第15話 次の手がかりは女子高生
暇を得た二人は先ほどの『ダイスゲーム』をしてみて色々と感じた事や思った事を話し合いたかったが、それは夜でもできると思い今は街中に来ていた。
「それにしても情報収集からってゲームの中かここは……」
いまいちやる気が出ない刹那。
「いいじゃん。たまにはこうして二、三時間二人きり手を繋いで歩くのも新鮮でさ」
この世界では知り合いに合う事もないので、何も恥ずかしがることはない。
それを利用しない手はないと、繋いだ手を大きく振り子のように動かしながら歩く育枝。
その光景は最早仲の良い恋人同士にしか見えないぐらいに熱い。
これは気持ちの問題でなく、外気温の関係もあり思い込みではない。
そんなこんなで街中を歩き回った物の大した成果がまだ上げられない二人は息抜きがてらに目の前にあった出店で飲み物を二つ買い、近くのベンチに腰を下ろす事にする。
「それにしてもたっくぅーがお小遣いくれて良かったね」
「そうだな。俺にはお店救ったんだから、お小遣いくれと我儘を言ってレジにあるお金を物欲しそうに見ていた小悪魔が印象的だったよ。その育枝を見たさよがマスターにお願いしてお小遣いとして三万くれたんだっけ?」
「解説ご苦労ー! でもデート代はあって損する事はないから」
刹那達のいた世界と物価はあまり変わらない世界で最初から三万はかなりの大金。これだけあれば安い魔道具は買う事が出来るのだが、やはり魔法が使えない二人には魔道具(ダイスや魔力を必要としたアバターの装飾品)は宝の持ち腐れになりそうだったので手は出さなかった。
「その証拠にさ、こうして一つとは言え相手の魔法を受けた時に魔力なしでプレイヤーの任意で発動可能な装飾品買えたし刹那としても私とのデートは悪くないでしょ?」
「う、うん」
「でも肝心なこの世界についての情報がサッパリなのは問題だよね」
「そうだな。その割には呑気に俺達休んでるけど」
ジュースの紙パックから出たストローを使いじゅるじゅると飲んで喉の渇きを癒していく刹那と育枝。育枝は離れたくないのか刹那に身体を預け、とてもリラックスしている。その為、刹那は少し熱苦しく感じていたが、育枝の笑みを崩すのは可哀想だと思い我慢していた。
「いいの、いいの。これは私が甘えられる数少ない癒しの時間だから」
「そっかぁ。なら俺は何も言わんが具体的にこの後どうするか予定はあるのか?」
「ん~とね、ないよ!」
言い切る育枝に刹那は小さくため息をついてしまう。
一緒にいるのは全然構わないのだが、この暑い中目的地もなく延々と歩き続けるのは流石に疲れてきたからだ。
この後どうするか刹那が悩んでいると、近くから女子高生の話し声が聞こえてきた。
「来週行われる魔道具適性検査嫌だよー」
「なんでそんなに嫌なの?」
「だって魔道具適性検査だよ? あれ評価が低いと補習なんだのせんこう達がうるさいじゃん」
「でもあれ、普通にしていれば問題なくある程度の点数取れるよ?」
「違うんだよ。私は魔力が少ないから使える魔法が少ないの。だからなんて言うか……魔道具適性が周りの人達と比べて低いんだよ」
初めて聞く単語に興味がそそられる兄妹。
「てかなんでアギル王になってから魔法の授業が一気に増えるの……マジさいあくなんですけど……」
ん? ここで少し疑問を覚える刹那だったが、
「それなら街の中央にあるセントラル大図書館に行って魔道具適性のコツについて学習したらいいんじゃないかな? あそこなら沢山の本があるし調べ物やそう言った魔力が少ない人達の為の本とかも沢山あるし」
「なら美玖付いてきてくれる?」
「えー、私も?」
「うん。一人は寂しいから」
「わかった。なら明日の放課後一緒に行こうね」
「わーい! 美玖大好きだよ!!!」
「ちょっと、恥ずかしいからこんな所で私に男泣きしないでよ、ゆーちゃん」
「えへへ~」
そんな楽しそうな女子高生同士の会話を聞いた二人はお互いを見て頷き合う。
この後の目的地が偶然にも近くにいた女子高生たちによって解決されたからだ。
これは運がいいと念の為声に出して意思疎通が出来ていたかを確認する刹那。
「明日にでもそのセントラル大図書館とか言うところに行ってみるか?」
「うん」
「とりあえず今日はもう遅いし一旦帰るでいいか?」
「そうだね。私達もあの子達に負けないぐらい仲良しだから手を握って帰ろうよ」
刹那の手を取り、自分の指を絡める育枝。
それから二人は街を歩き来た道を帰っていく。
その時の育枝の頬は少し熱を帯びていたが、これは夕日の光のせいなのかはたまた違う理由のせいなのかは本人にしかわからない。
だけど幸せそうな顔をしていた事から後者が有力だと言えよう。
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