第86話 優しい

 斗真は嬉しかった。


 苦手だと思っていた、義父にお礼を言って貰えた事が。


「斗真くん……いい顔をする様になったね」

「え?」

「つい最近までとは別人の様だよ、まるで人としての皮が一つ剥けたみたいだ」


 義父は笑っていた、それにとても嬉しそうだった、その時の義父はまるで実の息子を褒めるかのように温かく、優しかった。


 本当の父親として、息子の成長を喜んでくれていた。


 それは本人が言わなくても、彼が放つ雰囲気から伝わってきた。


「ありがとうございます……

「あぁ」


 義父は更にいい顔で笑い、大きな手を頭に乗せ、優しく撫でてくる。


「次は下の皮だな」

「はい!……え?」

「ん?」


(やっぱり、この人を父親として見れねぇーわ!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る