第4話

俺の名前はブラッド。

しがない旅人だ。


どこで生まれたかは覚えていない。

誰に育てられたかは覚えている。


何をしてきたかは覚えている。


そして、何をすべきかも覚えている。


「悲願が…達成されるのか…」


_________________


俺の悲願は、母の蘇生。


かつて、母は俺を守りながら、熾天使王セラフィムキング最上位暗黒騎士ダークナイト、魔王神殺しイニシアティブ、精霊王世界樹の実ワールドシード


人間側で言えば、勇者ディア=グランデル。

当時世界最高峰の魔法使い、デオ=グランド。

最強の傭兵と呼び名が高かった、最終兵器、SSSトリプルエス


神族側で言えば、

神の中でも全能に限りなく近い、善神アラブ


女神の中で最も癒しに特化した女神、治神ヒーラ


破壊の神、破神デウス


それら、あらゆる種族から総攻撃を受けてなお、彼女は奮闘し、善戦した。


苦戦の苦の字も顔に出さず、俺を守るため、必死に戦っていた。


何故か覚えているのは、その時母は笑顔だったということ。


そして、輝いていた。


でも、俺のせいで母は…


『あ、ぅ、ぁっ』


…血にまみれた己の体を見る。

その体は小さく、そして、側には女性が横たわっていた。


それは、紛れもない母でありー


________________


「…ッッは!?」


…夢か。


嫌なものを見せるな。


その記憶を、消し去ることはない、今も俺の肉体を動かし続ける動力となっているのだから、仕方あるまい。


憎悪。怨嗟。

俺はまだ、知らない。


何故母親があれだけの者たちから狙われていたのか。


だから、それを解明するために、まずは手当り次第、問い詰めていかねばなるまい。


まずは、熾天使王セラフィムキングから。


「くく…」


楽しみだ。あぁ。


どれだけ、この復讐を待ち望んだことか。


無力だった頃の俺とは違う。


準備は整っている。


「母親殺しの…復讐だ…ッ!」


俺の母を殺したやつを。


俺が殺す。



その街の名は、ディーア。

俺が育った街である。


街のものは俺に話しかけることはない。

何故なら、街のやつらは俺がどういった者たちとつながっているか、知っているから。


その殆どが、犯罪者。


或いは、人外。


人外か。ふふ。


まぁ、一部の人外は、人よりも、のだがな。


しかし、こう見るとやはりこの街はやはり発展しずらいかもしれない。


資本主義国家である我が国ラディアだが、しかし、他国に比べて魔術技術、及び魔導技術、機械技術が劣っている。


というのも、この国の近くに迷宮ダンジョン空に続く天の道ホーリーロードならず海の7秘宝アトランティス地に眠る火山の山ビッグ・マウンテン異界門アナザーワールド滝の下の異空間アナザーフォール…等の金になる天然の秘宝たちが無いからだ。


故に、資金が無い。

資金不足。


あとそれから、この国の国王が変わったのが大きいな。


まぁ、変わったのは俺がガキの頃だが、しかしそれでも世情がガラリと変わったのはなんとなく分かった。


今まで満足に食べられていた食料は食べられなくなり、今まで皆が笑顔であったはずが、重い労働に課され、重税をとられる。


それでいて、国からは何の支援もない。


「一体、国王は何をしているんだか」


まぁ、俺は先代国王、そして、元お姫様となら仲が(それなりに)良いが。


ま、今日はそれを聞きに行くわけだが。



「ーー魔法、使用」



城の城門付近で、使用。


使うのは、隠密ハイド、それから影化シャドウ


魔法。


あぁ、まぁ、そんなものについては説明するまでもないか。


難易度Lv2,隠密。

難易度Lv4,影化。


それらを併用させた、正式名、存在準消滅エセエグシス


「…さて、入りますか」


飛行フライを使用。


そして、城の窓から入る。


まぁ本来なら二重結界が貼られているが。


どちらも看破出来る。


「…さてと、では」


眼の前にいるある女性の前で、紳士のように、ハットを被り、


範囲消音レンジサイレント


魔法解除マジックリリース


「キャァっ!!…」


「…ふふ」


「…って…も、もしかして…」


「どうも」


ハットをくい、と指で押し上げる。


「ぶ、ぶ、ブラッドちゃん!」


歓喜の声を上げるのは、この国の元姫、アロヴァ。

ラーディール・アロヴァ。


俺の母親と仲が良かったんだとか。


「…で、今日は何なの、えっもしかして…わ、私をさらいに来たの…!きゃー!」


「…はぁ…あなたが昔はお淑やかだったって聞いても信じられないんだよなぁ」


「なんでよー!」


「…ふ、まぁ、とにかく、今日は聞きたいことがあってね…ま、少し話をしつついこうじゃないか」


「…あぁ、お父様呼ぶ?」


「いや。まだその必要は無いよ」


「…そう。というか、いつものように、存在準消滅エセエグシスと、範囲消音レンジサイレントを使ってきたのね」


「…まぁ、ね。」


「…そう。大きくなったわね、そういえば」


「…ん」


「見ない間にお母さんそっくりよー、貴方はー」


「…そうかい?」


「えぇ」


「…」


幸せそうにするアロヴァを見て、なんて言うか、嫌な気持ちになった。


「…アロヴァおばさん」


「おばっ」


「…あのね」


俺の真剣な声を聞いたからか、アロヴァも自然と真剣な表情になる。


「この国があと一月で滅ぶって言ったら、信じるかい?」


「ええ」


…え?


「…ん?」


「…?」


「えっと。今なんて言ったか…」


「えぇ。正確にはあと二十四日後ね」


「…あ、あぁ…あってる、けど…」


あってるんだが。


「え?なんで知ってるんだ?」


「うーんそうねぇ…ま、それについて話し合おうかしら?」


「あぁ…俺もちょうどそう思っていたんだ」


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