第12話
確かその時俺は十三歳だったか。
まだまだ餓鬼だったが、周りのやつより人一倍強かったのは覚えている。
なんなら、その強さに己自身で慢心していたくらいだ。
で、なんだ。
そんな有頂天だった俺をコテンパンにしたのがアルペなんだが。
開口一番のセリフは、「あんた、弱すぎ」だったか。
普段はあまり喋らず、口を開いてもその殆どが尖ったものが多いが。
彼女、アルペは
聞いたところによると、
俺とほぼ同い年のアルペは一体いつから、
それは未だに、聞いたことがないが。
◇
ブラッド、少年時代。
当時、十三歳。
「ふふふふ、ははははは!」
片手で顔を抑えながら言う。
「俺、最強!!」
全く傍目から見たらこれは、本当に痛い。
が、当時のブラッドにその自覚はない。
今思い返すと死にそうになるので、思い返さないのだが。
「ふん、これが帝国最強の騎士か?腑抜けだな」
「は、はは。仰るとおりだよ、ほんと。しにてー。マジで。こんなガキに負ける俺とかさー…」
「ふん、では、その剣は約束通りもらわせてもらう」
ブラッドは半ば強引に騎士の剣をもらう。
「はー、持ってけ泥棒」
それは、帝国最強の騎士、暗黒剣。
当時のブラッドは、それに憧れ、帝国の闘技大会で優勝すればそれそれがもらえると聞いて、挑んだのだ。
ブラッドは、その当時でも剣技だけなら世界でかなうものが殆どいないくらいには強かったーー
ーーのでブラッドの中二病にそれが拍車をかけた。
「ん?」
観客席からは拍手喝さいであった。
「ぅおおおおお!すげぇぞ、無名の剣士!」
「すげぇええええ!あの帝国最強ラ・タリアをやっちまうなんてよー!!」
スタンディングオベーション。
ものすごい熱気だった。
「ふふふ」
ブラッドは当時無名の剣士という名前でエントリーしていた。
まぁ、ブラッドとという名前でアラエルと関連性があると分かる猛者はいないだろうが。
(ラディア国では知っている者もそれなりにはいるが)
エントリー名は自由なので、正直ふざけた名前もかなりあった。
ブラッドのように少し痛い名前をつけるものも、いなくは無かったが。
ーーで、少し時が進み、帝国内。
母を亡くし、強くなることを決意して旅に出たブラッドだが、まず帝国へきたのだ。
で、二年間たって。
少なくとも、帝国最強になることは出来たようだ。
「…」
ジー。
「…?」
酒場にて。
謎の美少女に見つめられているのだが。
「どうした?」
「…ジー」
「何故喋らん?」
「…」
ただブラッドのことを見つめるだけのその少女をみて、ブラッドは訝しく思う、
「…その子はね、あなたにお話があるんじゃないかしら?」
話しかけてきたのは、酒場のマスター。
「はぁ…?話すって何も話さないじゃないか」
「若いわねぇ…話すというのは、
「身体…って、そういう?」
「多分あなたが想像している方ではないと思うけどー。とにかく、裏庭にでも行ってきたら?」
「ほぅ、まぁいい。裏庭にいくか」
ということで、裏庭。
「酒場に裏庭があったなんて、初めて知ったぞ…ふ」
「…」
その妙な佇まいに、ブラッドは少し見を見開く。
「なるほど、身体で語り合うとはそういうーー」
火炎の槍が、ブラッドの腹の目の前に生成された。
「はっ?」
驚くのも無理はない。
いきなり先制攻撃されたのもある…が、その程度では驚かない。
理由としてブラッドが修行してきたのは、剣術であって、決して魔術ではない。
故に、魔法に対する対策など、何ら積んでいないのである。
だからこそ、少し焦る。
「あぶ、ね、っ!」
カンッ、と炎の槍を弾く。
「ん?」
今度は、地面からだった。
黒い触手のようなものが、物凄い速さで迫る。
「ふん」
が、近接戦ならば、容易く捌ける…
と、思ったが。
「なん?だ!?」
その怪奇な動きに、人との動きの違いを思い知らされる。
人ならば決して出来ないような動きも触手ならば容易く出来てしまう。
「ぐ、ほっ」
一撃をもらった。
「…なん」
吐血。口から血がたれる。
「おかしいな、あまりにも一撃が、
「…」
少女はブラッドの方を見て、手をかざし、魔法をかけようとして、それから少しして、手をおろして、結局何もせず、口を開いてこういった。
「あんた、弱すぎ」
可愛らしい声でなんてことを言うのだろう。
しかも、何だあの哀れんだ目は。
全くブラッドは少女に完敗してしまった。
そして、それから彼女の魔法の弟子となるのだが。
少女の名前はアルペ。
世に珍しい、
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