第552話 思い出作りその後リナ編・フラとライとポテトフライ。
元気よく「ただいまー、台所使うよー」と言って入るリナの前に驚いた顔のティナが出てくる。
「あら?アンタ達どうしたの?集まるのは夜でしょ?」
「え、今晩の集まりってお母さん達もくるの?」
「行くわよ。ローサ様のお誘いだもの」
「まあそれはいいや。今は別。大鍋亭のキッチンはイブとライブとアクィに取られたから台所貸してよ」
ここでリナがフラとライの説明をするとティナは嬉しそうに笑って「良いじゃない。作って持って行きなさい」と言う。
「ミチト、畑からお芋取ってこようよ」
「はい、ティナさん、行ってきます」
ティナは「はいはい、行ってきなさい」とミチト達を見送りながら嬉しい気持ちになる。
畑ではデイブとマテが畑仕事をしていた。
リナとミチトに気付いて嬉しそうに何があったかを聞き、リナがティナにしたようにフラとライの話をする。
ポテトフライが好物の子供達に自分の芋をあげると言う事に気を良くするデイブにリナが「お父さん、お芋貰うよ」と言うとデイブは嬉しそうに「ああ、持って行きなさい」と言った。
そんなに食べるかなという量をデイブに渡されたリナとミチトは手際よく皮をむいて八等分にしていく。
リナは鍋に油を敷くと「ミチト、時間ないから油熱してもらっても良い?」と聞く。ミチトも何のこともないように「はい」と言ってフォークを手に取って油に触れると火の術で油を熱してしまう。
傍目にそれを見たティナはあきれ顔で「アンタねぇ、ミチト君を便利道具扱いしないの」とお小言を言う。
芋を揚げ始めたリナが負けじと「私はマシだよ、今みたいな時しか頼まないもん。酷いのはアクィよ。アクィってば長湯してお湯がぬるくなるとミチトをお風呂場に呼んでぬるいから温めてって言うんだから」言う。
何となくその姿も想像できたティナは「まったく…」と呆れながら「まあ仲良さそうで何よりよ」と言った。
こんな話をしている間にポテトフライが完成するので油の始末を済ませると「じゃあまた夜ね」と言ってリナとミチトはフラとライの所に行く。
ミチトが治癒院の前に現れるとずっと気にして待っていたのか飛んできたフラとライはリナのポテトフライを食べて「美味しい!!」「凄い!なんでこんなに美味しいの!?」と喜ぶ。リナはとても嬉しそうに「良かった。また作るよ」と声をかける。
「フラ君!ライ君!」
そう言ってまた看護師がフラとライを迎えにくる。
「…ごめん」
「でもマスターのポテトフライ食べたかったから」
そう言って謝りながらも手がワキワキしていて目がポテトフライを追っているフラとライを見てミチトが「リナさん、少しフラとライと待てる?」と聞く。
何をするかを察しているリナは「うん。いいよ」と言う。
何の事だかわからないのはフラとライ、それと看護師。
「マスターの俺が責任取りますから患者さんの所に案内してください」
ミチトはさっさと行って午前中の治療予定だった2人分の治療を済ませて戻ってくる。
「マスター!ご馳走様でした!」
「凄く美味しかったしリナさんが優しい」
そう言ったフラとライは山盛りあったポテトフライをあっという間に完食していた。
美味しそうに食べる姿と優しいという言葉に気をよくしたリナが「ふふ、キチンとお仕事してシック様がお休みくれたらトウテまで遊びにいらっしゃい。お店のお手伝いしたらもっと沢山美味しいの作ってあげるわよ」と言うとフラとライは子犬のようにリナの周りで「本当!嬉しい!」「仕事を頑張るよ!」と言った。
ミチトも術人間の子供達がリナに懐くのは悪い気がしないので嬉しそうに「リナさんはすっかり懐かれましたね」と言う。
リナも嬉しそうに「うん。良かったよ」と言うとフラとライを見て「フラにライ、シヤ達の先輩なんだから頑張ってよね」と言う。
「はい!」
「頑張る」
そう言った2人に見送られながらミチト達は王都を回る。
「ごめんね」
「はい?」
「ポテトフライ、美味しくできたのにフラとライが全部食べちゃったんだよ」
「残念ですけどあんなに喜んでいたから気にしません」
そう言うがミチトは味見しかしていないので正直食べたい気持ちになっている。
「お昼だね。何食べようか?」
「リナさんは何が食べたいですか?」
「夜はご馳走だろうから簡単だけど美味しいものが食べたいね」
「あ、前にロキさん達と行ったステーキサンドのお店にしますか?あそこならポテトフライも付け合わせで出てきますよ」
思わずポテトフライを言ってしまったミチトを見てリナは嬉しそうに「ふふ、ポテトフライ食べたかったんだね」と聞く。照れたミチトは「…はい。リナさんのポテトフライからしたら遠く及ばないけど食べたくなりました」と言ってステーキサンドの店まで行く。
店員はミチトの事を覚えていて真っ青になりながら恭しく接客をしてくるので「逆に嫌なので普段通りにお願いします」と注意をしてしまうと店員は処理不能になってしまっていた。
2人で食べたステーキサンドはとても美味しく2人で喜んで居ると、ミチトが来る事を予測したフツーノがステーキサンドの店に来てリナと挨拶を交わした。
ウシローノの叔父と言う事でリナからすればとっつきやすく、ウシローノからリナの人となりを聞いていたフツーノも話しやすかったのだろう。
「甥がお世話になりました。甥の言う通り太陽のようなお方でミチトさんが想いを寄せる理由がわかりました」と言うソコラーノに「ありがとうございます」と返し「今度是非お食事に誘わせてください。別に格式ばった所にはしません。ミチトさんとお2人でもご家族とでも構いませんので是非」と言うフツーノに「是非、ありがとうございます」とリナが言った。
正直、フツーノの妻はマンテローの姉、ロシーで出来る事なら会いたくない。
フツーノには悪いが会って何を話せばいいかわからない。
そこにロリー・ガットゥーやイイーンダ・ドデモが現れる事も考えられるし、そうなれば4人の術人間も来るだろう。
もう収拾つかないので正直孤児院の術人間達も家族ですと言って連れてきてしまおうかと思い、大人数用に超・転移術でも作るかなとミチトは考えてしまった。
食後にリナが「ふふ、貴族様の知り合いが増えちゃってそのうちミチトは貴族様になっちゃったりして」と冗談を言うと物凄く嫌そうな顔のミチトが「絶対嫌です」と言う。
思わず笑って「凄い顔」と言うリナに「俺はリナさんと皆でトウテで末長くひっそり平和に暮らすんです」と宣言をするとリナは嬉しそうに「うん。私も貴族の奥様なんてやれないからそれがいい」と言った。
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