第16話 兄妹でお風呂は恥じらいも大事


 汗をかいた二人はそのまま我が家となったお店の受付にいる琢磨とさよに断りを入れてからお風呂へと一直線で向かう。


「それでなんで一緒にいる?」


「ん~? だって待ってる時間暇だし、お互いに早く情報交換したいでしょ? それにここだと誰かの盗み聞きとかの心配も流石にないだろうしね」


「それで本音は?」


「一緒に入りたいから! これ刹那が負けた罰ゲームだから拒否権ないよ?」


「……わかった」


「素直でよろしい」


 と、タオル一枚となった刹那の隣でもぞもぞと動き、服に続き下着をなんの恥じらいもなく外していく育枝。黒のブラジャーを見た刹那はDかEカップぐらいはありそうだなと思った。それに相変わらずこうしてみると全体的に細く、綺麗な肌は潤いがある。胸もハリがありきっと触れば弾力があり揉みごたえが充分にありそうだ。一度でいいから思いっきり触ってみたい。そう思ってしまうのは男の性だと自分に言い聞かせる。


「なになに? そんなにジロジロ見て私のおっぱいが気になるの?」


「…………いんや」


 そう言ってまた一段と大きくなった胸を見た刹那は一人お風呂へと入っていく。

 それを追いかけるようにして白いタオル一枚を手に取り中へと入っていく育枝。

 さすが家とお店が一体化しているだけあって、そこそこにお金を持っている家のお風呂だと言える。二人で入っても十分に広さを感じられるだけでなく、浴槽も大人三人ぐらいまでなら問題なく入れそうな丸型とかなり大きい。


「とりあえず身体洗ってよ、刹那」


「自分で洗え」


「むぅ~、これも罰ゲームだよ」


「わかったから手を引っ張るなって」


 そのまま連れられるままシャワーの前まで来た育枝はその場で座り込む。

 ここまで来た以上しないわけにはいかないよな、と背中を見せ無防備姿の育枝を見て思った刹那はシャワーで育枝の髪を軽く濡らしてからシャンプーを手に取り頭から洗ってあげる。


「ありがとう。そのまま後ろから抱き着いてもいいよ? なんなら何がとは言わないけど鷲掴みにして揉んでみる?」


「ん? そうして欲しいのか?」


「……ば、ば、ば、ばかぁ! じょ、じょ、じょう、冗談だよ!!!」


 それから股を内股にして太ももを擦り合わせる育枝。

 刹那の返答にどうやらドキッとしてしまったらしく、急に身体が火照って熱くなってしまう。それに裸と言う事がわざわいし身体の方まで少しばかり反応してしまった。これは女の子の生理現象なので別に変なことではないのだが、この状況でもし触られでもしたら上は上で変な声が出そうだし、下は下で言い訳ができない状態になっていることがバレてしまう。

 なので――。


「か、身体は頭と背中だけでいいからね。絶対におっぱいと下は触らないでね。さ、流石にそれは、は、恥ずかしいから……いまは」


 と先手を打つことにした。本心では刹那ならと身体を許しているが、やっぱり恥ずかしいのでそこは素直になれない。だけどこれは人間だけでなく生物が子孫繁栄をしていくうえで正常な本能とも呼べる物で決して嫌らしいことではない。誰だって好きな相手には心も身体を許してしまうのだから、これはこれで何も間違っていない。だけど今日に限って普段なら「断る」の一言で終わらせる刹那が乗り気みたいな返答をしてくるからつい期待と一緒にいつも以上の羞恥心(恥じらいの限界)が来てしまったのだ。


「後ならいいの?」


 ちょっとからかってみることにした刹那。


「う、うん。まぁ、刹那が望むなら……でも雰囲気は作ってね」


 予想外の返答に返事に困った刹那はこれ以上からかう事を止める。

 でないと、どこまでこの冗談(一部本音が入った冗談)が続くかわからないからだ。

 なによりどうせ触れない物の話しを続けても無駄な期待を抱くだけ抱いて最後は溺死なんていう結果はまっぴらごめんである。


 それからは話題を別の物へと移し、育枝の背中までを洗った刹那は自分の身体も手際よく洗い、二人仲良く大きな浴槽へと浸かる。

 生き返る。

 そう思えるほどに今日半日歩いて溜まった疲労が身体から抜けていくような感覚に気分がよくなる刹那と育枝。


「「ふぅ~、気持ちいいー」」


 それに浴槽が大きいだけあって足を延ばしても全然余裕のスペースがあり、一番大事とも言える湯加減は最高に良かった。


「ちなみにそれは突っ込んだ方がいい? お風呂が気持ちいいからそうなってるのか、私に欲情したからそうなってるのかって」


 ニコニコしながら育枝が隣にやって来たかと思えば意味不明な事を言ってきた。

 首を傾けながら確認すると育枝の視線の先が刹那の下半身にあることに気付いた。

 これは、マズイ。

 そう思った刹那だったが時すでに遅し。

 油断していた為に、タオルが膨れ上がっていることに全然気付かなかった。

 まさか息子がここでやる気を出してしまうとはとんだ誤算。


「…………」


 この状況をどう切り抜けるかを考えていると、


「触って楽にしてあげようか? どちらにしてもそのままじゃ辛いでしょ?」


 なんて冗談半分で言いながら手を伸ばし本当に触ろうとする育枝の手をすかさず掴み止める刹那。


「暴発する可能性があるからそのままで……お願いします」


「つまりはそうゆうこと?」


 コクりと負けを認める刹那。

 今もタオルを巻く所か成長し発達した身体を見せつけるようにして全裸の育枝にこれ以上の言い訳はできないし勝てる勝ち目がないことは明白である。これも人間の生理現象であり仕方がないこと。そもそも刹那の頭の中は実の妹ではなく義理の妹であると正しく育枝の存在を認識しているため、こう言う展開には幾ら義理の兄妹とは言え弱いのだ。


「えへへ~、なら私の勝ちってことで頭撫でてよ」


 隣に座った育枝の頭を無心で撫でて敗北を認める。

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