第24話

「…おぃ、大丈夫か」


「当たり前ですよ、ひひっ」


不気味な笑みを浮かべながらも、南の英雄、ニーヤは笑みを浮かべた。

元犯罪者四人組。


南の英雄、ニーヤ。

北の鉄人、アラ。

東の巨人、コジロウ。

西の魔人、セイヤ。


彼らは皆冤罪で捕まっていた。

逮捕の理由は、エゴだ。

ニーヤは不気味な顔をしているが、それは生まれつきでしょうがないし、南国の一部部族では当たり前なのだが、それを知らない者が通報し、危険人物という事で逮捕。

アラはその大きなガタイからは想像できないような優しさだが、そのガタイ故に、強姦の冤罪を受けた。

コジロウは単純に巨体すぎて恐れられ、それだけで逮捕された。

セイヤは知識のない者が、魔人=悪、という考えをしているせいで捕まった。

まぁ、魔人について正しい知識を持っているのは、人間だと少数ではあるが。


そして、そんな彼らは今戦闘中であった。

熾天使王セラフィムキングが現れることにより、現れるとされる、上位天使アークエンジェル


それらが現れていた。


「セイヤ、あれが何かわかるか」


「はい、アレは……おそらく智天使ケルビムエンジェルですね…」


「智天使…」


既に彼らの足元には幾多の天使の亡骸が転がっている。


通常の天使エンジェルから、上位のものまで、様々な天使を倒してきた。


が、おそらくあの智天使ケルビムエンジェルが今回最強の天使であると推測された。


「…よし、あれは強い…私が止めましょう」


アラがそう言う。


「馬鹿。一人じゃ無茶だろ」


「それに、まだ天使は来ますからね…どうにも今あれを相手にするのは…」


(骨が折れるというか)


セイヤは魔人の中でもかなり強い力を持つし、魔人族の部族出身であるので、それなりに知識があった。


魔人族は頭がいいのだ。


そんなセイヤだが、魔人は特に天使について学ぶ。何故なら彼らと相反する存在だからだ。


闇の力と光の力。


互いに弱点同士なので、知識という名前の武器を持ってして対抗するしかない。


そのセイヤだが、魔人族の中でも二、三番目に強かった彼でも、おそらく単騎では智天使ケルビムエンジェルには敵わないと推測する。


「……んー」


だが、詳細までは分からない。戦うまでは相手がどんな状態か分からないし、天使は特にそれが見分けにくい。


「まずは周りの弱い奴らをやるぞ」


「あぁ」


「ひひ…っ」


ニーヤは直接殴り、アラは大剣で天使をなぎ倒していく。

コジロウは巨体に釣り合うような巨大な刀を振るう。

その度に天使の残骸が撒き散らされていく。


天使の腕が、頭が、足が。


天使の見た目もそれぞれで、おそらく個体としての違いはある。

が、名前を識別することがない。


九割は男好みしそうな女の見た目をしている。


「が、騙されねぇぜ」


ここに居る種族たちは、皆騙され落ちてここにいる。

ブラッドが救ってはくれたが、たまたまだ。

次いつそうなるかは分からない。

だから、騙されない。


魔人セイヤは魔法を使用する。

魔法使いとしてアルペを見ているので、自分の魔法が対して、というか全く強くはないのは知っている。

でもアレはアルペが強すぎるし、自分ではそこまで到達できない、とセイヤは割り切っている。

だから、自分のできる限り精一杯の力を尽くすのだ。


魔法、悪魔の手ハンドオブデビル

黒い手紙天使の背後から迫り、


──ドスッッ。

と天使の背中を貫く。そして、核を握りつぶす。

天使には臓器がない代わりに、核という心臓のような部位がある。

別にそこを潰さなくとも死ぬには死ぬが、核を潰すと即死させることが出来るので、セイヤはこの魔法を使っている。


「はぁ、はぁ」


ニーヤが息をつく。


「……流石に疲れるか」

 

それは、単純な疲労に非ず。

人間種に近いものが神聖エネルギーの強いものに触れ続けると、体力の消費が増える。


また魔人のような神聖に対して弱い種族になると──


「…っ」


肌が爛れてしまう。

故に早急に事態を済ませたいというのが真意なのだが。


「あと、残ったのはあの天使だけですね」


アラが言う。

それは紛れもない智天使ケルビムエンジェルの事である。


「済まない、俺はあれには近づくことも出来なさそうだ」


それは、セイヤである。

魔人ではやはり、あの溢れ出るほどの神聖を持った天使エンジェルを倒すのは困難だ。


魔法による援助は出来るかもしれないが。


「……よし、速攻でいこう」


コジロウが言い出す。


「そ、そっこう?」


「あぁ。俺とアラが刀と大剣で応戦。そこにニーヤがきて殴りを入れる形だ。だが恐らくそれだけでは倒せないのは間違いない」


「…じゃあ?」


「三人でなんとか一瞬隙を作る。そこにニーヤ、何らかの遠距離技を撃てるか?」


「え、えぇ、一応」


「……それは、アレを一撃で仕留められるか?」


「一撃!?」


セイヤは素っ頓狂な声を上げる。



セイヤは逡巡して──


「一つだけ、無きにしも非ずってのが一つありますが…」


「よし、頼んだ」


「……っおぃ…」


それは、成功率、命中率ともにかなり低いわざわざである。


それは、セイヤが自分で編み出した技。


転移拒否闇矢ノットテレポーテーションダークアロー


二点間を結び、その間を転移させるのだが。

二点間の転移は簡単に言えば距離のことだ。

だから、その間の直線を通ることになる。で、その直線を本来はすっ飛ばしているわけだが、そのすっ飛ばしを無くし、転移の速さ(亜光速なのだが)で闇矢ダークアローを飛ばす。それは二点間を半永久的に回り続けるし、永遠に対象を貫き続ける……というもの。

これなら威力も申し分ないが、まずこれを使用する為には二点間の位置を決めないといけない。


その誘導もしなければならない。


セイヤはそのことを三人に伝える。


だが──


「分かってるさ、お前がどこに攻撃を置くかなんてな」


「…何を馬鹿なことを言っているのですか、本当に」


だが、少し頼もしくもある。とセイヤははにかんだ。


そして、セイヤは立つ。

二点間を決めるために。


「行くぞ……ッッ!」


四人は歩き出す。

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