とは逆の経路をたどり一時避難した。

 そこも今までの通路とは変わらない、清潔だが平板な無機質の空間。


リキ「勝てんか」

セッカ「そうね。おたくの子たち全員が起きてくれれば何とかって感じだけど。あの仮面の人、彼が未知数なのよね」

リキ「横たわっていた娘がカッサルか。オリヴァーから話は聞いている」

ダンティリオン「プリティレディを置いてきてしまうなんて…」

リキ「アチーナを探して協力を仰ぐか? 素直に協力するかどうか分からんが。まだ遺跡内、サビーナの近くにいると思う」

ダンティリオン「それもアリですが、直ぐに会えるかどうか… それともこの辺で魔動機に対抗する方法を探しましょうか」

ギズ『時間はかけられないよな』(リカント語)

セッカ「んー、どうしようかしら」

リキ「扉の前で見かけた小型魔動機は斥候といったところか。大型のものの中に収納されていたな」

 思案するPCたちの前に男が1人、唐突に姿を現した。

インテリ風の眼鏡の男「ん? 君たちは?」

セッカ「!?」

ギズ『誰だ!』

 20代前半くらいに見える人間の男。

 学者然とした雰囲気の眼鏡をかけ、身軽に動ける軽装姿。

 目立った武装はしていない。

 物腰は柔らかいが、冒険者だろうか。

インテリ風の男「君たちこそ誰かな? 冒険者?」

ダンティリオン「僕たちは旅の冒険者です」

インテリ風の男「それは奇遇だね。僕も旅の冒険者だよ。キミたちも魔動機確保の依頼を受けたのかな?」

セッカ「そんなところよ」

ギズ『ここに何しに来たんだ?』(リカント語)

インテリ風の男「悪いけどリカント語の勉強はしてないんだ」

ダンティリオン「では僕が訳しましょう」バードLVを上昇させてリカント語習得済み。

インテリ風の男「訳さなくてはいけないくらい重要な発言なのかな」

ダンティリオン「かくかくしかじか」以降の発言は同時通訳します。

GM:同時通訳了解です。以後、ギズのセリフは咄嗟の言葉以外全て通訳出来ることとしますね。正直に全て話しますか?

セッカ:味方に成ってもらいたいから全て話します。かくかくしかじか。

インテリ風の男「なるほど。じゃあ僕と君たちとは同じ立場だね。オリヴァーさんから依頼を受けた同業者。今はライバルなのかな?」(笑)

ギズ『お前は1人でここに来たのか?』(リカント語)

インテリ風の男「今はね」

セッカ「1人でここまで来たの? ちょっと信じられない。奥にやばい魔動機の群れがいるんだけど」

インテリ風の男「魔動機に対応する手段はあるよ。数は?」

セッカ「5体。あとよく分かんないのが1人」

インテリ風の男「よく分かんないのが? 興味深いな」

セッカ「あなたは魔動機をどうにか出来るの?」

インテリ風の男「うん、どうにか出来たね」

ダンティリオン「であるなら、協力をいただきたいですね」

インテリ風の男「君たちは研究施設に足を運んだかな?」

セッカ「あの脳みそとか置いてあったとこ?」

インテリ風の男「うん、そう」

ダンティリオン「そういえばまだ詳しい調査はしていませんでしたね」

インテリ風の男「僕はそこを調べたんだ。そしたら魔動機の緊急停止装置を見つけてね。ここまでの道中で3体、それを使って止めたよ」

セッカ「そんな便利なものが…」

インテリ風の男「でも使用回数に限りがあるね。魔晶石が仕込んであるみたいだよ。もう1体停止させるのが限度だと思う」

セッカ「そっか…」

インテリ風の男「その緊急停止装置は僕がまだ持ってる」

ダンティリオン「今、1人の愛らしき少女がが危機に瀕している。一刻の猶予もありません。救いに戻りましょう」

インテリ風の男「ここの資料はもう調べたのかな? たぶんその子は脳髄を引っ張り出されるよ。魔動機に埋め込むためにね」

セッカ「そんなことやってるのね!」

ギズ『うっ…』気持ち悪くなった。

インテリ風の男「まだ間に合うなら助けに行くかい?」

ダンティリオン「無論」

セッカ「急いで助けに行きましょう!」

ギズ『行こう』(リカント語)

ダンティリオン:イクゾー デッデッデデデデ!

ギズ:カーン!

セッカ:イクゾー!



 === 動力室 ===


仮面の男『シンニュウシャ ハッケン コ・ロ・セ』魔動機文明語。

 魔動機たちが一斉に動き出した。

インテリ風の男「あれが…」

ギズ:仮面の男が指示出してる感じか。

ダンティリオン「邪魔を、するなッ!」

インテリ風の男「あの赤いのと青いの、あれも破壊するつもりかい?」

セッカ「どういうこと?」

インテリ風の男「あの中には人間の脳が収まってると思うよ」

ギズ『……』

ダンティリオン「でしょうね」

インテリ風の男「48人の子供を実験台にしたうちの貴重な成功例。そういう資料があった」

セッカ「魔動機文明… 結構腐ってるわね」

ギズ『聞いてるだけで気分が悪くなるな』(リカント語)

インテリ風の男「1体は強制停止出来る。2体のうちのどちらかを止めるべきかと思うよ」

セッカ:厄介度は青いカッティングトーチが高いなぁ。青を停止でいいかな。2部位が3体はきっつい。

ダンティリオン:メタ的には赤い方、プロトフェルディーベは女の子じゃないかと思っている私がいる。口説いたら戦闘から離脱させられないかな。

セッカ:どうする? 私はどっちでもいいけど。

ギズ:青ですかね。

ダンティリオン:青やろなぁ。

セッカ「青い方を止めて」

インテリ風の男「分かった」

 男は懐から黒く光る装置を取り出し青いカッティングトーチに向けてスイッチを押す。

青いカッティングトーチ「プシュウー」動きが止まった。

ギズ:戦闘だぁ!

セッカ:イクゾー!

ダンティリオン:覚えたてのガゼルフット使って前線に移動! 前衛への狙いを分散させます。

リキ:ビートルスキン発動!

 先制判定の結果PCの先行。

GM:後攻の敵を配置します。カッティングトーチ2体が前衛。ザーレイと赤い機体プロトフェルディーベ、そして仮面の男は後衛。

セッカ:移動して来たカッティングトーチAの右半身に必殺攻撃!

GM:命中!

ギズ:カッコイイ!


 前回の戦闘が嘘だったかのような、目を見張るセッカの活躍。

 リキのかばう技能に加え、ギズとダンティリオンのサポート、インテリ風の男がコンジャラー魔法で回復援護。

 ジワジワと敵を追い詰めていく。

 仮面の男は「コロセ」を連呼するのみで戦闘には参加してこない。


ダンティリオン「皆さんに集中の詩をお届けしましょう」武器命中率上昇のモラルを演奏! 相手は機械だからこっちにしか効果がない!

セッカ:まじ、掛け得じゃん。

 魔動機には影響なし。

 のはずが、赤い機体の動きが良くなった。

ダンティリオン「まさか…」

セッカ:あー、脳みそ入ってるからか。

ギズ:色々と察してしまう。

ダンティリオン:実質人間かぁ。


 戦闘継続。

 カッティングトーチAを片付け、残る敵戦力は「半壊のカッティングトーチB」「ザーレイ」「プロトフェルディーベ」そして「仮面の男」


セッカ「決めてやる!」カッティングトーチBを攻撃! 命中! 4回転! ダメージ41点!

ダンティリオン:ファー!!

ギズ:うわああああっ!

GM:初めて見た(笑)。

 ゴバーンッ!

 カッティングトーチBの残り半分は動力部を貫かれ、一撃で活動停止した。

ギズ:マジですか!

ダンティリオン:やっば。

リキ「なんと!」びっくりしている。

ダンティリオン「レ、レディ? 鬼気迫る一撃ですね」

セッカ「今のは人生で一度あるか無いかの一撃だわ」

ギズ『当たり所が良すぎだろ』(リカント語)

ダンティリオン「では壮大な音楽を奏でましょう」終律、春の強風を使いザーレイに攻撃。「私の終律は強化されている!」3回転 > 30点ダメージ!

ギズ『凄い』(リカント語)わぁお! また回る!

ザーレイ:「ズズン…」装填中だった光弾が弾け飛び、関節から煙を吹きながら動きを止めた。

セッカ:おおっ!

ダンティリオン「いかがでしたか? 私の音楽の味は」

リキ「たかが歌とは言えんな」

GM:敵の行動です。プロトフェルディーベがセッカに射撃攻撃。かばっているリキに自動命中。2回転! 25点ダメージ!

ギズ:ええ!?

セッカ:ちょ!

ダンティリオン:敵も味方も回り過ぎィ!

リキ「キャン!」リキは倒れた!HP:-6

セッカ「リキ!」

ダンティリオン「リキくん!」

インテリ風の男「まずいですね」

ギズ:私以外回転してる。今日のセッションヤバいなぁ…。

セッカ:ソドワは敵の魔法は回ると考えないとなあ。

ダンティリオン:ほんそれ。

ギズ:リキくんの生死判定は?

GM:生死判定はアウェイクンしないなら戦闘後とします。ラウンド4 ファイッ!

仮面の男『コ・ロ・セ』(魔動機文明語)

セッカ:ええいっ! 仮面マンに必殺攻撃!

ダンティリオン:待って待って、呪歌のモラル使う。

セッカ:OK。

ダンティリオン:演奏判定… 1ゾロ。

ギズ:わぁあ。出目があらぶってらっしゃる!

 演奏失敗。

 経験点50点ゲット。

 ダンは魔動機から吹き上がった煙を吸い込んでむせてしまった。

ダンティリオン「ピョ…ゴホッ!」

ギズ『落ち着け!』(リカント語)

ダンティリオン「ゴホッ、ゴホ…お見苦しいところをお見せしました」

セッカ:改めて仮面の男に必殺攻撃! 命中! ダメージ14点!

仮面の男『…ロ・セ』

 槍で抉られたボディからは幾つもの機械部品が飛び出し、爆ぜる。

 ぶすんぷすん、ばたり。

 男は冷たい床に転がった。

セッカ「あれ、よわ?」

ギズ:思ったより。

ダンティリオン:思ったよりよえーい。

 仮面の男が倒れたと同時に、残っていたプロトフェルディーベは動きを止めた。

 PCの勝利。

インテリ風の男「どうやら勝ちかな? 赤いのは動きを止めたね」

セッカ「リキ! しっかりしなさい!」駆け寄ります。

 リキの生死判定。

 6ゾロ成功。

 がっつり生きている。

ダンティリオン:絶対に生きるという意思を感じる。

セッカ「生きてはいるわね」

ギズ:リキに応急手当します。

リキHP : -6 → 1。リキは目を覚ました。

ギズ『よし、これでいいだろう』(リカント語)

リキ「む… 俺は… ああ、勝てたのか」

セッカ「良かった」

ギズ『死ななくて良かったな』(リカント語)獣化を解きます。

リキ「不覚を取ったが、皆は無事なようだな」

ダンティリオン「リキくんは任せました。私はカッサル嬢を…」

 気絶したままのカッサルは裸で寝転がされ、後頭部の頭髪が剃られ、剥き出しの頭皮にマーカーで線が引かれている。

セッカ:Oh…。

ダンティリオン「乙女の柔肌に… 酷いことをする」そっと上着をかけておきます。

ギズ「ひどすぎる」冒険者セットから毛布を掛けます。(あそこで撤退しなければ…)

セッカ:赤い機体(プロトフェルディーベ)に判定出来ますか?

GM:なんの判定をしますか? 戦闘状態ではないので大抵のことは可能です。

セッカ:何かスイッチや記号がないか、脳みそ取り出したり、リブートするようなの。

 セッカは機体を調べた。

 正面ボディに魔動機文明語で『ウィステリア・ガーズ』と、ロゴが打たれている。

セッカ「ウィステリア・ガーズ… 倫理的な問題とか言ってたの、このことか」

 引き続きスイッチや記号を探すセッカ。

 やがてイジェクトレバーを判別出来た。

セッカ:イジェクトレバーをガシャンしてみます。

 セッカが操作すると、「パシュン!」赤い小型魔動機が、機体から転がり出て来た。

セッカ:なんか出てきた。

赤い小型魔動機『ピ… ピピピ…』二本足でヨチヨチ歩き、円らなカメラアイを明滅させている。

ギズ:可愛い。

セッカ:でも多分、脳みそ入ってるんだよなぁこれ。『大丈夫?』魔動機文明語で話しかけてみる。

赤い小型魔動機『ピピピ…』

セッカ『私の言ってること、分かる?』魔動機文明語。

 赤い小型魔動機はクルクルとその場で回った。

ギズ :(ちょっと可愛いかも…)

セッカ:青い方もイジェクトレバー引きます。

青い小型魔動機:パシュン! 同様に転がり出て来た。『ピー… ジジ…』

セッカ『そっちも言ってること分かるかしら? 私達に敵意はないわ。安心して』魔動機文明語。

青い小型魔動機『ジジジ…』その場で頭部をクルンクルン回している。

セッカ「依頼的にどうなのかしら。出来ればちゃんとした体を用意してあげたいけど」

インテリ風の男「依頼内容はその小型魔動機を持ち帰り、依頼主に引き渡す。だね」

セッカ「だってこれ、人間の脳みそ入ってるんでしょ?」

インテリ風の男「そうだろうね」

ギズ「くそったれだな…」

インテリ風の男「依頼達成は難しいのかな? 君たちが主導で戦ったし、僕は彼らの処遇に口出ししないよ」

ダンティリオン「判断はレディにお任せしますよ」

セッカ「依頼は… 諦めたいかな。先生なら事情を話せば分かってくれると思う」『ねえあなたたち』魔動機文明語。小型魔動機たちに。

青い小型魔動機『…』

セッカ『あなたたち、元は人間なのよね?』魔動機文明語。

青い小型魔動機『ピピピ…』

インテリ風の男「会話の機能は無さそうだね。必要ないってことなのかな」

セッカ「悪趣味ね… じゃあ、イエスなら左に、ノーなら右に回って。言ってること分かる?』魔動機文明語。

青い小型魔動機『ピピ…』左に回った。

セッカ『人間の姿に戻りたい? ルーンフォークの体とかに成るかもだけど』

青い小型魔動機『…』どちらにも回らない。首をかしげている。

セッカ「もしかしてどこかに元の体がある?」

インテリ風の男「それはたぶん無いね。彼らが機体に移植されてから300年以上経ってるし、体を保存する施設は機能してないよ」

セッカ「…」

インテリ風の男「君たちも見たかな? 広めの部屋にある透明のカプセル。あれが体を保存する施設だったようだよ」

セッカ「あー、あの部屋?」脳みそとかあった部屋か。

インテリ風の男「元の体に戻すことは想定していないだろうね。この遺跡は自己判断可能な戦闘用魔動機の製造拠点だったようだよ」

セッカ『…あなたたちはどうする? 私達と一緒に来る?』魔動機文明語。

青い小型魔動機『…』どちらにも回らない。首をかしげている。

セッカ「んー、どっちにも回らないかあ」

ギズ「どういうことだ?」

インテリ風の男「彼らにとっての現実は、あの仮想空間ってコトじゃないのかな? だから判断に困ってる、そんな気がするよ」

セッカ「あーなるほど」

ダンティリオン「ということは、これはあそこにいた2人なのですね」

インテリ風の男「たぶんね。キミたちも仮想空間の存在を知ってるようだね」

ギズ「あの夢の世界のことか」

インテリ風の男「彼らの精神状態を保つために用意された安息の場だろうね」

セッカ『いい? こっちが現実よ。あなたたちも人間なら自分の足で歩きなさい。こっちにも良いことや悪いことはあるけど、嘘の世界で腐り落ちるよりはマシなはずよ』魔動機文明語。

青い小型魔動機『…』回らない。首をかしげている。


 PCたちは設備を調べた。

 ダンティリオンが施設全体の制御装置らしきものを見つける。

インテリ風の男「ふむ… これを操作すれば仮想空間を停止させることが出来そうだね。空間内の人物は強制的に覚醒すると思うよ」

セッカ「やってみよう。ごめんなさい、私のエゴだけど…」魔動機たちに。

青い小型魔動機『…』小首をかしげている。

ギズ「強制的に起こしたら、そこにいる連中に負担は無いか?」

インテリ風の男「それは分からないな。僕も初めてやることだし。死ぬことはないと思うけどね」

 男はキーボードをカチャカチャと操作した。

ダンティリオン「たとえ荒療治でも、あの世界に囚われている彼らには必要なのかもしれません」

インテリ風の男「いいかな?」エンターキーに指をかけている。

セッカ「お願い。どっちにしろサビーナたちは起こしたいし」

インテリ風の男「では…」エンターキーを押した。「仮想空間は停止したよ。消去はしてないけどね」

セッカ「…そう」

リキ「全員、あの夢から覚めたんだな? 俺はサビーナたちの元へ戻る。世話に成ったな」

セッカ「分かった。気を付けてね」

ダンティリオン「道中お気をつけ下さい、リキくん」

ギズ「いい戦いぶりだったぞ」

 リキはうなずき、急ぎ足で立ち去った。

ギズ:ひと悶着ありそうだなあ。

ダンティリオン:リキがなだめてくれると信じましょう。

セッカ:魔動機たちの様子を見ます。

青い小型魔動機『…』じっとして動かない。首をかしげている。

セッカ『大丈夫?』魔動機文明語。

赤い小型魔動機:どちらにも回らない。首をかしげている。

ギズ「様子が変わらないな」

セッカ「とりあえず今は戻りましょ。サビーナたちの様子も気になるし」2体を抱えます。

ダンティリオン「そうですね」カッサルをお姫様抱っこします。

ギズ:毛布と上着がかかったカッサルさん。

ダンティリオン:頭にはターバンも巻いておこう。

ギズ「リキたちの様子も見るか、暴れてなきゃいいが… ん?」

 遺跡からの撤収を考え始めたPCたちの前に1匹の山羊が現れた。

 いかにも場違いな存在に面食らうPCたち。

山羊「めぇ~」

セッカ「山羊?」

ギズ:山羊だ!

ダンティリオン「山羊が何故ここに??」

インテリ風の男「気にしなくていいよ。こいつは僕の連れ」

ギズ「連れに山羊?」

山羊「めぇええ~」

インテリ風の男「近寄らない方がいいよ。噛むからね」

ギズ「か、噛むのか?」

インテリ風の男「うん。思いっきりね」(笑)

ギズ:こわ…。

セッカ「サビーナたちの様子を見に行きましょうか」

インテリ風の男「僕はしばらくここにいるよ。色々と調べたいし。ここでお別れかな」

セッカ「そう、じゃあまた… 私はセッカ。手伝ってくれてありがとう」

ダンティリオン「ダンティリオンです。ご協力感謝しますよ」

ギズ「ギズだ。礼は言っとく。ありがとな」

インテリ風の男「僕はカイネル。またどこかで会うこともあるかも知れないね」

ダンティリオン「お元気で」

カイネル「キミたちも無事の帰還を。オリヴァー卿によろしく」

ギズ「じゃーな」手をひらひら。




 PCたちが立ち去った後。


カイネル「さて、有益な情報が得られればいいけど… ランドールの戦争に利用されたくないしね」

山羊『所詮は人間の浅知恵の集合。機械など、くだらん』(魔神語)

カイネル「調べてみなきゃ分からないさ。お前は黙ってろ」

山羊『魔動機技術ではあの娘は人に戻らん。さっさと契約を済ませればいいものを。愚か者め』(魔神語)

カイネル「黙っていろと言った」



 === 催眠の間 ===


 サビーナたちが眠っていた場所に戻った。

 魔法陣から漏れ出ていた光は消え、誰もいない。

ギズ:やっぱりかぁ。

セッカ「先に帰ったのかしら」

ダンティリオン「行ってしまいましたかね」

ギズ「だといいな。無事ってことだから」

 部屋の中央に羊皮紙が残されていた。

 共通語でなにやら書かれている。

セッカ:手に取って読んでみます。


 ~世話になった。礼を言う。俺たちは先に戻る。報酬は君らで受け取ってくれ。Riki~


セッカ「無事だったみたいね」

ギズ「ならいいか」

ダンティリオン:カッサルはどんな様子ですか?

GM:ダンの腕の中でモゾモゾ動いている。そろそろ目が覚めるようです。

カッサル「んん… パ、パ…」

セッカ「あら、起きたのね」

カッサル「…ん!? なっ、なんだ!?」

ダンティリオン「可愛らしい寝言でした」

カッサル「!!」

ダンティリオン「おはようございます。カッサル嬢」

カッサル「なんだお前! 放せ! 降ろせよ! バカ! ヘンタイ!」暴れだした。

ダンティリオン「だめですよ。まだ怪我をしているかもしれませんし」意地でも降ろしません。

セッカ「あなたは危うく脳みそを取られるところだったのよ?」

カッサル「ケガなんかしてねーよ! 放せばかやろー!」自身の半裸状態に気付き、顔を真っ赤にしている。

ダンティリオン「いえいえ、本当に危ないところだったのですから」

ギズ「ほんとに大丈夫か?」

 カッサルはダンの腕から逃れようと暴れる。

ダンティリオン:放しませんねぇ。

 筋力判定の結果、ダンはがっちりホールド。

ギズ:強い。

カッサル:ジタバタ!

ダンティリオン「こらこら、無理をしてはいけません」

カッサル「…」しばらく暴れていたが、観念した様子で今はダンの腕の中。

ダンティリオン:やり遂げたぜ。

GM:では、街に帰還しますね。



 === 冒険者の店・ファットバット ===


 PCたちは無事に帰還。

 店の1階で報告を待っていた魔道騎士オリヴァーの元へ。

セッカ「先生! 戻りました!」

魔道騎士オリヴァー「ご苦労だったな。全員無事だとリキから聞いた。収穫は… それか?」

セッカ「ええ。でもこれ、人間よ?」魔動機たちをテーブルの上に置く。

魔道騎士オリヴァー「人間? どこからどう見ても魔動機だが?」

セッカ「人間の脳みそが入ってるらしいわ」

魔道騎士オリヴァー「…詳しく聞かせてくれ」

セッカ:かくかくしかじか。全部正直に話します。

魔道騎士オリヴァー「……」

 オリヴァーは考え込んでいる。

 かなり悩んでいるようだ。

魔道騎士オリヴァー「子供か… セッカ」

セッカ「はい」

魔道騎士オリヴァー「俺がアド伯爵から与えられた任務で考えれば、その魔動機は回収して精査する必要がある」

セッカ「バラすってこと?」

魔道騎士オリヴァー「そうなる」

 険しい表情を見せるオリヴァー。

 彼の次の言葉をを固唾を飲んで待つPCたち。

 そこへ、ローブを纏った中年の男が入店して来た。

魔術師の男「オリヴァー卿、手駒が戻ったそうだな。例の魔動機とはそれか?」

 オリヴァーの同行者であるその男は、ランドール地方特有の質実剛健とした服装に堅めの訛り。

 真の依頼主である「アガヌボン・アド伯爵の臣下」で、あろうことは同郷のセッカには容易に察しがつく。

 オリヴァーはしばらく沈黙の後、徐に口を開いた。

魔道騎士オリヴァー「その魔動機は… 俺が、部屋の片付けをさせるために買って来させた市販品だ」

魔術師の男「では遺跡の収穫は?」

魔道騎士オリヴァー「無かった。まったく不甲斐ない連中だ。報酬は払えんな。この役立たずどもめ! さっさと二階の部屋にでも引っ込んでいろ!」

ギズ「なんだその言いぐさ!」

ダンティリオン「まぁまぁ」キズをなだめます。

魔道騎士オリヴァー「早く行け」

セッカ「…はい。失礼します」

魔術師の男「やれやれ。はるばる訪ねて来た甲斐がない」

セッカ「この魔動機はどうします?」

魔道騎士オリヴァー「後で取りに行く。2階に運べ。家内への土産だ。丁重にな」

セッカ「分かったわ」抱えていく。

GM:2階の部屋に移動しますか?

ダンティリオン:移動で。

ギズ:一緒に2階へ行きます。



 === 冒険者ギルド、2階客室 ===


ダンティリオン「よい師匠を持たれましたね、レディ」

セッカ「当り前よ。私の師匠の師匠よ」

カッサル「それ渡せば金に成るんだろ? バッカじゃねーの?」

セッカ「そうね… でも、人として超えたくない一線はあるものよ」

 しばらくして、オリヴァーが部屋を訪れた。

セッカ「先生、この子たちのために…」

魔道騎士オリヴァー「俺の息子は今年で10歳になる」

セッカ「…」

魔道騎士オリヴァー「気にするな。俺の勝手だ。さっきの男、マグダルが主導で遺跡の調査が始まるだろう。その子たちが帰る場所は無くなる」

セッカ「そうなの…」

魔道騎士オリヴァー「これからどうするつもりだ」

セッカ「どうしよう…」(滝汗)

魔道騎士オリヴァー「後先考えずか。変わらんな、このじゃじゃ馬め」(笑)

ダンティリオン「我々で面倒を見るのはいかがですか? ここまでくれば子どもの1人や2人、変わりませんよ」カッサルの頭に手を置く。

カッサル「さ、触んなよ…」頭をナデナデされ、うつむいてじっとしている。

ダンティリオン:お?

魔道騎士オリヴァー「定期的なメンテナンスが必要になることは分かるな? 金もかかるぞ」

ギズ「俺は魔動機の扱いは分からないぞ。メンテナンスって、弓のしかやったことない」

セッカ「私なら少しは出来るかもしれないけど…」

魔道騎士オリヴァー「情に流された後は責任を負うことになる。腹をくくるんだな」

セッカ「分かってるわよ。とにかく、この子たちを人の体に戻したい」

魔道騎士オリヴァー「持ってけ」小袋を投げて寄越した。

GM:キャッチ?

セッカ:キャッチ。「…って、これは?」

GM:中を改めますか?

セッカ:改めます。

 1000G金貨が3枚入っている。

セッカ「先生、こんなに…」

魔道騎士オリヴァー「餞別だ。まったく手のかかる… この街に留まると面倒事に成る。どこか大きな都へ向かえ。魔動機を扱う店もあるだろう。セッカ、当分は帰省できなくなるぞ」

セッカ「元よりそのつもりよ」

魔道騎士オリヴァー「お前を嫁に欲しいって男は5人はいるんだがな。やれやれ、いつになれば安心出来るのか」

セッカ「別に結婚したくて生きてきたわけじゃないわ」

魔道騎士オリヴァー「話はこれまでだ。俺は戻る。これ以上は怪しまれるからな」

セッカ「…はい」

魔道騎士オリヴァー「その子たちがまともな人生を歩めるよう祈ろう。セッカ、お前の無事もな」

セッカ「ありがとう、先生」

魔道騎士オリヴァー「他の者。セッカをよろしく頼む」頭を下げた。

ダンティリオン「ご安心を、全ての女性は庇護の対象です。ああそうだ、先生殿にお願いがあるのです」

魔道騎士オリヴァー「なんだ? これ以上は鼻血も出んぞ」

ダンティリオン「いえ鼻血は結構。カッサル嬢を連れて行ってもよろしいですか?」

カッサル「あ゛? 何言ってんだ!?」

ギズ(なんで一緒に…)

ダンティリオン「彼女は私が責任を持って一人前のレディに育てます」

 オリヴァーは少し考え、カッサルを見つめながらニヤリと笑った。

魔道騎士オリヴァー「カッサル。1匹オオカミは早死にする。いずれどこかのパーティに任せようと思っていた。ダンティリオンと言ったな。お前さんが一角の男なら、持ってけ」(笑)

カッサル「なに勝手に!!」

ダンティリオン「私はいずれ王となる男ですよ」

魔道騎士オリヴァー「ほぉ、そいつは楽しみだ」

ダンティリオン「それぐらいの甲斐性は持ち合わせています」

 オリヴァーは再びニヤリと笑い、部屋を後にした。





GM:これにてCP終了です。お疲れさまでした。

PLAギズ:お疲れ様でした!

PLBダンティリオン:お疲れ様でーす。

PLCセッカ:お疲れ様です。

GM:これから先、魔動機たちを連れてどうするのか、どこへ行くのか。それはまた別の物語ですね。

PLCセッカ:ハーヴェスの国立図書館で魔動機の資料探したいけど… GMの別シナリオでその図書館にガチレズが出てきたんだよなあ。(汗)

GM:いますね。(笑)

PLBダンティリオン:せっかく持ち帰ったし、カッサルと冒険したいなぁ。

GM:カッサルはセッカ以上に跳ねっ返りのお転婆ですよ?(笑)

PLBダンティリオン:だがそれがいい。まずは口調から躾けないと。(笑)

PLAギズ:ギズ君と口喧嘩しちゃいそう。

GM:しちゃいそうですね。していくうちに、やがて友情が芽生え…(ry

PLBダンティリオン:お義父さんは許しませんよ!

GM:(笑)

PLAギズ:お義父さんだったのか。

GM:血縁ないし(笑)

PLAギズ:ギズ君はまだ純情だから!

PLBダンティリオン:純愛ルートですね。分かります。

PLCセッカ:質問。夢の世界でサビーナたちを説得して連れ戻すことは私たちに出来たんですか?

GM:難易度は高いですが、不可能ではなかったです。

PLAギズ:説得したかったなぁ。

PLBダンティリオン:どう説得すれば良いか分からなかったからなー。

PLAギズ「お前の野望はそんなものか!」とか?(笑)

PLCセッカ:仮面の男は一体何だったんだろ。

GM:あれはただの人形、スピーカーです。司令塔としての機能しかありませんでした。小型魔動機の兄妹は命令に抗えずにいました。実は最初から集中的に仮面の男を倒していれば戦闘は即終了でした。

PLAギズ:知名度抜けないから絶対大ボスだなぁって思ってた。

GM:実質の報酬は一人につき1000Gですね。きっとダンの取り分はカッサルにかっさらわれて半分になるでしょう(笑)

PLCセッカ:カッサルめぇ!

PLBダンティリオン:もう面倒見る気だからそれぐらいはなぁ。

GM:ではでは、おやすみなさいませ~。

PLCセッカ:おやすみなさい。

PLAギズ:ありがとうございました。

PLBダンティリオン:おやすみなさーい。


 END

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ウィステリア・ガーズ(SW2.5リプレイ) たぬき @racoon50

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