第533話 像。

いい仕事したと言うルナスケのドヤ顔とその横で鉄色の輝きを放つミチト像。

似てないと言われれば似てない気もするが、腰にさしている剣と腰のホルダーについている交換用の刃を見ればミチトだとわかる。



「…俺?………何やってくれてんですか?今すぐインフェルノフレイムですよ」

土気色の顔をしたミチトは掌にインフェルノフレイムを出して像に近付いていく。


「バカっ!やめろって!」

「お前、そんなに嫌なのかよ?」


照れて怒るくらいは想像していたがまさか恐ろしい火を放ちながら近づいてくるとは思っていなかったエクシィとルナスケは驚きの声をあげる。



「嫌です」と言ったミチトは一応ルナスケに気遣って火を消して像に手を当てると「ルナスケさんには悪いけど…魔水晶をやった時と同じだ…俺の術で姿形を変える。ロキさんだ…」と言って術を流し込んだのだろう。像が光を放つとあっという間にロキの像になって横にはちゃっかりマテの像まである。


やり切ってスッキリした顔のミチトが「これを飾りましょう。行きますよ」と言う。

唖然としたエクシィが「…何しやがった?」と聞く。

ミチトはシレっと「術で形を作り変えたんですよ」と言うとヤァホィが像に近づいて「…わぁ、凄いクオリティだね。ロキ様とマテちゃんってすぐにわかるよ」とミチトに感想を言う。


近づいて像を見たエクシィは「お前、こう言うの苦手なんだろ?」とミチトに聞くとミチトは人差し指を天に向けてクルクル回しながら「術で出来る事ならやれますよ。俺、器用貧乏ですから」と言う。


「………ミチト?」

「なんです?エクシィさんのお願いでも俺の像にはしませんよ」


「ちげぇよ!今の奴、もっとやれるか!?」

「は?ヨシさんでも作るんですか?」


「ちっげぇって!いいか、今から持ってくるやつを作って見せろ!」

そう言ってエクシィが工房の奥に行くと金でできた派手な装飾の剣を持ってくる。


「ええぇぇぇ、俺は装飾が苦手」

「違うって!」と言いながらエクシィは金の塊を出して「術でコレを複製して見せろって」と言う。


「まあ、やってみますけど失敗しても怒らないでくださいよ」

そう言うとあっという間に瓜二つの剣を生み出す。


震える手で剣を手に取ったエクシィが「どうやった?」と聞くとミチトは指を天に向けて説明方法を考えるように「先に元になった方に術を流して形を把握したら塊に術を流してその形にしました」と言う。


言っている事は何となくわかるが意味も方法も分からない。だがエクシィには十分だった。


「おい!金儲けできんぞ!やるぞ!ミチト!ライドゥ!ヤァホィ!ルナスケ!売って売って売りまくるぞ!」


目の色を変えたエクシィを見て「ええぇぇぇ…」と言うミチトの横でヤァホィが「でもこれ、本当に形を把握するんだね、細かな傷まで反映されてるよ」と言うと剣を手に取って確認するライドゥも「むう…恐ろしいな」と言う。

ルナスケだけは嫌そうな顔で「タチ悪い」と言った。



この件でミチトの想定外はロキだった。

ロキはやはり貴族なのだろう。

怒られて嫌がられると思っていたのに呼びつけられて像を見たロキは「私は自己顕示欲は無い方ですがこれは嬉しい贈り物です。ありがとうミチト君」と礼を言う。

礼を言われたミチトは目を丸くする。


「ええぇぇぇ、もしかしてヨシさんも?」と言いながら明石で棚に乗るくらいの大きさで、先日ギターを弾いた時のヨシを模した像を作ってディヴァント家に持っていくと「なんと御礼を言っていいのかわかりません!家宝にします!」と感謝をされる。


ここでミチトの悪ノリが始まり、コソッとファットマウンテンに行き、フツーノに再生産までを聞くとちょうど3日後と言うので山分けで根こそぎ取って半分貰い、明石で棚に乗るサイズのフツーノとソコラーノとウシローノが並んでいる像を作るとこれまた感謝をされる。

フツーノに至ってはファットマウンテンを奪還した時くらいの喜びようだった。


意味が分からないミチトは「ええぇぇぇ…、そんなに嬉しいですか?」と聞くとフツーノは「はい!とても!」と感謝を告げる。


この言葉で更に暴走するミチトは取ってきたばかりの金と銀でロウアンとローサのテーブルサイズの像を作ると「な…なんと言う事を…、こ…これは幾らで売ってくれるんだい!?」とロウアンが見たこともない顔で言い出す。


ミチトが「え?そんなに?」と驚きを口にしているとローサも「ミチトさん、まさかあの事を察して牽制!?いえ…私の計画は完璧…じゃあこれは何!?」と混乱し始める。


「え?皆して俺を化かしてません?」

ここでミチトがトウテの像から始まった話をするとロウアンが「君は像がうれしくないのかい?」と聞き、その横でローサが「え?あ…ミチトさんはそう言う所は平民の考えなのね」と納得をして貰った貴族は本気で嬉しいのだと教えられる。


それでも釈然としないミチトは「…試すか」と言うと、更にスイッチが入り、ミチトがヨシやロウアン達と同じサイズのアクィ像を作るとアクィにも感謝をされてしまう。

抱き着かれてキスまでされてしまう程で益々混乱してしまう。

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