洋風屋敷でご飯

「アキちゃん。起きて、着いたよ」

「うん、起きてる」


 くぅ、油断した。どうやら自分はカフェインに反応しやすいタイプだったらしい、カフェインが効きすぎて、ちょっと気持ち悪い。


 耳を澄ませば、鳥がとこかで鳴いているが姿は見えない、やさしい風に吹かれて葉がさやさやと音を立てている。


「ほら見て、マイさまの屋敷だよ」


 目を開けると、そこには年季の入った蔦の絡まるレンガ造りの洋風屋敷あった。いったん見れば古そうな建物だったが、レンガはまるで新しい。

 立派な木々が屋敷を守るように聳えてる、屋敷に着く広い通り道はしっかり石で舗装されてる、その隣は木造なフェンスに囲まれたキラキラと輝く湖が広がっている。

 まるで小さいな魔女の森に迷い込んだようだ。


「どう? 凄いでしょ」

「うん」


 その途中で、人の気配はなかった、鳥の鳴き声だけが聞こえる。


「ねぇ、お姉ちゃんは外に出たい?」


 わたしはこのままでもいいけど、お姉ちゃんたちはどうだろう?


「え? うーん、みんなに心配されてるから、帰りたいかな」

「そう、一緒に帰ろう」

「うん」


 屋敷の扉の前に止まって、お姉ちゃんはわたしを下ろした。


「着いたよ、入ろう」


 わたしの手をつないて扉を開けて、中に入った。


 少し進んだら、居間に着いた。採光が巧妙にできているので、明るいけど眩しくない。


「こっちだよ」


 お姉ちゃんはわたしを連れて左に曲がた。


 マイは奥に座っていた。


「お? 来たか、おはよう」

「おっはよー」

「おはよう」


 マイは寝巻きの姿で、金色な髪を下ろしたままに長いテーブルにもっとも奥の席に座っている。


「一応、千愛ちあきの分も準備したじゃが、食べられるか?」

「アキちゃんは食べるって」

「うむ、承知した」

「ふっふん、マイさまところの料理はすごくおいしいだよ」


 お姉ちゃんが自分のことだと思って自慢している。


「じゃあ、楽しみにしてるね」

「うん」


 少し待ていると、扉が開かれてメイドたちは入ってくる、外から香ばしいの匂いが流れてくる。メイドたちは左右に並んで、最後の二人のメイドは料理が乗っているワゴンを押して、部屋に入った。

 メイドたちはワゴン上に載った料理を目の前に置いていた。


「今日のご飯もおいしいそう。ね、アキちゃん」

「うん」


 ほかほかのご飯、具材たっぷり入った味噌汁、バンバン膨らみがあるジューシーそうな卵焼き、少し焦げ付きおいしいそうな焼き鮭ステーキ、ひとつまみ置いていた納豆。

 和食だった。


「ご苦労」


 メイドたちはマイに労われたあと部屋から出ていた。


「では、いただこうか」

「うん」


 先のメイドたちは気になるが、あとで聞いてみよう。

 みんなが目の前の料理を食べ始めた。


 なぜ自分が聖域せいいきにいるのは分かるが、あの部屋にあるのは魔法の術式かもしれない、転移魔法の術式だろう。あきとしてのわたしは魂だけがここにいるのはなぜだ? それに、わたしのマンションが聖域せいいきに転移した?


 うん、おいしい。


 食べ終わった。


「おかわりいるか? いっぱいあるからな、どんどんおかわりするでもいいぞ」


 お腹すいたわけではないが、ただ食べたいと思って。それに、おいしい。


「じゃあ、お願い」

「うむ」


 またメイドたちが入ってきて食器を回収して、もう一つの和食セットをテーブルに並べた。


 見れば分かる、ここは外の世界と隔絶かくぜつされていた別の世界だ。この屋敷の中に、外の世界と繋がりやすい場所を見つけた、外に出られないわけでもないが……。


「あ、アキちゃん。食べるのが早すぎ、体に良くないよ」

「よく噛んでゆっくり食べるのじゃぞ、でなければ大きくなれんぞ」


 おいしいもの食べると、つい早く食べたくなってしまっていた。考えことをしていると、気づかなかった。


「うん。別に身長はこのままでもいいけど、身長が高いとしでも、わたしには大きなメリットが感じないから」

「そうか……そうじゃな」


 ん? そういえば、ここに座ってる自称巫女の金髪少女は教会の神殿にいる巫女? お父さんの隠し子じゃないのか? なにもの?


「うむむ……」


 あ、食べきった。

 少しあとで、マイとお姉ちゃんも料理を平らげた。またメイドたちは部屋の中に入って、食器を片付けたら出ていた。


「おいしいかったぁ」

「うむ。それで、千愛ちあきよ。先からこっちをずっと見つめていて、どうかしたか?」

「マイは、なにもの?」

「昨日言ったであろう、もう忘れたのか?」


 昨日言ってたことが中二病ごっこのセリフじゃないのか。


「妹じゃないの?」

「妹……? ああ、昨日のあれはそういうことだったのか。違うぞ」

「え? 妹? なになに、昨日なにがあったの?」


 お姉ちゃんがきょとんとした顔で、マイに昨日のことを聞く。


「まあ、大したことではない。昨日千愛ちあきが起きたときの話でな、頭が撫でられた」

「あはは……。マイさまのことを妹だと勘違いしちゃったのかぁ、アキちゃんのほうが背が高いだし。それに、一回会っただけじゃ、顔が覚えないんだよ、アキちゃんは。私も最初の頃は苦労したんだよ」

「まさかわらわのことを覚えてないとは、一応巫女なのじゃぞ……」


 お姉ちゃんがさまを付けてるし、巫女は偉い人だったらしい。


「あのね、マイさまはおじいちゃんの上司なようなものだから、頭を撫でるのは失礼だよ」

「いや、最初会ったとき、かわいいと言いながら抱きつくのは誰のことじゃ?」

「えへへ」

「褒めてないぞ、なに照れてるのじゃ。まぁいい、お主の姉はいつもその調子だ。それにわらわは堅苦しいより、すみれのほうが好きだ。千愛ちあきも楽にしてよいぞ」


 おじいちゃんの上司……妹じゃない……妹じゃないのか。最初から決めたイメージがなかなか変えられない、これは初対面のときに与える第一印象というものか……。


「おじいちゃんがいつも世話になります」

「うむ、別にわらわがあやつを世話してるほどでもないだがな。ところで、わらわのほうが年上のじゃか、妹になるのは千愛のほうだと思うぞ」

「マイさまと言っても、妹はあげないよ!」


 お姉ちゃんがわたしを抱きついた。

 ちょっと熱い、コーヒーのせいだ。次はコーヒー粉の量を減らそう。


「やれやれ。わらわは別にすみれの妹を取るつもりはないだがな……ん?  千愛ちあき。人に触れるのは苦手ではないのか?」


 そうだった。千愛ちあきとして、お姉ちゃんに触れるのは慣れたかもしれない、体がお姉ちゃんに触っても問題ないと言っている。最初は、お姉ちゃんに触るのは結構抵抗してたはず……。

 抵抗するのも体力の無駄って分かったから、諦めた。これって、調教済み?


「慣れたから、たぶん……」


 とは言え、身体接触はもうちょっと遠慮してほしいものだ。


「えへへ、それはちょっと嬉しいな~。あれ、アキちゃん。体が熱いよ、大丈夫?」

「コーヒーのせい、病気じゃない。熱いからちょっとどいて」

「あ、ごめんね」


 お姉ちゃんが放してくれた。


「平気」

「さて朝ご飯は食べ終わったし、そろそろ本題に入ろうか」


 本題ってなに? ご飯食べに来ただけじゃないのか?


すみれから大体のことが聞いた。まずはここはどこなのか、分かるか?」

「知ってる、聖域せいいきという造られた世界。似てるような空間はたくさん見てた。それで、なに?」

「へっ? おお、そこまで知っておるのか。似てるような空間というのは、どこで見ておったか? わらわはこの聖域せいいきしか知らんぞ。ここ以外にもあるとはな」

「物知りだね、アキちゃん」


 別にそれほど珍しいものではないと思うだけど。例えば、魔力の塊と言う、意識ある霊体はこういう空間を造るのは簡単だ。別に一から作るものではないから、あくまで元の世界から少しずれた空間だ。


「霊に造られたずれた空間だよ、たまに出てくるよ。迷い込まないようにね……」

「このような空間をホイホイ造れるとは考えられんぞ。霊というのは、ゴーストことか?」

「うん」

「精霊ならできると思うか、精霊と間違っておったではないか? まぁいい、聞きたいのは別のことだ」


 精霊?


すみれから聞いた、千愛ちあきは転移魔法陣を操作し、ここに入ってきたとな、違うか?」

「それはわたしじゃない、体が勝手に動いた」

「ふむふむ。それは神剣の仕業かもしれんな。ご主人が自分の一部の魂を神剣に入れたゆえに、神剣が自分の意思を持ておるのも、おかしいな話ではない」


 神剣の仕業? 少し前に起きたとき、神剣を見たが、魂のようなものはないけど、どう見てもわたしが神剣を食べたらしい、もう一つになった。


『訂正します。神剣ではなく、アステルライブラです』


 ……どうやら世界樹は剣、いや、ステッキの名前にこだわるらしい。やはり世界樹は前と違う気がする。


「ここには同じ魔法陣がおるのじゃ。千愛ちあきに見てもらいたい」

「マイさま。ちょっと焦りすぎ」

「む、そうか?」

「そうだよ。もう二十年以上待ってたんだから、もうちょっと待ってでもいいのに」

「そうか、すまぬ。やはりわらわは国のことが気になるのじゃ。もう国のことを手放すつもりだったが、責任を感じておるやもしれん」

「……? 別に、いいけど。見るだけなら」


 おいしいご飯作ってくれたし。


「本当か! では付いてきてくれぬか?」

「うん」

「もー」





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