怠惰

竜を圧だけで凌ぎ、世界を破滅に導ける程のスキルを持ち、類稀なる天才…なのだが、面倒臭がり屋で残忍でかつ、この世界、存在、遊び、戦闘、どの事柄にも興味が無い。

そんな存在がこんな命の軽い世界に居たらどうなるか?


……迫害される。

当たり前だ。

彼女はもはや爆破寸前の核爆弾でしかない。

迫害だけで済まされるのは良い方だ。


彼女を部下にする?

そんな事をしてはどうなるか分からない。

いつ爆発するかわからない核を自らの家で管理するバカが何処にいる?


気紛れで国を壊滅させ、その同盟国からヘイトを買いかねない。

最悪、気紛れで国を滅ぼされる事すら有り得る。


彼女は飢えている。


全てを滅ぼせる力により、自らの楽しみまで滅んでしまった。


彼女は飢えている。


誰と戦っても満たされない。己より強き者など存在するはずが無いからだ。


彼女は飢えている。


数千年もの間、友も家族も作れず怠惰な生活を過ごし、愛情を欲している。


彼女は飢えている。


もはや涙などとうに涸れている。


彼女は飢えている。





「君がディスタムかな?」


飢えていた……はずだった。


───────────────────────

勝てない。

私の直感がそう告げている。

大抵の魔族を消滅させ、消滅させれないような魔族ですら瞬殺出来る私がそう告げている。

圧倒的な威圧感。

こいつと戦うのは、例えるなら魔法も撃てず歩けすらしないような赤子が、蠱毒のような環境を勝ち抜き、腹が極限まで空いているライオンと戦うような無謀さだと悟ってしまった。


「ディスタム。君に話があってきたんだ。」


「…何?」


「君には、ボクの"配下"になって欲しくて!」



「…なら、常時使用スキル以外のスキルは無しで私と一戦交えて。答えはそれで決めるから。」


勝てないと言ったばかりなのに。

何度も思っているはずなのに。


私は退屈には勝てない。

しかし、ようやく見つけた退屈を凌げそうな天井。逃すはずがない。

彼女の瞳には、生気が宿っていた。


───────────────────────

…破裂音が発生する。

それと同時に、斬撃音と金属音も鳴り響く。

耳が痛くなるような音が一生を思わせるほど続き、地形は既に崩壊していた。

それすらも気にとめず、光すら追い抜き、次元すら切り裂く程の斬撃をひたすら浴びせ続ける。

しかし、相手は微動だにしていないようだった。

……どうやら、全て跳ね返されているらしい。

どれだけ目を凝らしても、守るために動いているようには見えない。

───いや、実際には見えているはずだ。

彼女は狂戦士のように理性が無くなっている

故に見えていない。

広範囲の斬撃と爆音が鳴り響いているのだ。その領域に常人が入るだけで即死だろう。


そんな戦いをしている最中、ディスタムは相手の細胞を操り、頭を破裂させ、確実に殺した手応えを感じ、首のない死体を見届け────……






「ディスタムのルール違反だね。ボクの勝ち。」


「……え?」

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君に大罪の名を。 朝霧 命/みている。@休止中 @nowarian

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