第28話 川岸君の思い
飲み過ぎた緑川さんのその後のお話です。
―――――
「不味い、川岸君、ちょっと休んでいく」
「分かりました」
緑川さん、どうしたんだろう。休むって言われても。仕方ない。何もしないという事で。
ここしかないよな。
緑川さんが僕に寄りかかるようにしながら歩いているし。
うっ、何か光ったような。気のせいか。
「緑川さん、大丈夫ですか。とりあえず横にしますよ」
返事なしか。僕どうしようかな。
目の前の横になっている緑川さんを見た。
とりあえず苦しそうだから、上着を脱がしてっと、スカートは緩めるだけ。ブラウスは第二ボタンまで。これでいいか。
「・・・」
辛い。緑川さんスタイル良すぎ。
「・・・」
ごめん。
頭痛い。飲み過ぎたかな。
目を開けると
えっ、ここ何処。えっ、私下着付けてない。
横を見ると・・。川岸君。まさか。
ちょっと触ってみる。・・・やだ。そのまましたの。
「川岸君、起きて。ねえ、起きて」
「うーん。眠いです」
「眠いですじゃないよ。大変な事してくれて」
「大変な事」
「するなら、なぜこれを」
ヘッドレストに置いてあった、それを彼の顔に投げつけた。
「あつ、すみません。ちょっと酔った勢いで暴走してしまって」
「人が寝ている間にするなんて最低」
急に起き上がって、座りなおすと
「済みません。済みません」
「ベッドの上で土下座して謝って済むもんじゃないでしょ。どうしてくれるの」
「責任取ります」
「責任って何よ」
「結婚・・」
「馬鹿じゃないの。一回しただけで」
「でも、好きですし」
「そんな問題じゃない」
もう。十二時間以内に飲めば、何とかなるか。
「もういいわ。帰る。今からタクシーに乗れば、着替えて会社に間に合う。貴方も必ず会社に出てね。それと今日の事は他言無用よ。絶対にね。」
「はい」
万一、広瀬君の耳に入ったら大変な事になる。こんな人の為に、私の将来を変えられては、たまらないわ。
緑川さんは、シャワーを浴びると帰ってしまった。
はぁー。どうしようかな。緑川さんが悪いんだよな。あそこで休んで行くなんて言うから。タクシーで強引に返してしまえば良かったな。
でも、緑川さん、綺麗だったな。結婚しても良いんだけど。もう、会えないかな。
やっぱり失敗したかな。
そう言えば、緑川さん、初めてじゃなかったな。・・何考えてんだ俺。
§
「おはよう、川岸君」
「おはよう、山越さん」
「川岸君、お昼休み。ちょっといいかな」
「いいよ」
「川岸君、これはどういう事」
山越さんは、右手に持っているスマホのスクリーンを見せて来た。
「・・何故これを」
「そんな事どうでもいい。どういう事よ」
「・・・」
「いつから緑川さんと」
「昨日が初めて」
「えっ、緑川さん、完全に酔っているよね。こんな最低なことする人だったの川岸君」
「いや、違うんだ。・・」
「何が違うのよ。これが事実でしょ」
「説明するから聞いて」
「・・・」
「昨日、緑川さんを誘って食事に行って、普通に帰る予定だったのが、緑川さん、気持ち悪いと言って、休んで行くと言って。それで」
「なんで、ここなのよ。他にも休むとこなんていっぱいあるでしょ。ベンチで休んだってよかったじゃない」
「ベンチじゃ、ちょっと」
「最初から、するつもりで緑川さんを連れ込んだんでしょ」
「いや、違うんだ。横にさせていたら、酔った勢いで」
「もしかして、緑川さん、意識ないままに」
「ごめん、本当にごめんなさい」
「はあ、私との事どうするの」
「ごめんなさい」
「何がごめんなさいなの」
「もう緑川さんとは、絶対に会いません。声もかけません。山越さん以外見ません」
「・・・」
「・・・」
「じゃあ、証明して」
「・・はい」
§
今日は広瀬君とデート嬉しいな。早く定時にならないかな。
「緑川さん、この資料。来週までに仕上げといて。見積とコンテの所、コンテは、今まで一緒にいて、覚えた事で良いから記載して。月曜日の営業会議のタタキに使うから」
「分かりました」
「それと、仕上げたら営業会議の僕のフォルダにアップしておいて。休日中に見ておくから」
「はい」
「午後行く予定だったお客様には、僕一人で行くから、そっちに集中していいよ」
「ありがとうございます」
川田さん、優しいな。仕事できるし。
これ早く終わらせよ。六時過ぎには出たいし。
終わらない。どうしよう。コンテ全然浮かばない。今までの例だと。やばい時間ない。でも今日中に仕上げないと。広瀬君とあった後なんて絶対無理だし、帰るの遅くなるし。
「緑川さん、どうかな。進み具合」
「あっ、川田さん。直帰かと思っていました」
「直帰はないよ。仕事の資料を持っているからね」
「あの、コンテ全然考えられなくて」
「他の見積を参考にして書けばいいよ。仕上げは僕がするから」
「ありがとうございます」
でも、これで間に合わない事確定。一時間遅らせて貰えるかな。
『仕事終わらない。待ち時間一時間遅らせて』
『いいよ』
『ありがとう』
やっぱり広瀬君だ。やっぱりがんばるか。
待って居るかな。
階段を下りて待合せ場所に急いで行く。
あれ、いない。まだ、十分前か。
「あっ、緑川さん」
「えっ、川岸君」
「どうしたんですか。こんな所で」
「別にあなたには関係ないわ」
ちょっと別の所に移動しよう。見られたくないし。
「さよなら」
「えっ、ちょ、ちょっと」
知るか、こんな人。最低な男。
「緑川さん、待った」
「あれ、川岸。緑川さんと待ち合せだったの。そっか」
「えっ、ちょっと。違う。川岸君とは、たまたま会っただけ。行きましょ。広瀬君」
「えっ、えー」
緑川さん、広瀬さんと付き合っているって噂、本当だったんだ。じゃあなんで、僕と。
まあ、いいか。あの写真あれば。
―――――
緑川さん、川岸君注意フラグ立ったよ。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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