第142話 動く

「瑠愛!」

「……」


 部屋の中で蹲っていると、外から父親の声が聞こえてきた。


 部屋は暗闇、その中でも聞こえてくる優しい声、一筋の光を放っていた。


「お父さん?」

「少し話がしたいんだ」

「話?」

「えぇ、瑠衣ちゃんが心配してたわ」

「……」


 父の声と一緒に義母の声も聞こえてくる。


「瑠衣が?」

「えぇ」


 瑠衣の名前を聞いた瞬間、瑠愛の心が締め付けられる。


(妹に心配されるなんて……情けないな、私)


 だが、それが心を動かす。

 顔は涙で酷い顔になっている。

 だが、顔を一切気にせず、酷い顔のまま部屋の扉を開けた。


「……入って」

「あぁ、邪魔させてもらうよ」

「……」

「義母さんも……」

「あ、ありがとう」


 瑠愛の部屋に両親達は入って行った。

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