第13話
このようにして、ブラッドとアルペは出会った訳である。
兎にも角にも、今はその関係を崩すのは、ブラッドにとっては良くないことであった。
理由はいくつかあるが、大きい理由としては、アルペ程の魔法使いがいないということ。
替えが効かないというのは、なかなかに厳しいところがある。
「わかった、今からラディア国を奪還しよう」
そう言い出したのは、最高位騎士エーデルガンドの内の一人だった。
「…今から、だと?」
「アルペ殿、闇は、どの程度の時間をあけてくるのですか?」
「…そうね、規模が大きければ大きい程の闇が来る。その分時間も大きくかかってしまうのよ…だから…だいたい今から二日…いえ、三日というところかしら」
そんなに持つのか、と思う。
「しかし、向こうにはバレてしまったぞ。正面から討つのはなかなかに厳しいのでは?」
「そうだけど、まぁもうゴリ押ししかないよね」
「まぁそうなるわな」
結局こうなるのか、とブラッドはため息を吐きたくなった。
「いつ行くんだ、それで」
「明日ね」
「そのくらいが妥当か」
明日、にもう一度攻め入るようだ。
「とにかく一旦解散だ。明日またここへ集まろう」
ブラッドたちが飛ばされた神殿の前集合ということになった。
◇
「いやいやいや、無理っしょ」
俺はそう言ったんだが…
「いやいや、余裕余裕〜」
「能力あるし、大丈夫じゃね?」
こ、こいつら。何を有頂天になっているんだか。
「魔物討伐に慣れてもらうためにって…」
女神にそう言われ、今三人一組になって女神の召喚した魔物と戦わされているのだが。
「くそが、よっ!」
魔物の攻撃を間一髪で避ける。
どうやら他のチームも別の場所で戦わされているらしい。
一応俺たちを女神がみてくれているが、それは分身らしい。
少なくとも、今ここには三人しかいない。
場所は王宮のどこか。闘技場のようなところ。
猪みたいな見た目をした、鋭い爪を持つ、何故か二足歩行のモンスター。
魔物。
魔王という存在によって呼び出される知能がない…とされるモンスター。
その害悪性から、世界中の全種族からヘイトを集めているそうだ。
「…」
俺とペアの二人は、七条と田中。
「七条、お前、何が使える!?」
「何がって…うわ、ぉ!?」
七条はモンスターの一撃をくらう。
「いッッ」
「…おいおい、嘘だろ…」
し、七条の体から血が…
「大丈夫ですよ、
七条の傷がふさがっていく。
「すげぇ、あったけぇー」
「感心してる場合じゃないだろッッ!集中しろッ!」
「お、おぅ」
俺は少し声を荒げて言う。死ぬかもしれないんだぞ。
「…なぁ、慎吾」
「なんだ?」
「さっきもらった袋に、何が入ってた?」
「ーー武器」
「…何だった?」
「短刀」
「田中は?」
「俺は、
なるほど、俺は近接で。
田中は魔法で、戦う、みたいな感じか?
「和也、お前は?」
「俺はグローブだったぜ」
グローブ…殴打系か。
「よし、お前ら、それをつけてかまえろ…」
…
「行くぞッ!!」
まず、俺が駆け出した。
そうして、俺がモンスターの懐へと肉薄する。
「ふんっ!」
煌めく短刀をふるう。
が、避けられる。
「まず…ッ」
横からパンチが飛んでくる。
いや、パンチなどという安い表現では表せないな。
爪を使った、
「…!!」
殴打に備えてガードの体制をとっていたが。
「へいっ」
七条が、その身につけたグローブで殴り返していた。
「和也…っ!」
「連携してこーぜ」
短刀で斬りつける。
「があっ」
短刀は小回りがきく。
仮に一撃目を外したとしても、そこから何連撃でもつなぐことができる。
休むことのない武器。
それが短刀。
怯んだところを、七条が殴る。
グローブによって強化されたのか、身体能力が異様に高いようだ。
というより、この異世界に来てからなんだか…
「体が異様に軽い…?」
全体的に能力が向上したのか、はたまた酸素濃度がどうこうなのか。
良くはわからない。
良くはわからないのだがーー
「今だ、田中」
杖を構えて、魔力を流し込んでいたのか、魔法の杖から火の玉が放たれる。
「
文字にするとしょぼく感じるが、実際にその熱量を肌で感じると分かる。
なんか、ビリビリ震える。
あれは、エネルギーの塊そのものだ。
そして、それが魔物へ着弾。
そのときには既に俺と七条は離れている。
そして、爆発と同時に爆風。
物凄い熱が押し寄せる。
「ぐ、う、っ」
吹き飛ばされそうになる。
「…」
風がやみ、しんとする。
「…モンスターが…動かない?」
そして、魔物はさぁ、と消えてしまった。
召喚獣だからだろうか。
「おみごと!」
女神からそう言われる。
「そうか、勝ったのか俺たち!」
「いやっほぅ!」
喜んで、飛び跳ねた。
あぁ、本当に。
地獄の開け幕とも知らずに。
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