第543話 思い出作りその後アクィ編・要人警護と人質奪還。
ミチトは今までとは別の…同じ人間とは思えない優しい声で「アクィ、お疲れ様」と言ってアクィの前に出る。
アクィは「もう、疲れたわよ…抱きかかえて…」と言ってミチトに抱かさる。
優しく頭を撫でながら「やれたね」と言うミチトに「やったわよ。それでもミチトは涼しい顔ね。私は腕が痛いしヘトヘトよ」とアクィが嬉しそうに悪態をつく。
ミチトは申し訳なさそうに笑うと「まあオーバーフローに比べるとどうしてもね」と言う。アクィもオーバーフローを持ち出されると何も言えない。
「それに訓練中の力強い話し方も素敵だった」
「自覚ないよ」
「勿体ない。私達の訓練はイクチ君達の為になったかしら?」
「なったと思うよ、アマタ君に使った改竄術に探究心とか好奇心とか向上心を盛っておいたからね」
この言葉にミチトの胸の中のアクィは「良かった…。貴い者として後進を導けて嬉しい」と言うとミチトが「まったく、アクィは偉いな」と言ってもう一度頭を撫でた。
アクィを抱きかかえるミチトが「それでさ、凄く嫌な予感するんだけど」と言うとアクィも嬉しそうに「そうね。ハンデよ」と言うと「サルバン騎士団!私の警護をするミチトを倒しなさい!ミチトは私の警護訓練ね」と言った。
「やっぱり…。アクィ、剣は?」
「現地調達よ」
この言葉でミチトは折れたアクィのレイピアたちと自分の持っていた練習用の剣を端に蹴り飛ばして準備をする。
剣の細かい破片はアースフィードで飲み込んでしまった。
終わるのを待っていたのか嬉しそうにパテラが「スティエーット!今日こそ勝ってやるぞ!行くぞ!レスタ!ズンバ!トミー!」と吠える。
「はい!」
「今日こそ!」
「やってやりますぞ!」
パテラはそのままウシローノ達を見て「そこの4人!お前達も人質救出作戦に参加しろぉぉっ!要人のアクィに傷は付けられないから術は使うなよ!」と指示を出す。
「はい!」
「え?俺達もマスターと戦うの?」
「よっしゃ!」
「行きます!」
パテラはこの展開が楽しいのだろう紅潮した顔で「スカロぉぉっ!お前も来い!」と叫ぶ。
これは想定外だったミチトは「ええぇぇぇ?スカロさんも来るの?」と声を出すとアクィが「ミチト、スカロ兄様も剣を使うわよ」と説明をする。
このやり取りが面白くないパテラが「アクィ!雰囲気を出せ!」と言うとアクィは棒読みで「キャータスケテー」と言った。
「よぉぉぉし!ヤミアールの2人も参加しろ!」
この声の後で全員に訓練用の武器が行き渡る。
全員準備万端と言う事だ。
「ちっ!アクィ、左側に来て、抱き抱えるから可能な限り掴まって!」
ミチトに抱きかかえて貰い戦いを間近で見られるアクィは今日一番の笑顔で「うん!」と言ってミチトの左側に行って抱き着く。
レスタは今回も槍を持っていて本気でミチトの右側、アクィのいない場所を狙う。
ミチトは左にかわす事も出来るが訓練とは言えアクィを危険には晒せない。
「沈んでろ」と言って槍を蹴り上げたミチトがレスタが槍を構えなおす前に至近距離に入るともう一度蹴り上げてレスタを転がす。
それに合わせて2人…3人と20人がこれでもかと攻め込んでくる。
いやらしいのはミチトの攻撃の合間を埋めるようにイクチが切りかかって来た事だ、正直これに実力が伴えば恐ろしい実力者になっただろう。
「目だけはいい。よく見ている。だが遅い!」
ミチトはわざとパテラに向かってイクチを蹴る。
蹴り飛ばされたイクチを抱きかかえたパテラが「イクチぃぃっ!よくやった!タイミングは見事だ!だが踏み込みと剣の振りが遅い!後で走り込みと素振りを追加だぁぁっ!」と声をかける。嬉しそうにイクチが「はい!」と言う。
変わってアマタはガムシャラに突っ込んできて蹴り飛ばされても「うひひひ、き…気持ちいい」と気持ちの悪い事を言いながら突っ込んでき続ける。
「動きは悪くない。今後の修行次第だな」
「ミチト、沈めちゃってよ」
この言葉で側頭部を蹴られたアマタは早々にダウンした。
「行きます!イシホさん!合わせて!」
「了解!」
ウシローノとイシホが剣を持って襲いかかってくる。
ミチトはアマタから奪っておいた剣で2人の相手をする。
「遅い。型は出来ても遅い!」
「くっ!ですが剣は今も教わっていて自主練もしています!」
「ならその剣だけで魔物と三日三晩戦い抜いて見せろ!」
ウシローノの剣を弾き飛ばして首に剣を置いて「真剣勝負ならここで切り殺したよ」と言うウシローノが降参した所でイシホが斬り込んでくるが剣に剣をぶつけて持てなくしてから倒す。
剣を弾かれて痺れる手をおさえるイシホに「アクィは何分も俺と撃ち合った!剣を撃ち込む事を意識しろ!」と言ってからイシホを蹴り飛ばすとアクィが「ちょっと、イシホさん…カラーガ嬢は女性よ!?」と言う。
ミチトはシレっと「男女平等キックだよ。遠慮して俺が倒されても本番で敵に斬られても困るだろ?まあ後味悪いから顔とかお腹は蹴らないよ」と言う。
イシホ自身は平等に蹴られた事に小さく喜んでいた。
「次は俺たちだマスター!」
「人質は返してもらうよ!」
イイーヨとイイダーロが剣を持って斬り込んでくる。
ミチトはその剣を弾きながら「アクィ、返せだって…向こうに帰る?」と聞く。
アクィは「ちょっと!何返そうとしてるのよ!本気で私を守ってよ!」と言ってミチトを叱りつける。
「いくぞ!俺が前!イイダーロは後ろ!」
「了解!タイミング合わせろよ!」
イイーヨがミチトの前に立って剣を構えるとイイダーロがミチトの左後ろで剣を構える。
ウシローノ達より剣の実力があるイイーヨとイイダーロの連携は悪くない。
イイーヨが足を狙えばイイダーロが頭を狙い、イイダーロが突きならイイーヨはなぎ払ってくる。
難なくかわすミチトは「…やるなぁ」と言うと抱きかかえるアクィを見て「アクィ、剣持ってくれる?設定を守る?」と聞くとアクィは「持っててあげるわよ」と言って微笑む。
「よし…」
剣をアクィに渡して無手になったミチトは威圧するようにイイーヨを睨むとイイーヨは身動きが取れなくなる。
先程アクィが動けなくなった事を身をもって味わうイイーヨとイイダーロ。
動かない訳にはいかないイイーヨが「イイダーロ!頼む!」と言って斬り込むとイイダーロが「任せろ!」と返す。
イイダーロが動いた所でミチトの気をそらしてイイーヨが動く予定だったがそううまくは行かない。
背後のイイダーロをかわしつつイイダーロの腹部を蹴り上げた隙にイイーヨを蹴り飛ばしてイイダーロをその上に蹴り飛ばす。
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