第157話 冷酷

「瑠愛が姿を消したって……」

「うん、家中探してもどこにも居ないの」

「そうか」


 義父は冷静だった。

 まるで瑠愛がこうなってしまうという事が最初から分かっていた様な感じで、落ち着いていて、どこか冷酷で恐ろしかった。


 が姿を消したら、取り乱し、慌てて冷静さを欠くのが普通なのではないのだろうか、もし、そこまで慌てなくても、多少は心配するはずだ。


 だが、この義父はどっちらにと当てはまらない、まるで何か、肩の荷が下りた様に思えた。


「瑠愛の事は僕に任せてなさい」

「うん……任せる!、だから、絶対に見つけて!」

「勿論だ」


 そう言って義父は寝室に入っていた。


 その後ろ姿は……父親とは思えなかった。


(あの人は何なんだ?)

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