第13話

このようにして、ブラッドとアルペは出会った訳である。


兎にも角にも、今はその関係を崩すのは、ブラッドにとっては良くないことであった。


理由はいくつかあるが、大きい理由としては、アルペ程の魔法使いがいないということ。


替えが効かないというのは、なかなかに厳しいところがある。


「わかった、今からラディア国を奪還しよう」


そう言い出したのは、最高位騎士エーデルガンドの内の一人だった。


「…今から、だと?」


「アルペ殿、闇は、どの程度の時間をあけてくるのですか?」


「…そうね、規模が大きければ大きい程の闇が来る。その分時間も大きくかかってしまうのよ…だから…だいたい今から二日…いえ、三日というところかしら」


そんなに持つのか、と思う。


「しかし、向こうにはバレてしまったぞ。正面から討つのはなかなかに厳しいのでは?」


「そうだけど、まぁもうゴリ押ししかないよね」


「まぁそうなるわな」


結局こうなるのか、とブラッドはため息を吐きたくなった。


「いつ行くんだ、それで」


「明日ね」


「そのくらいが妥当か」


明日、にもう一度攻め入るようだ。


「とにかく一旦解散だ。明日またここへ集まろう」


ブラッドたちが飛ばされた神殿の前集合ということになった。



「いやいやいや、無理っしょ」


俺はそう言ったんだが…


「いやいや、余裕余裕〜」

 

「能力あるし、大丈夫じゃね?」


こ、こいつら。何を有頂天になっているんだか。


「魔物討伐に慣れてもらうためにって…」


女神にそう言われ、今三人一組になって女神の召喚した魔物と戦わされているのだが。


「くそが、よっ!」


魔物の攻撃を間一髪で避ける。


どうやら他のチームも別の場所で戦わされているらしい。


一応俺たちを女神がみてくれているが、それは分身らしい。


少なくとも、今ここには三人しかいない。


場所は王宮のどこか。闘技場のようなところ。


猪みたいな見た目をした、鋭い爪を持つ、何故か二足歩行のモンスター。


魔物。


魔王という存在によって呼び出される知能がない…とされるモンスター。


その害悪性から、世界中の全種族からヘイトを集めているそうだ。


「…」


俺とペアの二人は、七条と田中。


「七条、お前、何が使える!?」


「何がって…うわ、ぉ!?」


七条はモンスターの一撃をくらう。


「いッッ」


「…おいおい、嘘だろ…」


し、七条の体から血が…


「大丈夫ですよ、治癒ヒール


七条の傷がふさがっていく。


「すげぇ、あったけぇー」

 

「感心してる場合じゃないだろッッ!集中しろッ!」


「お、おぅ」


俺は少し声を荒げて言う。死ぬかもしれないんだぞ。


「…なぁ、慎吾」


「なんだ?」


「さっきもらった袋に、何が入ってた?」


「ーー武器」


「…何だった?」


「短刀」


「田中は?」


「俺は、ロッドだった」 


なるほど、俺は近接で。

田中は魔法で、戦う、みたいな感じか?


「和也、お前は?」


「俺はグローブだったぜ」


グローブ…殴打系か。


「よし、お前ら、それをつけてかまえろ…」



「行くぞッ!!」


まず、俺が駆け出した。


そうして、俺がモンスターの懐へと肉薄する。


「ふんっ!」


煌めく短刀をふるう。


が、避けられる。


「まず…ッ」


横からパンチが飛んでくる。


いや、パンチなどという安い表現では表せないな。


爪を使った、破壊・・だ。


「…!!」


殴打に備えてガードの体制をとっていたが。


「へいっ」


七条が、その身につけたグローブで殴り返していた。


「和也…っ!」


「連携してこーぜ」


短刀で斬りつける。


「があっ」


短刀は小回りがきく。


仮に一撃目を外したとしても、そこから何連撃でもつなぐことができる。


休むことのない武器。


それが短刀。


怯んだところを、七条が殴る。


グローブによって強化されたのか、身体能力が異様に高いようだ。


というより、この異世界に来てからなんだか…


「体が異様に軽い…?」


全体的に能力が向上したのか、はたまた酸素濃度がどうこうなのか。


良くはわからない。

良くはわからないのだがーー


「今だ、田中」


杖を構えて、魔力を流し込んでいたのか、魔法の杖から火の玉が放たれる。


火炎球ファイアーボール


文字にするとしょぼく感じるが、実際にその熱量を肌で感じると分かる。


なんか、ビリビリ震える。



あれは、エネルギーの塊そのものだ。


そして、それが魔物へ着弾。



そのときには既に俺と七条は離れている。


そして、爆発と同時に爆風。


物凄い熱が押し寄せる。


「ぐ、う、っ」


吹き飛ばされそうになる。


「…」


風がやみ、しんとする。


「…モンスターが…動かない?」


そして、魔物はさぁ、と消えてしまった。


召喚獣だからだろうか。


「おみごと!」


女神からそう言われる。


「そうか、勝ったのか俺たち!」


「いやっほぅ!」


喜んで、飛び跳ねた。


あぁ、本当に。




































































地獄の開け幕とも知らずに。

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