一日目②


 突然やって来た、二玉学園の双子の妖精。


 天河六花をリビングに案内する。


「汚い所ですがどうぞ」


 俺がソファを勧めると、華奢で色白な妖精は、ふわりとソファに座った。


 なんて美しい動きだろうか。


 彼女の背景に、揺れている花が見えるようだった。


「こんなものしかないんですけど、どうぞ」


 俺はそう言って、彼女の前に麦茶とクッキーを置いた。


「あ、ありがとうございます」


 彼女はぺこりとお辞儀する。


「それで、住むって言うのは?」


 俺が聞くと、


「ええと、最初からお話ししても良いですか?」


「もちろんです」


「高羽くんは、再婚の話は聞いてますか?」


 彼女は言った。


「再婚?」


「聞いてないんですか」


「知らないですね。再婚ってことは、俺の親父がって事ですよね??」


「はい。高羽くんのお父さんと私のお母さんが再婚しました」


「じゃあ2人は?」


「2人とも海外に行きました」


「え? じゃあ」


「今は1人でアパートにいます」


「え? でも、お姉さんの姫華さんの方はどうなったんですか? 一緒じゃないんですか?」


「実は、母に引き取られたのは私だけなんです」


「あ。そうでしたか」


 聞いて良いのかな。こんな事まで。と思いつつ耳を傾ける。


「学校では天河を名乗っていますが、実は私だけ母の旧姓の桜井なんです。なので本当の名前は桜井六花です」


「そうでしたか」


 思ったよりも複雑な事情があるんだな。


 綺麗な人だから、悩みなんて無いのかと勝手に思ってしまっていた。


「あ、でも。今日からは高羽ですね」


 ふふ。と柔らかく笑う彼女の笑顔が、あまりにかわいくて俺は目をそらした。

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