第21話 奪われた手紙。
その後、大体1年は手紙は無事だった。
誰も古代語と古代神聖語の先生の所に行ったことに興味なんかは無かったからだ。
R to Rで興味を持たれるのは金になるか否か、どうにかミチトの労力だけで自分達は不労所得を得られるかにしか興味ないR to Rに奴が入ってきた。
「マンテロー・ガットゥー」
奴は言葉巧みに周りに取り入った。
R to Rのメンバーですら働かない人間だと思っていたが、マンテローは更に輪をかけて働かない人間だった。仕事をさせてくれとチームに加入したのに仕事をしない人間というのがいた事にミチトは絶句した。
奴は仕事をしたフリがとても上手く、要所以外で結果を残しても意味がないことを知っていた。だから周りが困ろうが仕事をしない。そして的確に相手を見てサブリーダーとは真っ先に飲み仲間になる事で怒られなくなった。
働かなければ仕事はない。いくら暇でも眠ればリーダーたちや他のメンバーに悪く思われる。そんな奴は勤務中に座学と言い出してR to Rで過去に行った依頼の一覧を見ていた。
その中で古代語と古代神聖語の先生の所に行った事を見つけ出してきた。
ミチトに「依頼に対して興味があるから説明をしろ」と言って依頼の仔細を聞いてきた。
忙しいこともあるが、詳しく話すことはしたくなかったので、ありきたりの誰にでも話せる範囲で受け答えをしたが納得の行かなかった奴はサブリーダーに取り入って、仕事の一環として古代語と古代神聖語の先生の家に行った。
そこで夫人から手紙の存在を聞きだしてきた。
そして…「夫人、あまりご主人を良く思って居なかったんですね」と持ちかけて「大して金にもならない古代語と古代神聖語を熱心に研究する主人が疎ましかった」と言質を得て夫人の心に入り込んだ奴は夫人から「主人の痕跡を消してほしい。介護に来ていた男性が持っていた手紙の焼却をお願い」と言う言葉を引き出して小遣い以下の金額で依頼として取り付けて意気揚々と凱旋をした。
ちなみにだがあの豪邸を見れば先生がキチンと働いて家族を養っていたことは一目瞭然だが生前手紙のやり取りの中で先生がミチトに「妻は自分の認めたもの以外に不寛容で金に煩いのが困る」「学問を承認欲求や自慢の為に捉え、金にしても十分に蓄えもあるのにまだ足りないと言う」と漏らしていた。
戻った奴はミチトに夫人と話したことを告げて先生の家での出来事をミチトが不快に感じるように面白おかしく説明をする。ムキになったミチトが反論をすれば燃料が投下された火のように燃え盛り、怒り出せばミチトの評価が下がるギリギリのラインで夫人が先生を疎ましく思っていたこと、自分が聞き出してきた内容を先生がロクでもない悪人に聞こえるように喧伝してみせた。
一通り煽って満足した奴はサブリーダーに報告をする。
ミチトが貰ったと言う手紙には遺産や財宝の事が古代語と古代神聖語で書かれているかも知れないと言って篭絡をする。
見事に乗せられたサブリーダーはミチトを羽交い絞めにしたまま住まいまで連行をする。
そして見つけた手紙を奴は持ち帰り辞書を片手に読んでいた。
翌日にはただの手紙であったことが証明されたが「ひひひひ、俺も心苦しいんですけど奥さんからの依頼なんです。あの奥さんは旦那さんを嫌っていたんですね」と言ってわざとミチトの目の前で燃やされた。
正直、なぜそこまでする必要があるのかわからない気持ちと今すぐに目の前でヘラヘラと笑うマンテローをボコボコに殴り倒したい気持ちがあった。
だがそれを牽制するように貴族の息子は冒険者になっても貴族の息子で冒険中のトラブルならまだしも街中でのトラブルだと身分が最高の武器になると周りに言っていたことで我慢をしてしまった。
その瞳と顔には明らかな怒りが宿っていてロキは躊躇をした後で「何か嫌な事を思い出させてしまったようですね。すみません」と謝る。
その声で幾分か冷静になれたミチトは「いえ…。もう良いですか?」と返事をすることが出来た。
「すみません。もう夜になってしまいました。遅くなりましたので今日は制限付きですが兵舎に泊まって明日からラージポットに入ってください。後、写本に関する報酬はスード隊が装備を持ち帰った後で正式にお支払いします」
「はい。それでは本の内容はその時お話しします」
ロキは本をしまってベルを鳴らすと現れた兵士に「ミチト君を今晩は兵舎に泊まらせます。食事を用意するように」と言って指示をする。
ミチトは促されるままに兵舎に行き、個室をあてがわれた中で久し振りにベッドで一晩を過ごした。
ロキは再びベルを鳴らす。
現れた兵士に「大鍋亭の営業時間は何時までですか?」と質問をすると兵士は「20時までです」と返事をする。
「使いを出して30分切り上げさせてください。そしてオーナーのリナを呼んでください。後はスードをここに」
呼び出されたスードは怒られる事を覚悟していた。
命の恩人だからとミチトに名前を名乗り、リナとシューザの名前を告げた特別扱いに対しての罰は覚悟していた。
糸目と呼ばれたネズナと無精髭のシルゲはスードに「俺達も怒られますよ!」「ついて行きます!」と言っていたがそれを断って1人でロキの元を訪れた。
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