第28話
「……だが……この、神の状態というのも…つか、れ、るな…」
ブラッドの意識はそこで途切れた。
◇
目が覚めれば、そこは見慣れた王室だった。
「倒れ込んでいたのか、俺は」
「えぇ」
いたのはアロヴァ。
「…アルペは?」
「隣の部屋にいますわよ」
「そうか」
「えぇ」
「……俺は、夢を見ていたのかもしれない」
「……?どんな?」
「神に成る…っていう」
「?いや夢ではありませんけども」
「…え?」
「その胸を見てください」
「…!!?」
ブラッドの胸には七色に光る血管があった。
それこそ神族の証、
「…だが俺は今人だぞ?」
「…んー?何故なのかは分からないけれど…人であり神である…のかしら?」
「そうなのか」
人であり神である…何か違和感があるがまぁいいか、とブラッドは思う。
しかしそれでは半神ではないのか。
そう思っていると、突然王室(の病室)へ人が入って来た。
髪を綺麗に結ったポニーテールの金髪の女だ。
「……アンタがブラッドさんか」
「…?誰だお前は」
「アンタ、相当強いんだろ」
「……だから誰だよ」
「私か?私は帝国三騎士の一人、リズア。以後お見知りおきを」
「…はぁ?」
ブラッドは、言葉がなんだか変な気がしたが、まぁそこは気にしないことにする。
「で、帝国三騎士様が何の用だ?」
「ふむ、貴方に依頼を一つしたい」
「…貴方…急に入ってきたと思えば、怪我人に対してその無礼、私が許しません…!」
「……ふむ。だがしかし貴方のお父上には許可は得ているぞ?」
「え?」
「さぁ、依頼だ。先日、帝国内より観測された。南方へ三千キロ先、南国フィリアにて最高位指名手配である
「……なるほど」
「と。いうことで、
「…?俺に?帝国が発見したなら帝国でなんとかすればいいんじゃないのか」
「そうにもいかないさ。
「包囲とかすればいいじゃないか?」
「かつてした事があるが、余裕で逃げられたな。上位騎士も二十名近く死んでいる」
「…ってことは帝国にとって
「そうでもあるが、しかし勝てる見込みのある者もいないからな」
「で、どうやって俺に辿り着いた?」
「はは、帝国の大会を忘れたのかい?」
「なるほど、てめぇら記録を見やがったな」
「さて、報酬だが──」
「──…なるほど、ならやってやろう」
◇
ブラッドは不思議に思っている。
何故、己は神の力を使えないのだろうか。
「…」
身体から出る魔力は今までと同じ人の魔力。
色を見てもそれは人の色である青色であった。
「……どういうことだ?」
もしかしたら、自分は神になり損ねた、のかもしれない。
とにかく真偽は定かではないが、この際神であるとかそうでないとかはどうでもよかった。
「……ところでアルペ」
「ん?」
ベッドの上で寝ているアルペを横目にブラッドは淡々と告げる。
「俺は南国、フィリアに行く」
「…あ、そう」
「あぁ」
「……行ってくれば」
「…あぁ」
「まぁ、止めてもいくでしょうけどね」
「まぁな」
静寂が流れる。
「ねぇ、ブラッド」
「ん?」
「今回の女神と天使の件…どう思う?」
「…何かの策略、みたいなものか?」
「えぇ」
「今回は女神が主犯格だと思うがな」
「そうよね、流石に神が操られるとは思えにくいし」
「…だが、何か事が上手く行き過ぎているような気もするが…」
「……それは勘違いだといいのだけれどね。ところで、今回一番の謎があって」
「謎?」
「……謎、そう。闇が出なかったのよ」
「大きすぎる力が発生した際、それを均衡にするため世界が強制的に生み出す力、闇…か」
「……変じゃない?」
「…確かに違和感はある。今回の帝国の依頼と何か関わっていなければ良いんだがな」
「…そうね」
ブラッドはつくづく感じていた。
これからが最も大変だな、と。
(……嫌な予感がするな)
神の力なのだろうか、ブラッドは胸の奥から警鐘がなっている気がした。
◇
ここは、南国フィリア。
そこに、一人の少女が転移され、そして一月余りが経った。
少女の名前は、忍浅葱。
一応女神からはSランクの証を受けていた女だ。
「…さーん」
「ぽけー」
「アサギさーん」
「うにゃはらにゃぁ!?」
「……どんな声出してるんですか…全く…じゃあこの依頼、お願いしますね」
「…あ、はーい。ラリーちゃん」
浅葱は物凄いセンスを持っている。
たったの一月でこの南国の言語を習得してしまったのだから。
「……さて、今日も入りますか」
──忍浅葱が入るのは、巨大な門。
その名も、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます