第2話 幽体離脱

 ふと気が付くと。


 俺は俺を見下ろしてる。

 これが幽体離脱ってヤツなのか……?


 俺は俺の死体を見て愕然とした。

 誰だよこのおっさん。


 うっすらハゲたボサボサなアタマ、だっせえコート。

 スーツなんてヨレヨレだ。

 そのネクタイは何年物だ?


 俺って、こんなだったのか……


 だが、気持ちだけは若かった。

 若造なんかにゃ負けねえぞ、と。

 ジジイ達に比べれば俺だって若造だが。


 俺の隣にあられもない格好で倒れてるのは……女子高生か?

 パンツ丸見えだぞ。

 黒のセーラー服。コスプレってワケじゃなさそうだ。

 あー……

 カワイイ顔が血みどろだ。


 手足があらぬ方向を向いて骨が飛び出し、頭蓋骨が割れて脳ミソが辺りに飛び散ってる。

 良かったな、カワイイ顔がぐちゃぐちゃにならなくて。

 アタマはぐちゃぐちゃだけどな。


 飛び散った脳ミソはどれが俺のでどれがJKのかわからないくらいにグチョグチョだ。

 真っ赤なウニとかピンク色のタラコとかが散乱してるみたいで気持ち悪い。


 文字通りの血の海だ。


 自殺のとばっちりで死んでしまうとは、俺もつくづく運がないな。


 でもな。

 こんなカワイイJKに頭カチ割られて死ぬなんてなかなかレアな死に方だな。

 トラックに轢かれてとかよりマシだ。


 三十年間と少しを振り返ってみても、いい人生だったとは言い難い。


 一度だけだが恋愛を経験した。

 昼夜を忘れて何度も抱き合った事もある。


 結婚も考えたがフラれた。

 今思えば無理もない。

 俺は唯我独尊タイプみたいだからな。


 何も無い人生。何も無い自分。


 それは俺の創作物と同じ。


 創作すれども、誰の目にも触れられるコトが無ければそれは無いのと同じだ。


 ただ消え去るのみ。



 考えずともわかる事だが、脚光を浴びる者ってのはほんの一握りだ。

 多くの創作者が灰塵と化して風に吹かれて消えていく。


 広大な砂丘の中の一粒の砂金。

 それが成功者なのだろうよ。


 俺も砂金の一粒になってやろうじゃないか。

 そう考えてしまったのが運の尽きだったようだ。

 

 空から落ちてきたJKにブチ当たられて死ぬなんて、これはこれでなかなか無いコトだろう。


 そう思えば。

 良い人生の終わり方だったのかな?

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