タイムリミットを知った ②

 ユメが私のことを、花音の「ノン」だけ取って、ノンちゃんとあだ名で呼ぶようになる頃には、二年生になっていた。

 去年までは仲の良い友達だったが、今ではなくてはならない親友になっていた。

 学校ではもちろん、放課後は本屋に行ったり、カフェに行って勉強したり。休日にも遊ぶようになり、お互いの家を行き来するようになった。

 私たちのクラスは特別進学コース(通称 特進)なので、今日は学校で模擬試験がある。

 模試が終わった後に近くのカフェに行って一息つくことにした。

 ユメの姉は去年、有名大学に合格している。姉に比べられないようにユメも必死に勉強していた。

 昨日も遅くまで勉強していていたのだろ。メイクで少し隠れているが目の下にクマが出来ている。

 「ノンちゃんは、志望校とか決めているの?」

 アイスティーの氷をかき混ぜながら、「ぜんぜんまったく」と呟く。

 将来の夢も行きたい大学も、特になかった。今更ながら、特進を選んだことを少し後悔していた。

 「大学生になったら、ユメとは離れちゃうんだね」

 私の言葉に、ユメはきょとんとした後、「そんなことないよ」と言った。

 「でも、ユメの行こうとしている大学には、私の学力じゃ行けないよ」

 落ち込む私にユメは笑って答えた。

 「大丈夫。まだ二年の一学期じゃん。これから頑張ればノンちゃんだって行けるって。それにもし、違う大学になっても東京にいれば会えるでしょ」

 優しく声をかけてくれるユメに、私は笑って頷いた。

 その後は、次の模試の話や、アニメの話をして気づけば時計は八時を回っていた。

 「そろそろ帰ろうか」

 ユメの言葉に立ち上がろうとしたとき、足元がふらつき、背中に痛みを感じた。

 「大丈夫?勉強で疲れたんじゃない?」

 確かにそうかもしれない。普段、徹夜で勉強をしない私が昨日は珍しく、遅くまで模試の勉強をしていた。

 「…そうかも」

 「一人で家まで帰れる?」

 ユメは私の背中に腕を回して、心配していた。

 「ありがとう。大丈夫。一人で帰れる」

 そう、笑って見せた。


 嫌な予感がした。

 ユメと別れた後、私は急いで家に帰った。

 「遅かったじゃない。模試、どうだった?」

 キッチンで揚げ物をしながら、母が訊ねてきた。

 「まあまあかな。前回よりはいけた気がする」

 私はカフェでの出来事を話した。

 「ママ、あのね、ユメとカフェにいたんだけど。帰るとき立ち上がったらふらついて、少しだけ背中に痛みがあったんだよね」

 「本当?」

母は揚げ物をする手を止めて、私の方へとやってきた。

 「今は何ともないの?」

 「うん。今は大丈夫」

 「念のため明日、病院行こうね」

 母はそう言うと、心配そうな顔をしたままキッチンへと戻っていった。

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