第222話 運命の人

 恐ろしい言葉だった。


 まず、普通の生活では絶対に言われない言葉であり、現実味を感じない言葉だ。


 遊びや冗談半分で言われるのとは訳が違う、この言葉は限定的なシュチュエーションのみ現実味を持ち、問われた本人のみが強い恐怖を感じる、そんな威力を持っていた。


「」

 言葉が出ない。


 斗真は震え、先程までの威勢はなくなり、瞳には微かに涙が浮かんできていた。


 愛していた女性の見た事もない顔、一番裏切られたくなった人であり、信用していた人の──顔。


 瑠愛との思い出が頭の中を走馬灯のように駆け巡った。


「……時間切れだよ……斗真」


 冷たい声だった。


 そして、これが瑠愛から聞いた最後の言葉だ。


 グサッ!!!


 俺は恐怖で再び気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る