第542話 思い出作りその後アクィ編・乱打戦。
腕立てを終えたレスタ達にアマタ達が終わるまでに練習用の剣を多めに持って来てくれと言う。ミチトとアクィは剣を持ってきてもらう間にスカロにも聞いたがアマタは座学も良くない上に悔しい気持ちなんかが全く無く、ダメ出しを受けても「あ、ダメっすか、わかりました」と言った感じでのれんに腕押し状態だと言う。
代わりにイクチは理想の自分とかけ離れている事を痛感するたびにムキになっていると言う。
この説明にミチトが「うーん…、困ったなぁ」と言う。
スカロが「スティエットでも難しいか?」と聞いてくる。
パテラは「アマタぁぁ!お前が終わるまで俺も腕立てをつづけるから諦めるなぁぁぁ!」と言っている。
「難しいですよ。そりゃあ頭をいじって性格変えたりして良いならすぐですけど」
ミチトが恐ろしい事を言っていると、ここで腕立てを終えたイクチが「それでお願いします」と言い出した。
聞き間違いかと思ったミチトは「え?」と聞き返すとイクチは「昔からアマタはこんな感じで話になりませんでした。だから少しくらいなら構いません」と言う。
ここでようやく腕立て伏せが終わったアマタが目を見開いて「アニキ?嘘だろ?」と言ったのだがミチトは待った無しで「まあお兄さんのお許し出たし…」と言ってアマタの前に行く。
アマタはただならぬ気配に「え?やめて?やめて?」と言って後ずさるがパテラがそれを許さない。
ミチトは優しい笑顔で「まあまあ、基本的な部分は変えませんよ。何をするかは教えません」と言ってアマタの頭に手を置いて改竄術を使う。
頭が一瞬ピリッとしたが何が起きたかわからないアマタは「え?何が?」と言うがミチトは「内緒です」と言う。
「折角だからパテラさん、腕立てを見てあげてください」
パテラは気持ちよく「おう」と返事をするとアマタに「腕立て100回」と言う。
今までは10回もやると「もういいや」とばかりにやめていたのに今は「うひひひ」と喜びの声を上げながら腕立てを続ける。
気味の悪いものを見る表情のアクィが「ミチト?何をしたの?」と聞くとミチトは「え?苦しい状況が気持ちいいって思えるようにしたのとね」と説明をした。
「え?じゃあアレって気持ちよくなってるの?」
「本人が訓練を楽しめるからいいかなと思ったんだけど、ダメ?」
その間にサッサと腕立てを終えたアマタ。
パテラが「100!終わりだ!やれば出来るではないか!」と声をかけた時に「気持ち良い〜!ふぅ〜!!」と言ってアマタが身体をビクつかせながら悦び始めた。
「うわ…何アレ?」
「アレが2つ目、達成感をヒトの3倍くらいにしてみたんだ。100回なら100回終わらせた時の嬉しさが半端ないんだよ」
そう言われたアマタはビクつきながらパテラに「うひひひ、サルバンさん、隊長さん、もっと、もっとくださいよぉ」と言っている。
施術者のミチトが気持ちが悪いと思っていると代弁者のように「ミチト、気持ち悪いんだけど」とアクィが言う。
「まあ一過性にしたから何日かしたら収まるよ。それでも変わらなかったら今度は怠けるたびに吐きたくなるくらいの気持ちの悪さを感じるようにするよ」
その姿を想像したアクィは今も見悶えて喜ぶアマタと逆に吐き戻すアマタを想像して「…それも可哀想ね」と言った。
ここで剣を持ってきたレスタから剣を受け取ってミチトは「アクィ、今日はどうする?」と聞く。
アクィは紅潮した顔で「真剣勝負って言ってもいい?」と聞く。
仕方ないなという顔のミチトは「じゃあ2分は俺は防御のみ、2分したら攻撃を仕掛けるよ」と言った。
こうして始まるアクィとミチトの訓練。
アクィは前回の訓練の後もミチトがいない間を使って修練を怠らなかったのだろう。確実に手数が増えていて強い。
そして確実に前回見たミチトの動きに対応してきている。
驚きの表情と喜びの表情でミチトが「相変わらずアクィは強いなぁ!」と言いながらアクィの剣を回避する。
褒められて嬉しいものの剣がかすりもしない事にアクィは「よく言うわよ!当たらない!」と悪態をつく。
そんなかけ合いをしながら暫くアクィが剣を振るうとミチトは「…ならもう少しだけこの前より意地悪をするよ」と言って剣をしまうと手甲を身に付けて構えを取る。
無手も使うイイーヨとイイダーロやミチトから手甲を貰っているウシローノとイシホは息を飲む。
「無手の俺は怖いよアクィ?」
そう言ってミチトが睨むとアクィは動きが固まるどこから攻め込んでも剣を持った時以上に隙が無かった。
「素手で剣士の動きを止めないで!」
アクィはそう言いながらリーチを生かして距離を取りながら切っ先でミチトを狙う。
嬉しそうに「対応してくるし速いな…、なら!」と言ったミチトはステップを踏むのをやめてその場に立ち止まるとアクィの剣を全て捉えて逸らす。
直撃コースにあるものの軌道を全て逸らす。
「くっ!?何それ!」
「アクィの剣が速いからやってみたかったんだ。当たる前に剣の速度に手を合わせて逸らしてるんだよ!」
それ以外の何物もないがあり得ない。そう思ったアクィは「あり得ない!」と言うとミチトはシレっと「目の前で起きてるだろ?」と言って笑う。
笑顔から真顔になったミチトが「…さぁ、2分だ…行くよ」と言って容赦なくアクィを殴る。
ミチトがアクィを殴った所を見たことが無かったパテラ達が息を飲むが「本当ならこれで肩が折れている」と言うミチトの声で手加減している事を理解する。
「手、その初動で油断する癖は辞めなよ。これがアクィでない敵なら指を折って剣を持てなくするよ」
そう言いながらレイピアを握る手を殴る。
アクィは自分の手を見て折れていない事を確認すると剣を持ち直す。
「よし、最後にもう少しだけ勝負しようアクィ。俺も剣を持つ。俺の剣はアクィのレイピアを折りに行く。アクィもレイピアで俺の剣を狙いなよ。今から2分。2分の間に乱打戦でアクィが俺の剣を折れたらアクィの勝ち。折れなければ俺の勝ち。予備のレイピアまで折れてしまって全部無くなってもアクィが諦めずに剣さえ折れれば俺の負けだ」
ミチトが剣を持つとアクィもレイピアを構えて気合を入れる。
勝ち目は少ないがやるしかない気持ちと気迫でアクィはレイピアを振るう。
ガツガツと当たる轟音と散る火花。
アクィの手にはかなりの衝撃が響いてきていてミチトがキチンと向き合ってくれている事が伝わってくる。
「アクィ!見るんだ!同じ位置を狙う事を意識して見続けるんだ!」
「あああぁぁぁっ!!」
こうして始まる乱打戦。
最初はただ剣と剣がぶつかるだけであっという間にアクィの練習用レイピアが折れる。
アクィが近くに置かれた2本目を手に取って再度剣を振るう。
この2本目もあっという間に折れる。
剣の残りは後3本。
パテラ達は勝ち目がないと思ったがアクィは諦めない。
3本目が折れた所でアクィの剣に変化が生じた。
横振りでミチトの剣と撃ち合った直後に突きを放って剣の腹を撃つ。
最後の5本目に入った所でミチトの剣からも嫌な音が出る。
折れるまであと少しと思った所でアクィのレイピアが折れたがアクィは一歩も引かずにそのまま剣を振るう。
「後20秒だ!折ってみろ!」
「やるわよ!」
この言葉の後も止まらない剣撃。
残り2秒でアクィの剣がミチトの剣を折った。
剣を折ると力尽きたようにレイピアを落とすアクィがミチトに向かって歩き出す。
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