第4話 事件か事故か?

 ここはブチ切れてもいい場面なのかもしれないが、そんな怒りの感情は湧かなかった。


 俺の人生は終わりを迎えた。

 ただそれだけだ。


 何も無い人生が終わった。

 ただそれだけだ。



 若さとは、若いってだけでエネルギーに満ち溢れているものだ。

 十代、二十代なんて特にそうだ。


 三十代の俺だって、まだまだ諦めちゃあいなかった。


 何度も落選して打ちのめされ、なんとか復活しては落選しの繰り返しに、モチベーションの著しい低下ってヤツに見舞われるコトだって少なくない。


 現実は厳しいと肌身に染みて解る年齢になってしまったが、俺は諦めない。


 まだまだだ。

 そう思っていた矢先のとばっちり。

 これは、もうどうにも出来んわな。



 JKは黙ったまま二つの死体を見つめていたが、ふいにぽそっと呟いた。


「……ぐちゃぐちゃの死体って初めて見たけど……なんか……キレイ……」


 マジですかJKよ。

 天才イラストレーターの感性って、そーゆーカンジなのかね。



「あのう……訊いてもいいですかね?」


 訊いてもいいですか? 

 なんて訊き方もよくよく考えるとおかしな言葉だ。


 お訊ねしてもよろしいでしょうか? ってのが正解なのかも知れないが、それでは年下のJKにへりくだりすぎではないか?


 それにしても我ながらキモい喋り方だ。

 見ろ。

 JKがドン引きだ。


「はい……なんですか?」


 JKは俺を巻き込んでしまった事を気にしているのか、俺がキモいからなのか、伏し目がちに応えた。

 おそらく後者だろうよ。


「どうして、その……自殺を?」


「自殺じゃありません!

 わたしっ……突き落とされたんです!」



 なんだって?

 それじゃあ、殺人事件じゃないか!


 だが俺はこの娘の言う事を鵜呑みにはしない。


 突き落とされたとは言うが、俺はそれを見ていないからな。

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