第92話 ハグ

 私は瑠衣、入学式からある先輩にぞっこんの高校一年生だ。


「あ!、斗真くーん!」


 偶然、すれ違った斗真に私は抱きついき、そのまま彼の胸の頭を擦り付ける。


「る、瑠衣……人前ではやめろって」

「あれれ~斗真、照れんのか?」

「ほんとだぁ~、照れてる……てかさ、彼氏なら優しい抱き返すと気遣い出来ないの?」


 彼の後ろにいた、二人の先輩が彼をとても煽っている。


「わ、わかったよ!」

「キャ!」


 突然、斗真が私を強く抱きしめてきた。


「ほぉーやれば出来んじゃん」

「ヒューヒュー」

「お前ら……!!」


 彼は怒っていた。


 対して、私は幸せだった。


「斗真くん♡」

「る、瑠衣……」

「大好きです!」


 私は世界一の幸せ者だった────この時までは。

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