夢理心中
考える。ただひたすら。
姿勢良く椅子に腰掛け両手を机の上に置いて、この部屋唯一の光源である机の中心に置かれた1本の蝋燭の先に揺らめく火を見つめながら。
集中が増すと段々頭が垂れてくる。
垂れた頭がするりと机をすり抜けると真っ暗な空間の中で幾何学模様のネオンがチカチカと色を変えながら回転し疑似的な銀河を生み出す。
やがてその中心から霧が晴れるように向こう側が現れて来た。
1本の木が広いのかどうか良くわからない原っぱに立っていて、その回りに蝶のようなハエのような知ってるのだが名の浮かばない羽虫がチラチラと飛んでいる。
意識と関係なく足は木を目指し目前まで来るとその木を登り始めた。
手も足も使ってはいないような
目線だけが段を踏むように上へ上へと進む。
登り切ると海が空へ落ちていくので泳いで地上を目指しながら途中で落ちる海の中を優雅に泳ぐて手拭いを見つけそれを手に取り顔を拭うときらびやかな夜景に向かって体が空から落ちていく
落ちていく姿を見ながらその景色の美しさにも目を向けた。
そして地中のトンネルを体を滑らしながらザザザと
進んで行くと開けた場所に3つの扉が現れる。
これを無視すると布団の中で何かが動いていた。
布団を捲り上げると裸の人間が体に巻き付いていたので息を吹いて吹き飛ばしてしまい何となく後悔した気になりながら布団にくるまる。
すると山が噴火を始め遠くからたまやかぎやと人々が声を上げると大御神輿の太鼓台が調子を鳴らし獅子舞が人々を噛み歩く。
太鼓を叩くと合わせて
ちょーさや
少し調子を変えると
よーいっとさのせ、よいとさのちょーさや
と豪気な合いの手が飛び交い大御神輿が高く掲げ上げられる。
そして掲げた大御神輿が下ろされると文明は終わりを告げ1輪の花が瓦礫から顔を出して空を見上げている
空を見上げていると行き交う人達が邪魔をするように跨いで行く。
滅多にお目にかかる事の無い何とも魅惑的な布地を幾つか見送ると疲れ切った革靴に踏まれ視界が暗転する。
足がどけられると山沿いの綺麗に開拓されたもだんな住宅街にある長い坂道に差し掛かった。
1歩踏み出すと何の抵抗も無く勢い良く滑り出し舗装された道路にシュプールを描きながら滑走していく。
長く、長く滑ってスピードが増すほどに残像となり引き伸ばされていく景色に目をやるとえもいわれぬ恐怖を感じる。
恐ろしさに耐え兼ね前に目を向けると新幹線に乗り家路へと急いでいた。
走る新幹線の3号車と5号車の間にある喫煙室へ入り階段を登る。
階段を登り切ると椅子に座って机の中心に置かれた蝋燭の火を見つめている男がいた。
男はひたすら考えていた。
何を考えているのかと訪ねると
「迷っているのです」
そう言うので道を教えてあげることにする。
机を頭がすり抜け幾何学的な銀河の真ん中が空いたら原っぱに立つ1本の木の上に目線だけが登り切ると海が空へ落ちていくから泳いで手拭いを捕まえて顔を拭いて夜景の美しさに見とれながら地中のトンネルの中を滑り進んで行く。
そして3つのドアを無視し、布団を捲って裸の人を吹き飛ばして後悔しながら布団にくるまれば火山が噴火を始めて大御神輿の太鼓を叩くと豪気な合いの手と共に大御神輿が掲げ上げられ下ろされたら文明が終わり花が咲く。
魅惑的な布地を幾つか見て革靴に踏まれたら洒落た街並みを長い坂道を滑りながら眺めて怖くなったら前を見て新幹線の3号車と5号車の間にある喫煙室の階段を登れば良いのです。
誰でもわかるように説明をしてあげると
「ありがとうございます。お陰で家に帰れそうです」
お礼を言われた事に照れて長めに瞬きをしながら顔を横に振ると白い部屋の白いベッドに横たわっていてふと呟く。
「おはようございます」
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