第275話 本心

 部屋に残された二人の雰囲気も最悪だった。

 斗真は自分のしてしまった残酷さに恐怖を覚え、瑠衣は斗真の行動に驚きを隠し切れていない。


「斗真、何であんな事言ったの?」

「分からない」

「どういう事?」

「怒ってなんてないんだよ……もうとっくに許してるんだよ……でも、自分の素直な気持ちを伝えたら……アレが……」


 斗真ですら、自分の本心を理解していない。

 表面的な気持ちは分かっていても、心の奥底にある、自分の本心は理解出来てない……だから、あの言葉が口から出てしまったんだと思う。


「謝らないと……瑠愛に」

「……」

 斗真はゆっくりとベッドから起き上がった。

 体はまだ言う事を聞かない、重く他人の体の様だ。


(早くしないと!!)

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