令和新山と名付ける

「出来すぎた因縁だな。俺は娘を失った。お前は姉だ。そして二人とも何故か鉱山事故に関わってる」

やけくそ気味に言うと苦笑が漏れた。意外だ。「私が虎視眈々と復讐を狙っているとかありもしない真相を暴くとか使命感が強まったとか姉の生存を信じているとか言わないでくださいよ」

俺もつられて笑った。「それじゃサスペンスドラマだ」

「じゃあ、何だと思います。倉田さんも我慢せずにぶっちゃけてくださいよ」

見かけによらず人間的な奴だ。「ごくごく普通の理由だ。この仕事が好きなんだ」

真実は単純明快だ。俺はこの男を気に入った。日一が不思議そうな顔をしている。

男同士の友情なんて乙女心と同じぐらい複雑怪奇だ。

「立場が一致したところで本題に入りましょう。どうします?」

言うまでもなく俺はステータスウインドウに「火山の処置」と打ち込んだ。ウィザードといくつか問答してプロジェクトのひな型がサンプル表示された。新規作成と保存を選ぶと「この火山に名前を付けてください」と来やがった。

「そうか。あの火山、では連絡や会議がやりづらいな」

俺は思い付きで令和新山と名付けた。歴史的瞬間は何とも味気ないものだ。「面倒くさいから俺達の内々では火山でいいぞ」

「で、次はどうします?」

樟葉は狐のような目つきで催促する。

「そうだな。駅前から部外者を退去させよう」

日一が東京の【SG】に連絡する。しばらくステータスウインドウを叩いていたがピタリと指が停まった。

「どうした?」

「松前町が封鎖されたようです。外に出られません」

どういうことだ。


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