第3話 ふにぷにおもち
幽体となった俺がふわふわと宙を漂う。
ふと横を見ると女の子。セーラー服のJKだ。
ああ、俺にブチ当たった娘か。
自分の死体を見て硬直してるよ。まあそうだわな。
アタマぐっちゃぐちゃだし。
「あの、キミは……?」
「ごっ、ごめんなさいっ! もしかして私っ、巻き込んじゃったんですかっ?」
「もしかしなくても、そうなんだけどね」
「どっ、どうしようっ!? 私っ、どうしたらいいですかっ?」
俺に訊くなJKよ。
どうもこうもあるものか。
二人とも死んでしまったからな。
ずいぶんと混乱してるのは、俺を巻き込んでしまった罪悪感からくるものかな?
「これじゃあ、明日の締め切りに間に合わない!」
おいJK。
おっさんの死より、締め切りとやらの方が大事なのか?
なかなかに我が強いみたいだな。
「締め切りって、何の締め切りですか?」
「あっ……あの、私はイラストレーターなんです」
「イラストレーター? 女子高生が?」
「女子高生が、って差別的ですね。これでも私、ちょっとは有名なんですよ?」
ほう。
自分で『有名』と言うとはな。
どやるなよコムスメ。
十代特有の『どやオーラ』がダダ漏れだぞ。
まあとりあえず訊いてやるか。
「そうですか……じゃあ、あなたのイラストレーター名をお聞かせ願えますか?」
ちょっとイヤミったらしい言い回しに答えないかとも思ったが、俺の問いにJKは恥ずかしそうにぽそっと呟いた。
「イラストレーターとしては、えっと……『ふにぷにおもち』って言うんですけど……」
「へえ。『ふにぷにおもち』さんですか」
変な名前だが、聞いたコトがあるような……?
ふに……ぷに……おもち。
なにっ!? 『ふにぷにおもち』!?
web神絵師の一人じゃないかっ?
ふざけた名前だけど、そのイラストはめちゃめちゃ美麗で、見る者の心を惹き付けてやまないと大絶賛の!
いつだったか地上波で紹介されてたぞ!?
三十代の俺が知ってるくらいだから、十代、二十代の若者の間では、特にアニメやマンガが好きな者なら、その認知度は相当なものだろう。
こんな年端もいかない女の子だったのか……
こんな出会いもあるんだな。
まあ、なんというか。
死んでしまったけどな。
「あの、スミマセンでした……オジサンを巻き込んじゃって」
オジサンて言うな。
オジサンだけど。
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