猫のアーニャ(番外編です)
番外編です。
本編は、明日の更新予定です。
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ある日曜日の昼下がり。
家で六花とテレビを見ていると、ガチャリとドアが開いて猫が入って来た。
ふわふわの毛並みの真っ白な子猫だ。
なんだ? どこから入って来た?
すると六花が立ち上がる。
「かわいい! お兄ちゃんが、私の為にこっそり拾って来てくれたんですか?」
「いや。違うけど……」
「あ、そうだ。ちょうどいいものが」
六花はそう言って、キッチンの方に行くと、水とカリカリの入った皿を持って戻って来た。
「ほら。食べなさい」
子猫はカリカリを美味しそうに食べる。
「……」
「猫はかわいいですね。そうだ。名前をつけましょう。お兄ちゃん」
「お前。拾って来ただろ」
「え? 何のことですか? 全然わかりませんが」
「おかしいだろ。なんですでに猫の餌と水が用意されてんだよ」
「え? でも、本当にキッチンにありましたよ?」
「嘘をつくなよ」
「え……でも……本当なんですけど……」
困ったように、目を泳がせる。
「え。本当なのか?」
「……はい」
俺と六花は顔を見合わせてから、猫を見る。
白い猫は、カリカリを食べ続けている。
よほどお腹が減っているのか、俺が近づいても反応しない。
「あれ、お兄ちゃん。この皿。名前が書いてますよ?」
「名前?」
「はい。マジックで”アーニャ”と書かれています」
「何度も聞くけど、六花じゃないんだよな?」
「違います」
「なんかちょっと気持ち悪くなってきたな」
「みゃお」
白い子猫は一声鳴いて、俺の足に顔をこすりつけてきた。
「みゃおみゃお!」
「なにか喋ってますよ。お兄ちゃん」
「いや知らないよ。猫の言葉なんてわからない」
俺の足元で、子猫はゴロンと仰向けになって降参のポーズをとった。
フサフサとした毛並みに品のある顔だ。
もしかして、ノルウェージャンフォレストだろうか。
ちょっとかわいいな。
「お兄ちゃん。今、ちょっとかわいいなって思いましたよね?」
「思ってない」
「みゃお」
起き上がって俺の足に体をこすりつける。
「お兄ちゃんにすごく懐いてますね」
「そんなこと言ってもだめだ。明日、どっかに引き取ってもらいに行くぞ」
「そんな……」
「みゃお……」
妹と猫が、切ない表情で俺を見上げてくる。
「……」
「ちゃんと面倒はみます。お兄ちゃんに迷惑はかけません」
「みゃおー」
「ほら。猫さんもこう言ってますし」
「お前。猫の言葉わかるのかよ」
「なんとなくわかるようになってきました」
「今はなんて言ってるんだ?」
「名前はアーニャ。ノルウェージャンフォレストキャット。生まれはノルウェー。先月の20日に生まれたばかりで、モールのペットショップ『猫のコダマ』から来ました」
「お前。やっぱり買って来ただろ」
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