第10話
まとめ役として、真也が話を始める。
「と、とにかく…ぼ、僕たちは女神様の指示に従えばよいということですか?」
「ええ」
…ほっ、とした。
正直。
「…今、『ほっ』とした人、いますよね?」
「…!」
「一つ、忠告しておくと、この程度でホッとしないことですね…これからは恐らく厳しい日々になるでしょうから」
「…」
「まず生き物を殺すことに慣れてもらわねばなりませんがーー…んー、そうですね、
「あぁ、はい…」
「ならば、元の世界に魔法概念はありましたか?」
「…おとぎ話の中でなら…」
「なるほど、魔法の力そのものはなかったと…」
「…ってか女神さんよー、俺達の魔力がすげーとか言ってたじゃーん。どうなの?強いの俺?」
「…この、男…」
女神が少し顔をしかめるが…すぐもとに戻る。
「まあ、良いでしょう。まず、魔法知識について教えねばなりませんからね。」
「はい、すみません」
すいません、ではなく、すみません。
おおきな違いは無いだろうが、確かすみませんが正しい使い方だったよな。
「…まず以てして、あまねく全ての事象には
「全ての事象…」
「ええ、しかし、あまねく物に宿ると言っても、ただ
「なるほど」
「その
「…そんな、万能的な…」
「実際、万能ですけれどね…魔素の量は絶対不変なので、量を増やしたり減らしたりは出来ないのですがね…その魔素をいかにして具現化、効率よく出来るか…が、肝になります。それは、まぁ生物ごとに違うのですが」
「…生物ごとに違う?」
「例えば人ならば、魔力というものに変換し、それを更に魔法というものへ昇華させます。一般人からしたら非常に高難度ですが、あなた方はもう魔力が溢れるほど出ているので…なので、魔力量が凄いといったのてすよ。ちなみに、魔力量が多い=強い、わけではありません。魔法もありますが、もちろん他の武具もあります。基本魔法に劣るというだけで」
「な、なるほど」
佐々木も少し混乱しているようだ。
そこで、クラスのちょいやんちゃ者、七条和也が質問した。
「一つ質問していいか?」
「なんでしょう?」
「アンタは魔力が見えんのか?」
「…一定の実力があれば見れますが?」
「そうか。アンタは魔法が使えんのか?」
「…んー、質問は一つと仰っしゃりませんでした?」
「…ぅ」
「ともかく、今から私のもっている武具とアイテムを渡しますので、それで外に出て、悪の者共をやってしまって下さい」
「な、なぁ、も、もし人を殺したら…つ、罪に問われるのか?」
「悪の者なら、大丈夫です!」
「でも、もし、いい人で…っ」
「大丈夫です!!」
「あーー」
「大丈夫です!!」
もうそれは、大声だった。
クラスのビビリ、田中は、そこで意気消沈した。
「…では、武具とアイテムを渡します。魔法のことは己で学んで身につけてください。あと、外は安全を100確保できるわけではありません。優秀でない者は……」
女神は震える田中を見下す。
「知りません。あと、あなた方にはいつでもどこにいるか分かるように一人一人魔法をかけていきますので、並んでください…」
…ぞろぞろと女神に列が作られる。
「静かなやつ多いなー」
「ん?」
俺に話しかけるのは
「なぁ、やっぱり人を数えてんだけど生徒しかいねぇみてぇだ」
「マジか」
「マジだ」
んー。面倒なことになった。
大人が一人いれば多少はマジだったのだろうが。
ここにいるのは社会に出たこともないような餓鬼たち。
「…とにかく、女神の列に並ぶか?」
「ん…」
?
並んでない奴らがいるが。
アイツらはあれか。ちょっと特殊な奴らだからか。
「浅葱…
確か親が金持ちか何かだったな。
手に入らないものはなんたらかんたら。
一体いつの時代を生きているのやら。
「最上圭一」
スポーツ万能。多分身体能力、フィジカルは誰よりも高い。
「橋口京子」
最優秀生徒。
賢い。
頭が切れる。
というか冷静。
なんていうか、頭脳戦とかは絶対に敵わない印象。
あと美人。
「
イケメン。女にやたらとモテる。あとかなりサイコパスな性格をしている。
あとかなり、いきり散らかしている。
とはいえ、何でもできる器用貧乏系だが。
オールラウンダーとも言える。
「んー、あなたは大体ランクをつけるとしたらAくらいね。はい、これとこれ」
何やら強さに合わせて武具とアイテムをもらっているのか。
よし、俺も並びますか。
俺の名前は、宮田慎吾。
まぁ、しがない男子高校生だ。
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