第四話 「活路」
こんにちは、俺エバン・ベイカー11歳。
……ユナ・ラムレイに敗北感を味わわされたあの日から一年ほど経った。
直接ユナの魔法をこの目で見てみて才能の差を感じた。この世界の主役は俺じゃなかったことを改めて実感することとなってしまう。
でも、このまま何もかもを諦めてしまうのはラバンやミア、神様にも悪い。
せめて有名な鍛治師にでもなって成り上がろうと日々の鍛錬を続けてみようと思う。
……と言っても、俺がこの一年で作れた武器は三つ。スキルのランクは何一つ上がっていない。
二つ目に作った武器は、何の変哲のない剣だった。やはり能力付きの武器は生まれる確率はすごく低いらしい。
しかし、三つ目の武器は能力付与に成功。剣には『筋力増強』が追加された。さっそく使ってみたが、効果は下の下。
武器能力付与はのスキルはどうやらランダムで決まるらしい。ランクを上げるごとに付与効果は強くなり、付与できる能力も増えていくと考えられる。
まだまだ練習必須。そして、一番今困っている問題がある。それは材料不足だ。
鉄はラバンの仕事用の量しかないらしく、俺は毎日作成をすることができないのだ。せっかくちょっとやる気が出てきたのに、元となるものがないと始まらない。
「……はあ、スマホ使いたいなあ」
何もすることがないので暇だ、前世じゃ頻繁にインターネットで動画を見まくってたのになあ。
そして、この家には本が少ない。鍛治師の基本はわかったが、この世界の最小限の知識しかまだ頭にない。
この世界の子供は小学校とか行かなくて良いのか?
そもそも小学校ってあるの?
王国には16歳になれば入れるアルセルダ学園があるらしいが、俺には関係ない。
俺は自分のベッドに寝転がった。そしてポケットからステータスプレートを取り出す。
「俺、このまま鍛治師として腕磨いて終わりなのかな」
改めて自分のステータスを確認してみる。
《エバン・ベイカー 10歳 男
イーリッチ村登録住民
スキル 武器生成技術:B−
武具生成技術:E+
武器能力理解:C
武器生成時能力付与:E+
鉱物探知C
ユニークスキル 異次元鍛冶場作成
異次元武器庫:D
魔法適正 なし
魔法 なし 》
まったく変わっていない。ここまで成長しないと、中々心にくるもの……が…………。
「あれ? 何か増えてね?」
俺は起き上がった。そしてもう一度目をしっかり凝らして見てみる。そこには身に覚えのない『鉱物探知』というスキルが追加されていた。
「お、お父さん!!」
俺はラバンが仕事をしている鍛冶場へ走って向かう。
「スキルって、増えることあるの!?」
「ん? そりゃあ増えることもあるだろうな!! 自分の基本スキルに合ったスキルが成長とともに稀に入手することができるぜ!!」
――それをもっと早く言え!!
何でそんな大切なことを言わないんだ!?
追加されていた鉱物探知はあの問題を解決できる最適なスキルだ。これは、まだ人生捨てたものじゃないかもしれない。
……俺の心は、いつの間にか完全に鍛治師を目指そうとしていた。
**
3日後の早朝、俺は村の最も近くにある鉱山の入り口前に来ていた。
理由は単純明快、鉱石集めだ!!
材料不足を解消するため、俺は昨日お小遣いでツルハシを購入した。俺みたいな子供がツルハシを買う姿を見て不思議そうにしていた大人たちがいたな。
俺は今からマイニングをするのだよ。
採掘に関してはまったくの素人だが、適当に削り取って持ち帰るだけでいいだろう。
ここはあまり人が来ない。俺が少し掘ってしまっても気づかないよなあ?
でもどうやって鉱石を持ち運ぶって? そこで異次元武器庫の出番だ。
武器庫って言っても、武器だけをしまえるわけではないという穴を見つけてしまった。今や一番の便利スキルと化している。
…… 異次元鍛冶場作成はいつ活躍してくれるのだろうか。今後に期待しよう。
説明はこれくらいにして、作業を始めよう。俺は首にかけていた鞄からスクロールを取り出した。
スクロールとは、魔術師が作り出した巻物の事だ。
紙の部分に魔法を記録し、いつでも魔法が呼び出せる便利な代物。
俺が使用するのは『光原』のスクロール。光を物体に付与する魔法だ。
このスクロールは使い道が暗い所を照らすだけなので、安価で売っていた。これで俺の所持金はゼロになったわけだが、今後のことを考えればこれくらいは安いものだ。
俺が持っていたツルハシに、スクロールを使用する。すると魔法の文字がツルハシに刻まれ、ツルハシは明るく光りだした。
これで準備完了、さっそく鉱山に入ろうとするのだが……。
「……魔物とか出てきたりしないだろうな」
俺は異世界に来て、まだ一度も魔物を見たことがない。山にはゴブリンなどが生息しているらしいが、
「頼むから留守でいてくれよ……! 戦闘能力ゼロなんだから。い、いくら精神年齢28歳な俺でも、出会したりしたら腰抜かして逃げられないかもしれないから……!」
何も居ないことを願いながら、俺は材料を求め鉱山に足を踏み入れた。
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