第5話 国王陛下と魔王様
「悪いが公爵と令嬢は私と王妃のお茶に付き合って欲しい」
「畏まりました」
「はい」
全員が疲れた顔をして、部屋を出て行った。
あんな物を見せられたから食中りかも
部屋の前の騎士達の私を憐れむ視線が痛い。ううっ…
止めて欲しいし、同情もいらない。求めてもいない。
義兄の嫌がらせに耐久性が付いている私の精神は直ぐに復活するのだから。
今は自分の運の無さにがっかりしているだけなのよ。
中庭のガゼボに案内されるとそこには王妃様と
ん?あれは義兄?何故、ここに…
お母様もいるのね。ああ付き添いか。なら判る気がする。一人だと危ないものね。
一人で勝手に納得した私は、陛下らと席に着いた。
「ところで、アーネストはマリアベーテル嬢とは何か進展があったのか」
「そ、それはどういう事でしょうか?」
「ん、マリアベーテル嬢は何も知らんのか」
「陛下、最初の約束通り、娘には何も知らせていません」
「そ、そうか」
何だか、気まずい雰囲気が漂っている。
「ねえ、マリアベーテル嬢、息子と婚約しない?」
「それはどなたでしょう?」
「第二王子よ」
「どのような方か存じ上げないのですが」
「ふふ、ですってアーネスト」
「母上、揶揄うのは止めて下さい」
「は、母上って、王妃様がですか?」
「そうよ、アーネストは私が産んだ第二王子なのよ。黙ってごめんなさいね」
「すまない。マリアベーテル。お前に真実を告げないよう殿下と約束をしたんだ」
「お父様もお母様もご存じだったんですか」
「ええ、ごめんなさいね。理由があって言えなかったの」
「理由って……」
「いい、俺から話す。付いて来い」
そう言われて、義兄に付いていく私を皆がまた生温かい目でみている。
義兄は当然の様に私の手を握った。
「ちょっとお義兄様、痛いんですが」
義兄がもっと強く握りしめる。
「名前で呼べ!」
「それは命令ですか。殿下」
「違う、アーネストと呼べ」
「嫌です!」
いつもより強い口調になった私はいきなり義兄に口を塞がれた。
「ん、や、やめて」
嫌だと言っても何度も角度を変えて口付けた。
「お前は、俺のものなんだ。誰にも渡さない」
そう言って更に口付けを交わした。
甘く痺れる様な感覚が全身を駆け抜けた後、義兄は
「俺が黒持ちなのは知っているだろう?小さい頃は魔力が制御出来なかった。俺が10才の時に母上のお茶会に呼ばれたお前と出会ったんだ。お前は覚えていないだろうが、お前に触れた途端、魔力を抑え込める様になったんだ」
「魔力の制御?」
「魔力の強い人間は子供の頃は制御するのに苦労するんだ。でも魔力のない人間の傍にいると安定するから、だから、俺は公爵家に、お前の傍にいるために……お前の傍は居心地が良かった」
「でも意地悪でした」
「あ、あれはお前も悪い」
「どうしてですか?」
「俺以外の人間には笑うのに俺の前だと嫌な顔をするからだ」
「意地悪ばかりするからです。怖いイメージしかありません。直ぐにお仕置きするし……」
「あ、あれは違うんだ。お前が可愛いからさせたかっただけだから、つい、その……」
「ハッキリと言って下さい。嫌いなら嫌いと別に構いませんから」
「馬鹿、嫌いなら口付けなんかするか。す、好きだ。ずっと初めて会った時からお前以外の女なんかいらない。お前だけが欲しいんだ。一生大事にするから結婚して欲しい」
「嫌です。今更信じられません」
私は、はっきり断った。
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