第34話 夏休み(4)


夏休み中に起きた、絵里奈の泊り込み大樹のお世話作戦。

進展はいかがだったでしょうか。


―――――


 三日目の朝、絵里奈が僕のベッドで寝ている。幸せそうな顔をして。

昨日は、お風呂の後、ワインを飲むと言い出した。僕は、風呂上りにワインはどうもという事で、ジャックダニエルのロックを飲んだ。


 これが、絵里奈の作戦だったとは。本丸が落とされてしまった。これを想定して、必要なものをしっかりと準備して来ていた。

 いつの間にあんなもの買ったんだ。まあ、赤ちゃん出来るより良いけど。


参ったな。これじゃあ、完全に絵里奈の両親公認じゃないか。家の両親は、絵里奈の事を気に入っている。

 

 桂の事が、頭をよぎった。まだ、自分の中で、絵里奈と桂は、イーブンだ。桂の存在を絵里奈は、気付いていないみたいだ。絵里奈は。緑川さんの事しか知らない。


 今日は、緑川さんと郊外のレジャー施設に行く予定になっている。家に迎えに来て、と言っていた。


 家には、九時半に迎えに行く予定。聞いた場所からすると、ここから一時間位だから

八時に家を出て、レンタカー借りればいい。

まだ、六時。もう少し寝るか。


 うん、なんだ。いっ。ちょ、ちょっと。僕の大切な所を触っている。

絵里奈の奴、寝たふりして。そうならこっちも。


「うん、う、うん」


絵里奈が、唇を付けて来た。朝から~。


もう七時。朝の一戦を終えた僕達は、やっとベッドの上に起き上がった。まだ、絵里奈が抱き着いてくる。何も身に着けていない。


「えへへ。大樹。今日こうしていよう。あの子の所なんか行かないで」


うっ、覚えていたのか。まさか、朝のこれも、絵里奈の作戦。


「でも、約束したから。絵里奈もこの前の日曜会った代わりに、行っていいって言ったよ」

「もう、大樹のばーか」

いきなり枕を僕の胸に当てて来た。


「じゃあ、大樹帰るね。今日は麗香ちゃんが帰って来るから、遅くなっちゃだめだよ」

「分かっている」


大きなバッグを玄関に置いて、パンプスを履いた絵里奈がドアを開けずに僕を見ている。


どうしたの。


「大樹」


はあ、そう言う事。


背中に手を回して顔を近づけると、絵里奈が目を閉じた。


「じゃあね、大樹」

ドアを開けて出ていく。と言ってもお向かい。既に叔母さんが、玄関の前に居た。

頭を下げて挨拶すると、にこやかな顔で

「おはようございます。大樹君」


終わった。


僕は、三軒茶屋でレンタカーを借りると、緑川さんの家に向かった。ナビが付いているので、迷うことなく、予定通りに九時半に着いた。


緑川さんの家の前に車を停めて、玄関のインターフォンを鳴らした。


「大樹君」

インターフォンから返事が来る前に、ドアの玄関が空いて緑川さんが顔を出した。

玄関まで来て、

「さっ、上がって。私、もうちょっとかかるから」


えっ、なら十時でも良かったのでは。とは思いつつ、そのまま、玄関に入った。

上り口に女性の人が立っていた。


「お母さん。この方が広瀬大樹君」

「初めまして。広瀬さん。娘がいつもお世話になっております」

「初めまして。広瀬大樹といいます。緑川さんには、こちらこそお世話になっております」


「お母さん、堅苦しいよ。大樹君、リビングで待っていて」

「いや、車の中で待ってるよ」

「車の中、暑いでしょ。リビングで休んでいて。さっ、上がって、上がって」

緑川さんに腕を引っ張られたので仕方なく、上がらしてもらう事にした。


通されたリビングが、それなりの調度品が並んでいる。緑川さんの生活レベルが見えた感じがした。


「広瀬さん。冷たい紅茶をどうぞ」

「済みません」

そのまま、出ていくのかと思ったら、緑川さんのお母さんが、僕の前に座り、話しかけて来た。


「広瀬さん。お仕事優秀な方と聞いています」

「いえ、そんなことは。先輩について、一生懸命こなしているだけです」

「恵子とは、いつ頃から」

「はい、会社に入って、研修終了後に同じプロジェクトに配属されて、それで知合いました」

「そう、恵子からは、大学時代から知っていると聞いていますが」

「あっ、それは、ちょっとしたきっかけが有って。その時は、まだ名前も知らなかったので」

「そう、恵子は、その時から、広瀬さんの事を気にしていたみたいだけど」

「いや、それは」


「お母さん、何話しているの。大樹君、困っているじゃない」

「いえ、恵子が、いつも素敵な方がいると言っていた方と、今日お会いできたので、少しお話しただけですよ」


「・・・」


「大樹君。出かけよう。お母さん、話し出すと長いから」

「えっ、それは・・・」

「いいの、いいの」


また、腕を引っ張られるようにして、玄関に戻った。


玄関を開けようとすると

「広瀬さん。恵子の事、宜しくお願いします」

「分かりました」


その時は、今日の件とばかり思っていた。



「どうだった。恵子が見初めた男は」

「ええ、控えめで、決して自分を驕らず、良い方の様に見えました」

「そうか、いずれにしろ、年末までには、決める必要がある」

「分かっています」



小田急沿線沿いにあるレジャー施設に向かっている。


「ごめんね。お母さん煩くて」

「そんな事ないよ。でも突っ込んでくるなと思ったけど」

「そうか。お母さん、大樹君に興味持ったのかな」

「えっ」

「人間的にね」


 今日は、頑張らないと。自分が恋人とか言っている幼馴染さんより一歩リードしないと。


「大樹、どうかな」

ラッシュガードを手に持ったまま、更衣室から出て来た。


スタイルの良さは知っているが、こうやって水着姿で見せられると、結構、ドキッする。

十分に育った胸を隠し切れない布、きゅっと絞れた腰、下は、ややしっかり目に覆っている。

普通に歩いていても、それなりに目立つ子だ。周りの視線を浴びているのが分かる。


「うっ、うん。とても素敵だよ」

「ありがとう」

「でもラッシュガード来てくれると嬉しいな」

「えっ、どうして。大樹に見せたくて、着たのに」

「いや、周りの視線が。恵子の素敵な体は、僕だけ見れれば」


急に近づいて、僕の耳に小さな声で

「ふふっ、それは、今日の夜ね。でも大樹がそう言うなら着るよ」

ラッシュガードを着たとたん、周りの視線のが消えた。


御多分に漏れず、二人でウォータースライダー、流れるプール、プール際のお店で、焼きそば、フランクフルト、ノンアルコールスカッシュ、ジュース、アイスクリームとレジャー施設を満喫した後、帰途に着いた。


「大樹、私の家に寄って。荷物おいて、ちょっと着替えたい」

「うん、分かった」


今度は、家に上がらずに車の中で待つこと三十分。女性は、時間かかるなと思っていたら、玄関が開いた。お母さんも一緒だ。


「広瀬さん。娘を宜しく」

そう言って、頭を下げた。


「分かりました」

返事しなくても良かったかなと思ったが、ここは礼儀と言うとこだろう。


「お母さん、じゃあ行ってくるね。遅くなるから」


はあ、こっちも親公認。


結局、三軒茶屋で車を返した後、渋谷に行って、食事後、いつものコース。

家に送って行ったのは、十一時過ぎていた。


家に帰ると

「お兄ちゃん、お帰り。えっ、どうしたの。思い切り疲れた顔している」

「理由は、自分で十分分かっている。麗香、明日の朝は、起こさないでくれ」

「分かった。でもお風呂に入ってね。なんか、変な匂いする。カルキと香水と汗が混じったような」

「えっ」


そう言えば、プールに入ってシャワーは浴びたが、恵子と体を合わせた後、シャワーを簡単に終わらせてたな。不味い。



―――――


大樹君。混迷の中にいます。



面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


宜しくお願いします。


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