ミチト・スティエットの今後。(第554話~第555話+あとがき)

第554話 ミチトに決まった職業。

始まった宴は大いに賑わう。

賑わったがセルースが「こんなに宴会ばっかやって平気かよ?」と言うとヨシがミチトの稼ぎだから問題ない。オーバーフロー時にミチトが集めたラージポットの魔物達を売ったお金だと説明すると心置きなく飲めると喜ぶ。トウテの全員が感謝しながらご馳走に手を伸ばす。


一通り食べて皆が酔い潰れる前に報告が有ると言う事で皆が静かになって一段高く用意された台を見る。

そこに上がったロキが発表があると説明をする。


「なんですかねリナさん?」

「これがマテとの結婚報告とかなら驚きだよね」

2人がひそひそと話ながら盛り上がると周りから睨まれてしまい小さくなる。


ロキが「まずはラージポットの事です」と言って説明を始めた。

ラージポットの管理を任されたのが金色で、金色の補佐がヨシ、そしてヨシの補佐をイイーヨの親のイイーンヤ・ドデモが行うことになった。


「え?ヨシさんと金色?」

ミチトの驚きにロキが「金色さんが魔物の管理をしてくれていてラージポットから溢れなくなったのでゆっくりと上に街を作ります。そしてその管理をアプラクサス殿の推薦でイイーヨ君のお父上、イイーンヤさんが行ってくれる事になりました」と言う。


ミチトが何かを言う前にヨシが「なので我々はディヴァントに居ながら問題が起きたときだけイイーンヤ氏から連絡が来て金色様に対処して貰います」と説明をすると金色も「真式様、これらも全て真式様のお力になると聞きましたので尽力します。お任せください」と言った。


ここに関係のないはずの自分の名が出てきたミチトは慌てて「え?俺?何それ?金色?」と言うのだがそんな慌てるミチトをスルーしてロキがロウアンとモバテを台に呼ぶ。


ロキが「モバテ様、お願いします」と言うと「ああ」と返事をしたモバテはロウアンを見て「ロウアン・ディヴァント、貴殿をダンジョン管理の任に就ける」と言う。


ロウアンは恭しく頭を下げて「拝命いたします」と言った。

突然の事にミチトは「え…あ…ロウアンさん?」と聞く。


ロウアンは「カスケードの不在を埋められる者がいないから仕方ないのだよ」と言って貴い者の顔で笑いかけてくる。


自分がカスケードをダンジョンにしてしまったからだと思ってミチトが申し訳なさそうにするとローサが横で「カスケードだって昔は有能でも今はダメだったことが判明したからちょうど良かったの。今明らかにならなかったら大惨事だったわ」と言う。


そこに重ねるようにアプラクサスが「カスケードに任せていて大丈夫と言うのを信じていたのですが…」と申し訳なさそうに言うとシックが「カスケードの奴、リミール派の領地に生まれたダンジョンを見事に無視してくれていたよ」と言う。


まさかの出来事に間の抜けた顔で「はぁ?」と言うミチト。


「8年前ちょっと前に生まれた塔型ダンジョン、スカイタワーなのだがカスケードは攻略順調と言いながらほぼ手付かずだったんだ。有名な果物の産地でオーバーフローして壊滅すれば良いとか思ったんだろうね」

そう言って困った顔をするシック。

アプラクサスが「だからモバテ様達と相談をしてダンジョン管理を無派閥のロウアンに任せる事にしたんですよ」と言った。

この超展開がありえないミチトは「えぇぇぇぇ…」と不満を口にする。


ロウアンはミチトが話を聞くのを待っていたのだろう。

横に立つロキに「ロキ、ダンジョン管理の仕事をお前に任せる。結果を出せ」と言うとロキも「はい。結果を出してみます」と言って頷く。

それを見てモバテとロウアンは台を降りて元の位置に戻る。


ロキはミチトを見て「ダンジョン管理を任された私は後日王都に住みます」と言う。

寝耳に水のミチトは「え?ロキさん?トウテに…」と聞くと最後まで言う前に「住めません」と答えるロキ。


「領地でも仕事ができるようになるまでは王都で過ごして地盤固め等を行います」

「そんな…、せっかくトウテまで来れたのに…」


困り顔で今にも泣きそうなミチトを見て微笑んだロキが「ミチト君のお陰で死ぬ事も回避できました。それだけで十分ですよ」と言うのだがそれでも顔色が優れないミチトに「安心してください」とロキが言うとミチトの横のリナがミチトの手を握って落ち着かせる。


「それでこの度王都にあったカスケードの邸宅を買い上げて建て替えを行います。資金はミチト君がラージポットから持ってきてくれた魔物の死骸があるので急ピッチで建て替えられます。まあ良かったら前の建物が邪魔なので消滅させてくれると助かります」


リナに手を繋がれて普段通りのロキの顔に落ち着いたミチトが「…はぁ、それくらいやりますけど…」と言う。後ろでは屋敷の消滅を見てみたいと聞こえてくるが今は無視をする。


「でもロキさんは折角帰ってきてマテさんとも居られるはずだったのに、また離れ離れだなんて」

「ふふ、それはご安心ください」


そう言ったロキはティナとデイブの隣でショックを受けているマテを見て「マテ、着いてきてくれませんか?」と声をかける。マテは驚いた顔で「え?良いんですか?」と聞く。


ロキは優しい面持ちで「ええ、勿論」と言って「デイブ達の許しは貰っています」と言うとマテは横に居る父母を見て「…お父さん?お母さん?」と聞く。


デイブとティナは前もってロキから話を聞いていて二つ返事でよろしくお願いしますと言っていた。


「ロキ様が誘ってくださるんだから行ってくるといい」

「恥かかないようにキチンとするのよ?」

笑顔の両親をみて目を潤ませたマテは「…はい」と言うとロキを見て「ロキ様、ご一緒させてください」と言った。

ロキは「ええ、よろしくお願いします」と言いながら周りを見るとローサが満足そうにニコニコと頷いていた。



これでロキとマテの話も解決した所でロキが「次です」と言ってミチトを台に呼ぶ。

これ以上何があるんだと言う顔のミチトが「何です?」と言いながら台に上がる。


「身分証が出来ましたよ。今日ヨシが王都で受け取ってきました」

「え!本当ですか!!」

この喜び方に皆が本気で欲しかったのかと口々に言う。


「これです」

そう言ってロキが札を渡すとミチトは嬉しそうに受け取ったのだが数秒で固まって顔が引きつる。


そんなミチトを無視してロキが「次です」と言って更に札を数枚渡すと全部受け取ったミチトがワナワナと震えて「俺が欲しいのはコレじゃない!」と言う。


台の下でリナが心配そうにミチトを見る中、ミチトがロキに掴みかかる勢いで「適職の所が「特務隊ダンジョン攻略係」って何ですか?これ仕事じゃないですよ!こっちは「貴族のトラブル解決人」!?こっちは一夫多妻証明書?何ですか!?」と言い始めた。


聞いているトウテの皆が「何でそうなった?」と思っている。

ミチトなら「動物使い」でも「剣士」でも「拳士」でも「魔術師」でも可能だと思うのだが何故、「特務隊ダンジョン攻略係」と「貴族のトラブル解決人」だったのであろうか。


ここで答え合わせのようにシックが困り顔で「仕方ないんだよミチト君」と声をかけるとミチトは普段の表情ではなく本気の困り顔で「シックさん!?何で!!?」と聞く。

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