転移失敗?

 変な空間に入った。目が見えない、耳も聞こえない。

 【偽神の目】だけがえる。


 この空間中で、舞依まいの屋敷が見える。屋敷段々小さくなっていく。わたしは上から見下ろしていて、自分のマンションが見える。マンションが二つのボールに見える世界を繋がっている。


 転移魔法か。どうやらわたしは世界から出ていた、いや、それだけじゃない、次元が違う、わたしは元の世界より高い次元にいるな。

 わたしが知ってる転移魔法と違う、これでワームホールを創らなくて済む。天才か? この魔法を作った人。


 ここから行けば、あきの世界に戻れるかもしれない。先ずはここで動けるのかを試してみよう。

【サイコキネシス】で動けた、本来の軌跡きせきから外れて、その世界へ近づけた。

 できるな。【サイコキネシス】で、元の軌跡きせきに戻ろう。


 あ、どうやら時間切れのようだ。元の軌跡きせきから少しずれたが、近いからいいか。


『【座標移動】を覚えました』



 ※



「ここは?」


 どうやらわたしは森の中で、廃棄された道の真ん中に立っているらしい。


 緑の空からいくつ漏れる日の光が薄暗い森を淡く照らす。

 周りは通常より三倍大きな聳え立つ樹木じゅもくは茂り放題に茂ってる。道の端っこまで背の高い草が生えてる。

 この道は小さいな砕石で造られている、その上には木と金属が並べてる、レールだった。


 魔力があった……。聖域より濃度が低いが、この世界はどこでも魔力があるというのか?


 ん? 先から後ろがうるさい、それに地震?

 後ろに振り向いて見ると……。


 死ぬな、これは……。


 ガラガラと響く音。一メートルすらない目の前で、大きな目から眩しい白光に照らされて、金属造りの真っ黒な大きな獣がわたしを喰おうと迫ってくる。


 近い過ぎたから、魔法を使うと、列車が壊れるか、それともレールが壊れるか、転移魔法を使うしかないけど、魔力を無駄遣いたくないし……いっぺん死んでみるか。

 なにせ、時間かかるが、死んだほうが魔力効率いい。体の修復が終わったら生き返れるし、痛みもないんだし……いいや、千愛ちあきになったから、体の感覚が鋭くなった……結構痛そう。

 仕方ない、先覚えた転移魔法使う方か……。


 そのとき、音は止んだ、揺れも収まった、世界は止まった。


 目の前に白いステッキ出てきた、名前は確かアステルライブラ……神剣というふざけてる名前よりはいい。これを使えば……ええ? 身体が自分で動いだ……。


『危機を回避するため、変身します』

『え?』



 ※



 わたし、魔法少女になった。

 ぐるぐると変身した。最後にかわいいポーズにニッコリしている。


【偽神の目】で自分をみる。

 白いベースな甘ロリのワンピースにフリル付きの分離した袖、胸の下に大きなリボン、スカートにフリル盛りたくさん。ヘアゴムがリボンに変わった。


 世界の流れが始まった。


「なにこれ?」


 そう言い残したあと、ボールのようにぶっ飛ばされた。



 ※


 ドキン、ドキン。


 世界が回っていたから、少しの間に目を閉じて眠った。今のわたしは大きな樹の下に倒れている。ぶっ飛ばされて樹にぶつけたらしい。

 痛みはない。ダメージを受けたとき、障壁なようなものが自動的に出て、体を守ったから。


『マジックガールシールドです』


 そうだった、変身するとき、技の名前と使え方は頭に流れ込んだ。


 囲まれたが、そんなものを構う暇はない。戻って来た。


「あ! 見つけた、こっちです! 大丈夫ですか!」


 体の一部だけを守った鎧を着た女の人たちがこっちに近づいてくる。わたしを囲まれてるあいつらのこと気づいていないようだ。

 獲物は弱いほうが先に狙う、分かっている。だからわたしが先に狙われる。


「っ!? そこのあなた、動かないで……えっ?」


 先から心臓の鼓動がうるさい、脈拍みゃくはくが耳の奥に響く、胸のところに強い鼓動を感じる、心臓が喉から飛び出しそう。


「ふふ、うふふふっ、戻ったぞ」


 一気に上げた魔力生成速度のせいで、魔力を抑えなく体から漏れてしまった。いいや、自分のテンションが上がり過ぎのせいもある。

 ゆっくり立ち上がる。


 お母さんに奪われた片翼が元に戻った。これで、お母さんに勝てるのでは?


堕天だてんの翼の修復が完了しました』


 また名前を付けたんだ。



 ※



「隊長! 運転士が女の子を轢いてしまったと言ってたんです」

「分かった、医者を連れてすぐに負傷者を探し出して救護します」


 先ごろ、列車が止まった。なにが起こるに違いないが、人を轢いていたとは。

 しかし妙ですね、この森の中にただ一人の少女が生き延びるのですか?


 私は部下たちと共に少女を探すために列車から出た。

 樹の下に少女が倒れているのを見つけたが、目に見えるのは、少女が五匹のロックウルフに囲まれている。彼らが自分の姿を現している、つまり、この群れの頭数はその倍に近い。


 先私の声を聞いて、分散した他の隊員はもうすぐにこっちに来る。それでも、ケガ人はそれなりに出るでしょう、仕方がない……。

 それなのに、おかしいな光景が目の前に広がている。


「笑ってるよ、隊長! 列車にぶつけられたなのに」

「ああ……あれを見えますか?」

「え? なにあれ?」


 少女の背中から黒い粒子が噴き出して、段々形が整えていく、最後は鳥のような不規則に揺れている翼となった。

 私の直覚が教えている、あれはヤバいと。それなのに、魔力をまったく感じない、逆に不気味過ぎる。


「隊長! あれはどう見ても人間じゃないですよ! ヤバいよ!」

「あ、ああ」



 ※



 いいや、冷静に考えると、まだ足りない。お母さんを完全に押えるには……。


 一番大きな変わった狼が口を大きく開いて、わたしに獣らしい声をあげて飛びかかる。


「邪魔」


【サイコキネシス】で、その頭を壊した。頭が変になった狼は、糸が切断された人形のように、動けなくなった。

 外は硬いが、中は違う。


 わたしは知ってるはずだ、お母さんを完全に押えるには……魔力が圧倒的に足りない。二つの翼が揃えたとは言え、まだまだ時間がかかりそうだ。まぁいいか。


 そういえば、お姉ちゃんたち王城に着いたかな? わたしがいないと気づいたら、焦ってるお姉ちゃんが目に見える。

 手をぬいぐるみの口に突っ込んで、スマホを取り出してから、お姉ちゃんたちにメッセージを残す。


 これでよし。


 死んだのか、この狼? リーダーぽい、他の狼はもう逃げ去った。

 しゃがんで、その体をつんつんして見る。

 いいや、魔力から見れば、まだ死んでないぽい。魔力を持ち生き物はそう簡単に死ぬはずがない、ならば……。


 無数の魔力の糸で、狼を囲まれたあと。


「眠れ」


 一点に収束しゅうそくする。バラバラになってしまったが……その中に魔力がまだ残っている、こうなってしまったでも死なないのか?


『魔力を吸収することをおすすめします』

『嫌だ』


 確かに魔力を吸収しれば、再生できなくなる。それでも、怖い。我ながら呪いのせいで、もうトラウマになってしまった。

 こうなったら、灰になるがいい。


『もう死んでるからっ! これ以上はやめてっ! 魔力はあの魔石の中にあるよっ! 呪い耐性レベルはもうMAXだから、魔力を吸収してよっ!』


 焦っている……森が燃えされるのは嫌だから?


『……やばっり違う人?』

『……いえ、そんなことはありません』


 そこまで言うなら、食べてみるか。

【偽神の目】で魔石を見つけた、呪いはない。魔力の糸で魔力を吸収した。


「ふふっ」


 世界樹の言うことが本当なら、呪いはもう、恐れるに足らず、どんどん食べるがいい、のでは? 狩り尽くせば?


「……いいや」


 冷静に考えてみれば、この魔石というもの、中にある魔力がしょぼい過ぎる。もういいか、狩り尽くせば、生態が崩れるし。 


 王城はどこにあったっけ? レールについて行けば、街に着くだろうか? 聞いたほうが早い。


「ねぇ、君たち……」

「ひぃ!」

「な、なんでしょうか?」


 震えてる? どうして?

 なにこれ? この翼のせいか? ソーラーパネルのように、光を魔力に変換してるが、ここは暗いのせいで、魔力がしょぼい。

 翼を仕舞った。


「これでいい?」

「は、はいっ!」

「お気遣いありがとうございます」


 まだ震えてる? なんで?


「王城への道、知らない?」


 金髪の人のほうが話を聞いてくれそうが、栗色のほうは無理ぽい。

 彼女たちの騎士服には、わたしの国に所属する紋章があるから、うち国の騎士さんだ。


「失礼ですが、身分と目的を聞いてもいいでしょうか?」

「家族がそこで待ってる」


 そして、わたしは変身するときのポーズをとって……。


「わたしは愛と平和を守る魔法少女、だ!」


 ニッコリ。






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