第12話 生き延びて、それから。
自動追体験は終わり、何をするにも自分の意思で動かなければならなくなった。
JK。
ぴちぴちのぱっつぱつ。
良い。
イヤイヤ待て待て。
そうじゃない。
そうじゃないぞ、俺。
嫁入り前の女子の身体を好き勝手してよいワケがない。
現実的な問題としての最重要項目は。
ド素人の俺が『ふにぷにおもち』のデジタルイラストの仕事を引き継ぐ形になったコトだ。
無理だ。
絶対に無理。
若者的には無理ゲーっていうのか?
こんな時、web小説ならチート能力をゲットして、あっという間に世界的に有名なデジタルイラストレーターになったりするんだろうけれど。
見た目はJKでも、中身はおっさんのままだ。
デジタルイラストなんてずぶずぶのド素人。
どうにもならん。
なりませんよ、コレばっかりは。
ふにぷにおもちの作品をド素人の俺がいじくっていいワケがない。
そもそも、何をどうすればあんなステキなイラストが描けるのかわからない。
タカノトモミの追体験はしたものの、それが身に付いたワケではないからな。
◇
結局、イラストの締め切りには間に合わず、代わりに他の絵師のイラストが採用される流れになりそうだ。
すまんな、タカノトモミよ。
俺にはどうにも出来なかったよ。
これは。
何としてでも、俺と、タカノトモミ本人と連絡を取らなければ。
◇
なんやかんやでしばらく学校は休む事となった。
数日間、実家での自宅待機。
スマホには友達からの連絡がちょこちょこ入ってくる。
トモミの母が仕事を休んで、俺の、トモミの世話をあれやこれやとしてくれた。
朗らかな優しい人だ。
母親の理想像と言ってもいい。
「あのマンションに戻りたくなければ、いつでも家に帰って来ていいのよ?」
いや、そう言われても。
中身は赤の他人なのですよ、タカノトモミのお母さん。
挙動が不審過ぎて怪しまれないかとヒヤヒヤしたが、精神的ショックを受けているとでも思ってくれたのか、何も言わずにそっとしておいてくれた。
良い人だ。うん。
トモミの母が言うように、確かにあんな事件があったマンションには戻りたくない。
ここにいれば、俺が、タカノトモミが訪ねて来る可能性だってゼロじゃない。
だが。
俺の身体に入ってるタカノトモミと会うには、あの場所が必要不可欠なんじゃないだろうか。
全ては、あそこから始まったのだから。
俺はマンションに戻る事にした。
◇
また白い手紙が届いていた。
差出人の名は無いが、たぶん『あのお方』だ。
『 毎度。
大変申し訳ありませんが、多忙の為、向こう三ヶ月はこのインシデントに対する処置が遅れるものと思われます。
お二人にはご迷惑をおかけいたしますが、しばらくの間ご辛抱願います。
その間、お二人の接触は電話、SNS、肉体的な接触全てが可能となります事をお伝えしておきます。
追伸
お二人の性的接触も可能ですが、ほどほどにしましょう。
特に妊娠は厳禁です。
世界が崩壊するとまではいきませんが、二度と御自分のお身体に戻れなくなります。
かしこ 』
おいちょっと待て。
三ヶ月もこの状態を続けろと?
……呆れてモノも言えんな。
説明不足にも程があるってもんだ。
どれだけ事務処理がヘタクソなんだ。
新人がミスでもしたのか?
なんだよ、毎度、かしこ、って。
文脈おかしいだろ。
……性的接触って、俺は俺に抱かれるって事か?
妊娠は厳禁……俺が妊娠?
そんなコトあるか?
フラグ臭しかしないんだが。
◇
トモミと連絡が取れない。
さすがに自分の携帯電話番号くらいは覚えている。
だが。
いつ電話をかけても、電波の届かない所にいるか電源を切っている状態だ。
SNSを使っても既読にならない。
ケータイを失くしたか、無視しているか。
さすがに無視なんて事はない筈だ。
タカノトモミ本人も、この状況に困ってるだろうからな。
ううむ。どうしたものか。
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