第544話 思い出作りその後アクィ編・スカロvsミチト。

周りがやられるのを見守っていたパテラは「スティエーット!アクィを抱きかかえて守りながらよくもやる!次は俺だぁぁぁっ!!」と言って斬りかかってきた。

「パテラさんは怖いなぁ」と言いながらミチトはアクィとしたような乱打戦をやる。


「アクィ、俺の剣とパテラさんの剣の当たる箇所を見ておいて。こうやって打点をずらしながら相手の剣を折るんだよ」

この言葉に乱打戦が始まる事を理解したパテラが嬉しそうに「折らせるかスティエットーッ!」と言って剣を振るってくる。

ガツガツと当たる剣からは火花が散り少しでもズレればお互いに大怪我になるがミチトもパテラも遠慮はない。


暫くの轟音の後でパテラの剣が折れる。

砕けた剣の破片が舞い散る中、ミチトが「じゃ、そう言う事で」と言いアクィが「兄様、お疲れ様」と言う。

その声の後で「ぬおぉぉっ!?」と声が出てしまう程にパテラは盛大に蹴り飛ばされていた。



「よくやるな!最後は私だ!」

そう言って斬り込んできたのはスカロでスカロの剣は鋭かった。


「スカロさん…強い」

「持久力が無いから総合するとパテラには敵わないが試合ならそこそこやるぞ!」


ミチトは剣を持ち直して、パテラとやった乱打戦にしてみるがスカロの剣に折れる気配がない。


「スカロさん…キチンと見てるのか…パテラさんの倍以上時間がかかるなぁ」

ミチトの感嘆の声にアクィはやや自慢気に「スカロ兄様は強いのよ?」と言う。


さっさと剣を折って戦闘不能に持ち込もうとしたミチトだったが剣が折れない事に「どうしよう?疲れるまで追い込むかなぁ」と言った。


スカロは「妹は返して貰うぞスティエット!」と気分を出して声を振るってくる。

このやり取りにミチトは「…だから返しますよ」と言って「アクィ、帰る?」と聞く。

何回も言われたアクィは目を三角にして「帰らないわよ!さっさと兄様を倒しなさい!片手で八連斬!」と言う。


「ええぇぇぇ!?六なら撃てても八はいけるかなぁ…」

ミチトが撃てないと言うと意外そうに「そうなの?」と聞くアクィ。


「そうだよ、身体強化もダメだろ?」

「…なら六でいいわよ」


「よし!スカロさん!お疲れ様!六連斬!」

スカロの恐ろしいのはミチトの放った六連斬の三連目まで初見なのに対応した事で捌き切れなくなった四連以降で吹き飛ばされた。


ようやく全員を倒したミチトは剣をおいてひと息つく。その横顔を見たアクィが満足そうに「ミチトの勝ちね!私を守ってくれてありがとう!」と言ってもう一度強く抱き着く。


「…あっち側だと俺が人攫いみたいだけど?」

「いいのよ。ミチトは私を守って戦ってくれたんだから」

アクィは下におろして貰うがもう一度ミチトの首に腕を回して「ありがとう」と抱きしめた。


ミチトはとりあえず全員の怪我を治してからアクィに「この後は?」と聞く。


「今日はウチでお昼を食べるわ。王都は夜ご飯よ」

「夜?トウテに帰らないの?」


「リナさんから許可は貰ってるわ」

まさか夜までアクィと行動を共にするのかと思ったミチトは「マジか」と言って愕然とした。



ミチトは初めてサルバン家で食事を取る。

初めてのことでたまたまなのかミチトが居るからか常にデザートが用意されていて食事中ずっと甘い匂いが立ち込めていた。


ある程度食べ進めた所でイイーヨが「マスター、お説教よろしくお願いしまーす」と言う。

渋い表情のミチトは「別にお説教なんてしないよ?」と返すとイイダーロが「じゃあダメ出し?」と言う。

2人の顔と言い方が気になったミチトは「なんか根に持ってない?」と聞く。


「それはそうですよ。料理もできてきれいな奥さんが居て術でも剣技でも敵わないんですもん」

「ダンスやギターで勝ってもな」

そう言って2人で「ねー」と言われてしまうと何も言えないミチトは「まあいいや」と言うと話し始めた。


「簡単に言えばウシローノさんとイシホさんは練度不足…と言うより身分を明かさずに訓練出来る道場を見つけた方が良いです。

貴族の若者としてはやれても冒険者としてはまだダメです。イシホさんは剣が弾かれた時の衝撃に勝てなかったし、ウシローノさんは剣の速さを引き上げ切れてない。でも多分今の道場では及第点を渡されているんですよ」

この説明でミチトの横に座るアクィが「そうね。それは見てて思ったわ。道場の師範達がモブロンやカラーガに遠慮してるのよ」と説明をする。


この事実にウシローノが「そんな…」と言いイシホが「マスター、どうすれば良いですか?」と聞いてきた。


ミチトはニコリと笑うと「え?ここには最適な師範が居ますよ。パテラさん、頼めます?」と言うと豪快に塊肉を片付けているパテラが「俺か?」と言いミチトは「はい」と言うと「パテラさんは男女平等パンチ出来ます?」とパテラに聞く。


「…過去にサルバン騎士団にも女性が居たからやれない事はないが貴族の令嬢は初だぞ?それこそ傷付けた時に責任は取るがカラーガ嬢にその覚悟があるかだ」


ナイフとフォークを置いて睨むようにイシホを見るパテラに「はい!パテラ様、不束者ですがよろしくお願いします!」とイシホが言う。


顔を真っ赤にしたパテラが「なに!?いや…、その…」と言って慌てふためくとアクィが

「あらら」と言ってミチトにコッソリと「パテラ兄様は免疫足りないのよ」と言った。


「ウシローノさんもパテラさんに仕込んでもらうと良いですよ」

「はい。ありがとうございますミチトさん」


これでウシローノとイシホが片付いたミチトにイイーヨ達が「じゃあ、マスター、俺たちのダメ出しは?」と質問をする。


「簡単です。もっと思考の最適化と速度アップをしてください」

「最適化と?」

「速度アップ?」


「ええ、あの連携は見事でしたけど破られた時のシミュレーションとイメージが足りてません。もっと色んな状況を考えて、その場その場で最適な答えをすぐに出せるようになってください」

言われて自分達に足りないもののイメージは出来たがその先が思いつかないイイダーロが「そんなのどうすれば良いんだろう?」と言う。


ミチトはスカロを見るとスカロはもうデザートを食べ始めていた。

「スカロさん、スカロさんは戦術は出来ませんか?」

「出来るぞ」


「なら大軍指揮の訓練をイイーヨさんとイイダーロさんにして貰えませんか?」

「構わないがスティエットには出来ないのか?」


ケーキを食べていたスカロが意外そうにミチトを見る。

アクィは「兄様、無理よ」と呆れながら言い、説明するように「ミチトは自分で動く事は得意でも人を使うのは苦手なの。間違いなくミチトが指揮をしたら勝てないわよ」と言った。


「完全無欠というわけではないのだな」と言ったスカロが面白がってミチトに問題を出してみたが部下達を気遣ってジリ貧になるか自身の感覚で攻め込んで大損害を出す事になった。


肩を落としたミチトが「…苦手です」と言う。その顔を見たスカロは意外そうに「本当だな」と答えた。



「ミチト、仮に今の状況でミチトのみなら?」

「え?別に術を使って良いならウインドブレイドで騎兵の首を落として馬には説得をして逃してから全部をアースフィードで飲み込んで隊長倒して終わりだよ」


想像が及ばないスカロは「…それは戦術ではなく蹂躙だな」と言いアクィが「そうね。超常の戦いだわ」と言って呆れかえっていた。その兄妹のやり取りにミチトは「酷い」と言って不貞腐れてしまう。




「また食事に来てくれ。今度はイブ達と来るが良い」

「楽しかったぞ、また訓練に付き合ってくれ」


そう言ったスカロとパテラに見送られたミチトは朝会った位置までウシローノ達を送り届ける。


「じゃあ、工事頑張ってくださいね」

「マスター!為になりました!ありがとうございます!」

「また来てくださいね」

「今日はありがとうございました」

「ミチトさん、少しずつですが頑張ります」


4人の術人間達に見送られながらミチトはアクィに「何処に行きたいの?」と聞く、アクィは「温泉」と言うのでまたブレイクポイントまで移動をした。

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