思い出作りその後アクィ編。(第541話~第545話)

第541話 思い出作りその後アクィ編・伸びる者伸びぬ者。

ミチトは朝一番に「アクィ、行くの?」と聞く。

今日はアクィとの思い出作りその後。

目を三角にしたアクィが「行くわよ!何でメロとライブがあって私がないのよ!?」と言っている。


「いや、アクィって要望出してこなかったし。アクィって王都でやりたい事ってあるの?」

「王都は最後。その前に頼まれ事もあってミチトと私にしか出来ない事なのよ」


この言い方で何があったかを思案するミチトは嫌な予感がしていてそのまま「…わ…すごく嫌な予感」と言う。アクィは意外そうに「え?嫌な予感ではないけどわかるの?」と聞いてきた。


「わかるよ。この前リナさんと俺が3日過ごす間にサルバンで言われたろ?」

「当たり!イクチはまだしもアマタは訓練に身が入ってないから目の前で私とミチトの剣撃を見せてやってくれってパテラ兄様に頼まれたのよ!」


アクィが照れるような嬉しいような顔で話をしてくる。

ミチトは「やっぱりか…」と言って肩を落として「じゃあアクィはそれで…」と言うとアクィは「終わらないわよ!」とツッコむ。


ミチトは渋々アクィを連れてサルバン邸まで行く。

「ミチト、先にウシローノ君達の進捗を見る?」


やはり自分の術人間達の進捗が気になるミチトは「いいの?」と聞くとアクィは「構わないわよ」と言って笑う。


岩山に行くと工事2日目のウシローノ達がウインドバイブレーションで岩を砕いてアースフィードで飲み込んで整地していく。

常に馬車二台分の幅を維持していて4人が連携を取る形で工事を進めていた。


ミチトに気付かない4人に向けて「おはよう」と言う。

4人が嬉しそうにミチトとアクィを見て挨拶をしてくる。

「あ、マスター!見に来てくれたんですか?」

「まだここまでしか出来ていません」


「そんな事ないよ、もうサルバン邸からここまで進んできたんだよね?」

メロの思い出作りの帰りに4人を連れてサルバン家に連れて行って昨日の早朝から工事が始まっている。

転移術を授けていないのでサルバン邸からは馬車なり滑走術で来ることになるので移動時間を含めるとそんなに作業できないが、かなり進んでいて4人の頑張りが伺えた。

ミチトは遠視術でウシローノ達を確認して転移をしてきた。


イイーヨが「マスター、今日はどうしたんですか?」と聞く。ミチトは肩を落としながら「アクィがパテラさんから頼まれ事をしていてそれで来たんだよ」と言う。


イイダーロがアクィを見ながら「サルバン嬢?なにがあるんでしょうか?」と聞くとアクィは普段の表情のままで「今、イクチ・ヤミアールとアマタ・ヤミアールがウチで鍛えられているわよね?イクチは良いんだけどアマタは訓練に身が入っていないからイイヒートにしたみたいに目の前で私とミチトの剣撃を見せて欲しいって言われたのよ」と言って屋敷の方角を指さす。


「え!?じゃあ今からサルバン邸でマスターとアクィさんの訓練が見られるんですか!?」

「ズルい!行きたいです!」


4人がミチトに詰め寄って行きたいと言う。

困り顔のミチトが「ええぇぇぇ、君たち、今日の工事は?」と言うがイイーヨとイイダーロはこう言う所は良く言えば柔軟な考え方をしている。


「マスター!今日の分だけやってくれませんか!?」

「マスターの訓練を見てみたいし出来たら俺達にも指南してください!」


マスターのミチトにお願いを出来てしまう。

ミチトは色々個考えたのだろう。困った顔で「俺、我流だから人に指導なんて無理…。アクィとだってただ模擬戦したりするだけ…」と言って牽制するのだがウシローノが「それでもお願いします!」と頭を下げてくる。


これをみたアクィが「ミチト、やってあげなさい」と言うとミチトも「…だろうね」と言って肩を落とす。

これで訓練が見れる事が確定した4人はやったと喜びアクィに感謝を告げる。


「じゃあ訓練終わったらここまで連れ戻すから工事をつづけてくれるね?」

「はい!」

「勿論です」


4人が頷いた瞬間、4人の背後で本日分の整地が終わってしまっていた。


この出来事にアクィを含めた5人は言葉を失ってしまうがミチトはシレっと「ほら、アクィ行くよ」と言って4人の術人間達を連れてサルバン邸に着く。

アクィはスカロにさっさと声をかけて訓練場に出て「集合!」と言う。


鳥の囀りすら聞こえてくる喉かな風景に響くアクィの澄み渡る「集合」の声とその数秒後には地響きと共に第一騎士団が現れて整列をする。

初見のウシローノ達は言葉を失って状況を見守っていると少し遅れてイクチとパテラに首根っこを掴まれて引きずられるアマタが来た。


アクィは冷たい目と声で「兄様?どうして遅いのかしら?」と聞く。パテラがバツの悪い表情で「くっ…アマタの奴がだな?」と言うとアクィが怖い表情で「言い訳?サルバンの心を忘れたのかしら?」と言った。


「否!そんな訳はない!俺の不徳の結果だ!」

邸宅の窓ガラスがビリビリと震えるパテラの声量。


満足そうに頷いたアクィは「腕立て100。全員連帯責任よ」と言った。

この言葉に第一騎士団からは喜びの声が出る。


「うおおお!お嬢様からのご命令だ!気合入れるぞ!!」

そう言って始まる腕立て伏せ。

地面が第一騎士団の力で揺れるのではないかと思える熱量。

だが、こうして見てみるとやはりなにをさせてもアマタが足を引っ張っている。

アクィの視線を感じたパテラがアマタに「アマタぁぁぁっ!」と怒鳴りつけるとアマタは「やってます!」と言う。


口ではやっているというがどうしてもやる気が伴っていない。

それに比べてイクチは必死に食らいつこうとするが持続できずに顔から落ちて悔し泣きをしながら再度奮起している。


「アクィ、イクチ君には俺達の訓練を見せる意味はあると思うけどアマタ君は見せてもダメだと思うよ」

ミチトの言葉に困り顔のアクィも「うん。そんな気がするわ」と言っている。

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