第6話
「住民の避難か…ならワシにまかせてくれんか?」
「ん?」
「大丈夫ですか?」
「まぁ、な…ワシにどれくらいの伝手があると思っとる…それにワシは国王じゃったぞ」
「そーいえば」
「そうですね」
息があったな。
「…ふん」
「ま、とにかくだ。戦力は俺の方で何とかする。アロヴァは…」
「バレないようにすればいい…ですよね」
「あぁ。幸いこの国の人口はそこまでだ。それに隣国、ラージ・アディアとは仲がいい。そこに逃げ込めば大丈夫だろう」
「そりゃ大丈夫じゃ。ラージの現国王とワシは超仲良しじゃからな」
「…それは僥倖だな…で、恐らく国は滅んで難民大量発生しちまうんだが…」
「え?闇をどうにかすればいいんじゃないですの?」
「方法は無くはないんだが…それだったらまたイチから国を作った方がはやいかもしれん」
国に現れるであろう、闇。
それを取り去ることは極めて難しいのだ。
今後は国に残り続けることになるだろうが。
「えぇ!」
「闇を消すのはそれくらい難易度が高い…ま、とにかく」
俺は町の方へ目をやる。
「住民の避難が最優先だ…」
◇
「…ってことだ。協力してくれないか?」
「…はぁ?アンタ本気でいってんの?
「…そんなことは分かっている。リ・アルペ」
「…何急にフルネームで呼び出して…きもいんだけど」
ふむ。どうだろうか。
「お前には感謝している。いつも付き合ってもらって悪いと思っているよ…」
褒めちぎってやらないと。
「…は、はぁ!?な、何アンタ…急に…バカじゃないの?…」
「…アルペ…お前の力が必要なんだよ…」
「…え、あ、う」
キタキタ。
この傾向を利用する。
「…頼む…」
アルペに顔を近づける。
「ちょ、ま…わ、わかったから…!」
若干顔を赤らめるアルペ。
リ・アルペ。
俺の知る
見た目は流石はエルフ、美麗と言ったようだ。
別に肌は褐色ではない。
かと言って純白でもないが。
顔はそれなりに整っているが。
今回、
魔法使いのほぼ頂点。
魔獣、デスベルを一撃で仕留める程だ。
その彼女の中で最も最強たる所以の技は、多くが、
じわじわと蝕み、相手を殺すようなものが多い。
「そうだな。よし」
「?」
「今回は大規模戦になる…もっと人を呼ぶ…その中でアルペ、お前は大事な要だからな…頼む…」
「ま、任されたわ…」
よし。
押し切った。
◇
「…と言う事だ。お前らにも協力してもらうぞ」
最高位騎士、六人に対して言う。
エーデルガンド筆頭。
他5人。
「…えぇ~、ブラッドさん一人で何とかなるんじゃないすか~?」
「ばかやろう。そうやって慢心すると神族にはすぐ負けるぞ」
「…へぇ~」
「…ま、俺はいいがな。というより、俺が前行ったデスベルの森…もう死んでしまったか…?」
デレウスが言う。
「あぁ、流石に死んでしまったようだ。まぁ、想定内だが」
森が死ぬ、とは。
そんな事ありえない、と思うかもしれないが、森や海など自然の場所は、マナの量などによって、エネルギーが枯渇し、土地が死ぬことも少なくない。
故に、森が死ぬ。
「良いか?最高位騎士たち…」
「ふむ、デレウスがいいと言うなら我々も良いが」
デレウスの方を向く。
「もちろん良いぞ」
「…よし」
人員集めはあと少しか。
◇
多少日数が経った。
およそ、あと7日でここに
まぁこれも、サリヴァから聞いただけの情報で、嘘か真かは全くわからないのだが。
少なくとも――
「…」
街には人っ子一人の気配はない。
店は全て施錠してあり、家々全てに施錠が施されている。
みな、隣国へ避難したようだ。
「流石に元国王…」
やるな。
更には、これを悟らせないようにしたアロヴァの功績も大きい。
…何故神族たちにバレていないと断言出来るのか。
神族達は、非常にせっかちで、それでいて、
そういった習性のようなものがある。
故に、大丈夫。
バレていればとっくに戦闘が始まっている。
「さて、準備を着々と進めている、か…」
街を歩く。
「ん?」
「お、ブラッドか」
最高位騎士、エーデルガンド。
最高位騎士とは。
国家の中でも、限りなく優秀とされる騎士の集まりである。
最低条件として、まず術が使えること、これが入る。
エリート中のエリート。
それが、最高位騎士。
騎士の実力はもちろん、魔法や術を使用できて、なおかつ知識も豊富。
そういうやからだ。
最高位騎士と言うのは。
「とはいえ、現国王を裏切るようでなんとも言えない気分になりますがね」
「…サリヴァは気づいていないな」
「ええ。全く。それに、毎晩、
遠くにいても会話が出来る石。
解明は進んでいるが、それが何から出来ているかさえ分かっていない。
特殊文明機器というものの一つだ。
「…あぁ、俺もその内容は毎晩聞いているからな」
「…」
デレウスは空を見上げる。
「…曇りですね」
曇天だった。
「…雨、降るかもな」
「…」
デレウスは呑気なやつで、案外明るいやつなのだが。
戦の時はそうでもないようだ。
「この一週間後…神と戦うなんて…嘘のようだ」
「…まぁ、俺も初めてだ…お互い頑張ろう」
「ええ」
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