計画殺人

「マシンを壊して済む問題じゃないんだろ? というか、その選択肢は試したんだろ?」

萌は無言で頷く。原因を破壊したところで分岐は修復できない。別の世界線に機械が無数に在る。

「日一教授はある意味、背水の陣を敷いたんだ。1億1千万を破局噴火から救うために予防的な無差別殺人を思いついた。遺族も本人も予定調和だと知らぬまま不幸を宿命として受け入れる」

俺がその一人だった。芽里はだと自分を説得し続けて来た。

「その張本人に遇えますか?」

言葉のナイフがまた刺さる。彼を蘇生する方法はない事も無い。

ステータスウインドウで鬼籍を書き換えて日一本人の死亡を取り消す。

しかし彼が存命中であるということは破局噴火の寸前かただなかにあるという事だ。

切羽詰まった状況でなければ教授の翻意を促すことは難しい。

そして俺達は一億一千万を危険に晒すことになる。


「どの面をさげろと? それは奴の台詞だ。噴火を知りながら警告もしなかった」

俺は拳を固めた。

「どうするの? 彼に会うために再び一億一千万を災禍に陥れて、方法を聞き、状況をリセットする。理由はどうあれ貴方も一度はのよ」

俺は少し考えて答えた。

「あんたのお父さんが好きなのかい?」

萌はキョトンとした。「それは、どういう?」

俺はじっと睨んだ。

「好き嫌いを聞いている」

「…愛情とまで言えるかどうか自信はない…けど、生き返らせるなんて辛い思いをまで問題解決に取り組んでる」

「父親を罪人にしたくないからか?」

「そう」

萌はきっぱりと言った。


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